めまい
めまいで苦しんでいる方を臨床上よくみかけます。
つらいけど、病院に行って薬を飲んでも治らない。
残念ながら薬はめまいの原因を根本的に治すものではありません。
しかし、めまいは自分で治せるものが多いのです。
今回はめまいの原因を整理し、解剖学的なところをまとめたいと思います。
めまいの種類と割合
良性発作性頭位めまい症・・・36%
じっとしているとなんともないのに、寝返りを打ったり、急に立ち上がった時にめまいが出現する。30秒くらいですぐにおさまるようなもの。
片側前庭障害・・・23%
一過性前庭障害・・・9%
心因性・・・5%
片頭痛関連めまい・・・4%
メニエール病・・・4%
その他・・・19%
(2010年、日野市立病院のデータ参照)
このような種類がある中で、上位の3つの良性発作性頭位めまい症、片側前庭障害、一過性前庭障害は、前庭といった「耳」にある器官に問題がある場合に現れるめまいです。
また、医師にメニエール病と診断されたとしても、実際にはメニエール病でないことも多いようです。
めまい・耳鳴り・難聴がメニエール病の3大症状ですが、耳鳴りや難聴も「耳」の問題があるので、突発性難聴など同時に現れた場合もあります。
さらに、メニエールは治らない病気と考える人もいますが治る人もいます。
1番大切なことは、自分の病気や症状が治らないものとするのではなく、治る可能性がある、治そうという気持ちが大切になります。
めまいの原因
めまいの原因は大きく分けて4つ
①耳(前庭)
めまいの原因として最も多い。前庭とは三半規管と耳石のこと
②小脳
目や耳、足底などの感覚を統合する小脳の機能が低下することによっても起こる
③大脳
小脳で統合された感覚を認知する大脳が原因で起こることもある
④ストレス
耳や脳の機能に異常がないのにめまいが起こるパターン。
になります。
それぞれ詳細を解説ししていきます。
耳
(トートラ人体解剖生理学より引用)
耳は、外耳、中耳、内耳の3つの主要部分がある。
外耳は耳介で音波を集め、外耳道を通って鼓膜に振動を伝える。
中耳は、鼓膜の振動を耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)で増幅し卵円窓に伝える。
(トートラ人体解剖生理学より引用)
内耳は側頭骨内の腔所にあり、液体で満たされています(骨迷路は外リンパ、膜迷路は内リンパ)。
内耳は蝸牛と前庭と半器官で構成される。
蝸牛は聴覚、前庭と半器官は平衡感覚の感覚器。
前庭には卵形囊と球形囊という2つの袋があり、その中に耳石がある。
三半規管は主に頭の回転運動を、耳石器は重力を含む垂直、水平方向の直線の加速度を感知します。
小脳
(絵でみる脳と神経より引用)
小脳は左右の小脳半球と真ん中の小脳虫部、小脳半球に包み込まれるように存在する片葉小節葉からなる。
位置は延髄と橋の後方、大脳の下方にあり、小脳脚と呼ばれる軸索で脳幹と繋がっている。
(絵でみる脳と神経より引用)
表面は小脳皮質(灰白質)、その中には樹の枝状に広がった小脳活樹(白質)、さらにその深部には4つの小脳核(灰白質)(室頂核、栓状核、球状核、歯状核)がある。
小脳は、筋、腱、関節、平衡受容器(耳)、視覚受容器(目)から絶えず感覚性インパルスを受けている。複雑な運動を円滑に行うために姿勢とバランスを調節し、協調させるために働いている。
小脳はアルコールによって活動を抑制されることが分かっており、アルコールの過剰摂取は運動失調の徴候を示す。
神経路と反射
平衡感覚は内耳の三半規管と耳石器で感知し、前庭神経を通って、延髄の前庭神経核を通って、一部のニューロンは下小脳脚から小脳の片葉小節葉、室頂核に伝わります。
その他にも前庭神経核からいくつか二次ニューロンが脊髄や眼筋に投射されます。
前庭動眼反射:
頭の動いた時に、その反対側の方向に眼球を動かす。頭が動いた時に物がみえにくくならないようにするために起こる反射。
内耳から前庭神経を通り、延髄の前庭神経核に伝わり。眼球を動かす運動ニューロンへと伝わる。
※眼球を動かす筋肉は動眼神経、滑車神経、外転神経と複数存在する。
前庭脊髄反射:
頭部の傾きに対して、全身の筋緊張を制御して安定した姿勢を維持するのに働く反射のこと。例、つまずいた時に足をダンッと踏み直すなど
主に耳石器から入力を受け、前庭神経を通り、延髄の(外側)前庭神経核を中継して、同側の脊髄の前索を通過、脊髄全域から四肢のや体幹など全身の筋緊張をコントロールする。
前庭頸反射:
頭部や身体の傾きに対して、頸部の筋群が収縮し、頭部が地面に対して垂直になれるように維持する反射のこと。
主に三半規管からの入力を受け、両側性に投射。(内側)前庭神経核を中継後、脊髄の前索内側部を下行し、頸髄付近で終わり、頸部の筋をコントロールする。
前庭自律神経反射:
身体の傾きなどに合わせて血圧など調節する働き。
前庭神経核から視床下部に過剰に信号が送られると起立性低血圧などの症状がみられる。また、乗り物酔いなどによる悪心、嘔吐、発汗もこれにあたる。
大脳
前庭神経核から視床を経由して、大脳皮質で情報を処理(認知)する。
大脳皮質の複数の領域に前庭器からの入力があることが言われている。
側頭葉の後部の前庭野、頭頂連合野の2野、頭頂葉ー島前庭皮質など言われているが、これに対して否定的な意見もあるので参考までに。
ストレス
ストレスが身体に影響を与えることは多くの方がご存知かと思います。わかりやすい例でいえば緊張するような場面や驚いたら、運動していなくても心拍数が上がるように、心的ストレスで自律神経系などが反応します。
めまいとの関係でいうと、さまざまな関連があると思いますが、例を一つ。
ストレスによって呼吸が浅くなって、全身の酸素量や血流などの循環が低下します。
脳への血流が低下することで頭蓋骨の硬さが生じると、頭蓋骨も呼吸によって膨らんだり萎んだりという動きがありますが、その動きが制限されます。すると前庭など含めた神経系の伝達が悪くなったり、必要以上に耳石の揺れが大きくなったりしてめまいが出現するということが考えられます。
注意点
めまいは自分で対処できること前提にまとめましたが、中には脳血管障害など重篤な問題の場合もありますので、なかなかおさまらない場合や頭痛も伴う場合など、病院などの専門機関で検査を受けることも重要です。
その上で、頭蓋骨を緩めたり、眼球運動や頸部のストレッチなど実施し継続すること。
また、ストレスの原因を理解し、その事象の捉え方を変えていくことがめまいを対処していくことがめまいを解決していくためには大切になります。
詳しい方法などは専門家による指導をおすすめ致します。
お読みいただきありがとうございました。
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岩瀬 勝覚
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