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TFCCの解剖学

今回も解剖学シリーズです。

今回は手関節の中でも尺側にあるTFCCと呼ばれる部分の解剖です。

転倒などで手をついた時に損傷しやすく、私自身昨年の秋頃にフットサルをしていて受傷してしまいました。

自分の身体を通して学びを深めていっております。


また、クライアント目線で考えても、手は更衣動作や炊事など日常生活における使用頻度が高位です。

高齢者の方であれば、立ち上がる時に手をついたり、杖や手すりを使用したりすることで負荷がかかります。

アスリートであれば、ラケットやバッドなどの道具を使用することでそれを握る手には負荷がかかります。

このような「使いすぎ(over use)」もTFCC損傷の原因になります。



TFCCとは?


TFCCは日本語で三角線維軟骨複合体と言います。

橈骨、月状骨、三角骨尺則の間に存在します。

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※構成要素の一つである三角線維軟骨は関節円板のことを指します。

(関節円板を有する関節は他に顎関節、胸鎖関節、肩鎖関節でしたね。
関節円板は表層部が線維軟骨、中心部が腱様で、関節面の適合性を良くする役割があります。
血管や神経は分布していません。)


構成される組織はすべて尺骨神経支配となっています。

TFCCの機能は
①下橈尺関節の安定性の維持
②橈骨手根関節の尺側支持機構
③尺側への力の伝達とクッション作用
があります。

もう少しわかりやすくまとめると、

・回内/回外運動における安定した橈骨と尺骨の運動に関与。

・橈骨手根関節の可動性を保ちつつ強固に支持しています。


また、TFCC損傷は単純X線では確認することができません。
関節造影やMRIで確認できます。

TFCCが構造的に破錠したことが原因で生じる疼痛は運動療法での改善は難しいです。

手術や保存療法どちらの場合でも3ヶ月ほどの安静が必要とされています。

しかし、TFCCに機械的刺激が加わる運動学的要因には対応可能ですのでクライアントの状態をしっかりと評価して介入していきましょう。




各構成要素の解剖


TFCCについて調べ直すと、恥ずかしながら構成する靭帯の解剖学的な内容を把握できていませんでした。

これを機に改めて調べ直しています。

・橈尺靭帯

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背側と掌側に存在し、尺側に向かうに連れて4つの繊維に分かれます。

下橈尺関節の脱臼に関与している。


・メニスカス類似体

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密で不規則に配列した結合織からできています。

MRIではTFCより信号強度が高いです。


・尺骨月状骨靭帯

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・尺骨三角靭帯

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尺骨突き上げ症候群


尺骨がプラスバリアントになると尺骨と三角骨間、もしくは尺骨と月状骨間の圧力が高くなります。

特に手関節掌屈運動では、月状骨と三角骨が掌側に回転するためTFCCの掌側に圧が集中します。

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尺骨のバリアントは先天的な一次性のものと橈骨短縮変形など二次性のものがある。


尺側手根伸筋

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尺側手根伸筋腱はTFCCの一部を形成し尺側の支持機構として機能しています。

尺骨遠位端の尺骨溝を通過し、この部分には1.5〜2cm程度の幅のバンド(subsheath)がある。

この部分には回外運動でか摩擦ストレスを受けやすく炎症を起こして疼痛の原因となることがあります。


尺側側副靭帯

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文献によっては尺側側副靭帯もTFCCを構成する一部た言われています。

この靭帯は手根関節包の尺側が肥厚したものです。

何らかの原因で手根が橈側偏位してしまうと尺側側副靭帯および関節包が伸張にストレスが加わり疼痛の原因となることがあります。

また、尺側手根伸筋がこの靭帯を強化するのを助けています。



予防が大事


TFCCに関与する組織の解剖学をまとめてみました。

患部に炎症所見がみられるとしばらくは運動療法は難しく安静が必要になります。

改めて感じることは損傷してから対処するのではなく、損傷する前に予防したいということです。

背屈や掌屈運動時に尺側への代償運動がでていないか?回内、回外方向への代償運動が出ていないか?

そこに気づき早期に修正していくことが重要だと感じました。

痛みが出ていなくても、上述したような代償動作が出ている方は多くみられます。

簡単なセルフケアで解決可能なので予防していきましょう。

特に尺側の皮膚は重要なセルフケアポイントです。

字を書く時、キーボードを打つ時に圧迫されていますのでマメにケアしましょう。


お読みいただきありがとうございました。


謙虚・感謝・敬意
知行合一・凡事徹底
岩瀬 勝覚


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