ドラマが好きな理由
泣きたいような、なにもしたくないような塞ぎこんだ気持ちの日、私は、私に似た顔の 年上の女優が主演するドラマを見る。
初対面の人には「あの人に似ているって言われますよね?」と、顔が安定してくる中学生あたりから必ず言われてきた。
年若い頃のその人は華やかで、自分と顔がそっくりではあっても、自分とは全く正反対のパーソナリティを持っているのだろうと思っていた。だから、初対面の時、似ていますねと言われる度に、いつもどこか気まずい気持ちになっていた。相手が容姿に期待するパーソナリティをこちらは持ち合わせていないことに、申し訳なさも感じていた。
近年になって、ある脚本家の書いたドラマへの主演が続くようになり、時を経て、私は彼女の姿をしっかりと見るようになった。
その脚本家への共感性が高く、主題となる事柄も自分にとってかけがえのない、また、日々どうしたらいいか悩んでいるテーマが描かれていた。
置かれた境遇は違うが、自分と同じ顔を持つ人が、テレビの中の現実を、自分と同じテーマに悩み、進んでいく姿を見るのは、不思議な感覚になる。ふとした瞬間の目が、「あっ、私は確かにこういうとき、この目をしたことがある」と思い起こさせるのだ。
主人公が、恋をした相手に選ばれなかった時のあきらめたような笑顔。その時にしていた優しいような、空を見るような目。娘を寝かしつけたあとの目。
その目をした過去の自分も思い出しながら、主人公が生きていく姿をただ追っているだけで、「自分のやってきた人生も悪くはなかったんじゃないかな」くらいには元気になっている。
そこが、他にはないドラマだけのいいところではないかなと思う。
初回から最終回までの3ヶ月、どんな仕上がりになったとしても、毎週放送される。
毎週同じ曜日、同じ時間に、彼らに会える。「やあ、こんちは、元気だった?」
とは言わないけど、この週の彼らの現実を一時間味わう。
私には、今は、毎週会う友達も、約束もない。
そういう孤独な境遇にある人にも、等しく安定して世界を分けてくれる。
それがすごく、やさしく、幸せだと感じる。