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歌で愛を放つDREAMS COME TRUE

ドリカムはなぜすべての人に曲を伝えたいのか?

ドリカムのファン復帰から3ヶ月たらず、やっと先程全てのライブ映像を見終えた。そしてずっと考えていたことの答えのようなものが見えたので書き記す。

ファン復帰をして不思議に感じたのは、ドリカムはなぜ、どんなひとにも分け隔てなく自分たちの曲を聴いてほしいのか?という疑問だった。

それは単純にセールスがあればそれをもとにまた音楽制作ができるからだろうかと推測していたが、違った。

わかる人にだけ届けばいい、というアーティストも沢山いる。というかほとんどの人間はそうだろう。だからひとつのアーティストのファンの雰囲気は自ずと似かよってくる。私もそのほうがアーティスト自身も賛同の声が多数になり心地良いし、効率的なのではないかと疑問を抱いたのだ。

ドリカムのファン層をつぶさに調べていくと驚くほど幅が広い。

大多数はヒット曲を連発していた頃から聴いていた女性たち、多くは兼業主婦をしていていまはなかなか音楽を聴く時間が取れないなかでも聴き続けていてくれる層。ドライブ中など聞く機会があれば聞くリスナーもいれば、ディープに応援し続けているファンもいる。ディープであればあるほど、ここのところのドリカム露出減のためか他のアーティストのファンを兼業して自己の愛情傾けバランスをとっている方が多い。(私は兼業ファンの存在をそれまで知らなかったので、とても驚いた。自分のなかの愛情深さを対象を分散させることでバランスをとることができる。)

実はファン復帰をしたことで、この幅広いファン層のなかで、自分との違いに悩み始めていた。知れば知るほど他のファンの方々の持つドリカムへのイメージと、自分がもつイメージのギャップに気づいてしまい、怖くなっていた。自分が見ているものはなんなんだろうと。ちょうどドリカム本人のSNSのコメント欄で辛口な意見が見られ始めた時期だった。批判的な意見を全世界に発信する理由が知りたくて、どんなバックグラウンドでその行動に至ったのか分析を重ねたが統計データにはでなかった。それほどに多種多様なバックグラウンドを持ったファンがいた。

ファンの中での居心地よさは、その後の継続性を高めるための重要なファクターである。人は承認されたいものだから、自分と似たグループに所属し、認め合うことで承認欲求を満たす。それをファン活動で行う層も日本の文化背景を見ると多いのではないだろうか。

しかし、バックグラウンドが多様なファン層を持つことで、先程述べたようなSNSでの不快行動や、疎外感につながるトピックが多くなっていくのではないかと仮説すると、「わかる人にだけ伝わればいい」という姿勢のアーティストの方が、似通ったバックグラウンドのファンが集まり、似た文化教養知識や言語、モラルのなかでファンは活動できるので、不快トピックが少ないだろう。

でもドリカムはそれをしない。親しみやすい、すぐに口ずさめそうと感じる歌を作り続けている。ベースの中村正人氏が、「今はなかなか音楽を聴く時間もないと思います。ドリカムの歌がスーパーで流れてきたとき、聴いてもらえるだけでもいい。聴いてほしい」(細かいニュアンスは違うかもしれない)と、それこそ主婦層が見るであろう夕方のNHKのニュース番組のなかでコメントしていた。

ふと耳に聴こえてきた「LOVE LOVE LOVE」

つい先日こどもたちを連れていった公園での出来事である。そこではいつも90年代のヒット曲がオルゴールで流れている。その日も聴いたことがあるけれどタイトルは知らないオルゴール曲を聴くでもなくききながら、こどもたちのお世話をしていた。秋の晴れた日、近くに見える山。DREAMS COME TRUEの「LOVE LOVE LOVE」が流れ出したとき、そのメロディの普遍性、美しさに心打たれた。それはその直前まで流れていた懐かしヒット曲とはまるで違った感触で、近いのは童謡やクラシック曲を久しぶりに聞いたときのような、時を経てもなお変わることはない親しみある美しい旋律だった。

中村正人氏が昔語っていた「LOVE LOVE LOVE」のエピソードのなかで、印象に残っているものがあった。海外で散歩中かなにかで出会った女性から、「日本の歌を歌える」と歌ってもらったところ、自分の「LOVE LOVE LOVE」で驚いたという話だ。彼女が誰が作ったのかは知らなくても、その歌が歌い継がれることがとてもうれしいと。

ライブでの吉田美和さんを見ていたときにそれぞれ考えていたことがふっと繋がり、答えがでた。

2018年に行われたワンダーランド前夜祭ライブの映像を見ていたときだった。

あっ、ドリカムは愛を放ってるんだ。愛を放ってると信じられるから、日本中の、世界中の人にくまなく曲を伝えたいんだ。と分かった瞬間があった。そしてその純粋な愛に驚いた。私利私欲がまったくない。そのために生まれてきたから、そうする。それだけ。しかもその理由に、世界が寂しいからとか救いたいとか、マイナスな理由がまるでない。ただ伝える愛があるから、それを放つ仕事だから放つ。めちゃシンプルで強い。そのライブ映像でも私には吉田さんから沢山のハートが放たれているのが見えてきた(気がした)。

ミュージシャンたちは吉田美和の背中に向かってエネルギーを集めて、それを吉田がお客さんに放ってるんです。と昔のインタビューで中村正人が語っていた。それが今もなにも変わらず続いているだけ。なんてシンプル。

ごちゃごちゃといろんなことを考えやすい私にもストレートに伝わった。なにかを信じることの「強さ」も伝わってきた。それなら分け隔てないことにも納得だ。幅広いファン層すべてを好きにはなれないかもしれないけど、愛を放つことには賛成したい。それを受け取った同士として肩を並べてライブを見ることも、まあそれぞれいろいろあるけどな!という気持ちで、できそうな気がしてきた。

参考:NHK「ニュース シブ5時~ベストアルバムがもうすぐミリオンのドリカム特集!~」
2015年11月6日放送

書籍『DREAMS COME TRUE WONDERLAND'95 GUIDE BOOK』(1996年)

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