筋攣縮と筋短縮
筋攣縮(スパズム)と筋短縮は生理学的・組織学的に異なったメカニズムで発症します。
普段の臨床でこれらを見極めてアプローチできているでしょう?
今回はそれぞれのメカニズムを解説し、評価方法、アプローチについてまとめたいと思います。
筋攣縮(スパズム)
まず攣縮(スパズム)という言葉を整理します。
「攣縮」とは筋肉が意図せずに収縮すること。
筋攣縮とは、筋が局所的に攣縮を起こすことで、血管を圧迫し虚血状態が生じている状態のことを言います。
虚血に伴い組織が変性し、疼痛発痛物質が生じて疼痛や運動制限の原因となります。
次に筋攣縮(スパズム)の発生メカニズム
難しい話は嫌だって方は飛ばしてください。笑
筋攣縮は、
組織に何らかの物理的、化学的刺激を受ける
↓
侵害受容器が感知
↓
脊髄へ
↓
①脳
②脊髄反射
へと分かれます。
①脳
脊髄の後角
↓
外側脊髄視床路を上行
↓
視床
↓
大脳(体性感覚野)
↓
疼痛など
②脊髄反射
脊髄後角から入る
↓
前角のα運動ニューロン
と
交感神経の節前線維
に作用
↓
筋と血管の攣縮
↓
局所的な虚血
↓
疼痛発痛物質の閾値下がる
↓
可動域制限、筋出力の低下
ものすごく簡潔にまとめると物理的、化学的刺激が長期間加わることで可動域制限、筋出力の低下、疼痛が起こります。
物理的刺激:振動、熱、光、圧力、摩擦など
化学的刺激:湿度、空気、菌、ウイルス、薬剤など
筋短縮
筋短縮とは①筋実質部の伸張性が低下、②筋膜が線維化した状態です。
①筋実質部の伸張性低下
伸張性は筋節の数が多いと良く伸び、少ないと抵抗が増します。
②筋膜の線維化
(線維化:結合組織の異常増殖し硬くなること)
筋膜や筋内膜のコラーゲン分子に架橋結合が形成
↓
結合が強くなる
↓
伸びなくなる
筋短縮は①②ともに関節の不動や運動不足により起こります。
日々の生活習慣が大切になってきますね。
評価
ではどうやって筋攣縮(スパズム)か筋短縮かを見分けるのでしょうか?
ここでは3つの視点から見分け方を解説します。
①圧痛の有無
筋攣縮では疼痛閾値が低下しているため圧痛を認めることが多い。
反対に筋短縮は圧痛を認めにくい。
②肢位による筋緊張の変化
筋攣縮は短縮位でも筋緊張が高く、伸張位ではさらに緊張し痛みが出やすい。
筋短縮は伸張位では緊張するが、短縮位では弛緩する
③筋出力
筋攣縮は萎縮はしていないが、持続的な痙攣が生じた状態なため筋出力の低下がみられる。
また、血管のスパズムと伴っているため、筋内圧が上昇
↓
等尺性収縮を行うとさらに内圧上昇
↓
疼痛が出やすい
筋短縮では筋力低下もなく、内圧も上昇しない。
アプローチ
筋攣縮、筋短縮を改善するための方法はいくつかあるので参考までに少しご紹介します。
手技はいろいろなセミナーなどで学べます。
方法はなんでも良いですが、できれば効果があって、簡単にセルフでもできるようなものだといいですね。
良く使われる手技としてⅠb抑制を利用する方法かまあります。
筋肉の構造は「筋」の両端に「腱」があり、腱が「骨」に付着しています。
筋と腱の間を「筋腱移行部」と言います。
筋は伸張性がありますが、腱は伸張性が乏しいです。
等尺性収縮を行うと、関節運動は起こらず、筋の収縮が入るので筋腱移行部に伸張刺激が入ります。
↓
この刺激によりゴルジ腱器官が反応
↓
脊髄へ
↓
抑制介在ニューロン
↓
筋の弛緩
というような反応が見られます。
ちなみにゴルジ腱器官は疼痛閾値が低いので少しの刺激でも十分反応しますので痛みが出ない範囲で行いましょう。
筋腱移行部への刺激が筋節を増加させるので筋実質部の伸張性改善が期待できます。
また、反復的に筋収縮を行うと筋ポンプ作用により血液循環やリンパ液の還流を促通するため、筋内浮腫の改善、発痛物質の除去が期待できます。
このようなことから筋腱移行部や腱の状態を整えることは重要です。
筋実質部の問題ばかりに目がいき、スパズムの場所をダイレクトに指圧してばかりいても、腱の滑走性などは変わらないので注意しましょう。
蒲田先生の組織間リリースなどで丁寧に腱の状態を良くしましょう。
最後に、
1番大切なのは「なぜそこに筋攣縮、筋短縮が起きたのか?」をしっかり評価することです。
そこを徒手的に解決して満足するセラピストではなく、原因を分析し再発させないセラピストを目指しましょう。
お読みいただきありがとうございました。
謙虚・感謝・敬意
知行合一・積土成山
岩瀬勝覚