都市雑感#4 ~開疎化×ワークスペースの考察~
新型コロナウイルスによって引き起こされるパラダイムシフトについて、様々な切り口の論が飛び交うようになってきた。
そのなかでもシンニホンの著者であるヤフーCSO安宅和人さんが唱えた「開疎化」というキーワードがとくに大きな反響を呼んでいるように思う。
巷に騒がれている様々なパラダイムシフト案を含めて誰もが未来を予測できないと痛感するなか、あえてこの「開疎化」を一つの仮説として所与としたとき、不動産業に身を置くものとして『都市はどうなっていくのか』を思考実験として考察したいと思う。
今回はそのなかでもオフィス・ワークスペースにフォーカスを当ててみる。ただし論点が果てしないのでいったん「リアルなオフィス」に焦点を当てたい。以下、以前連投ツイートしたものを転載。
■開疎化で“働く”はどう変わる?
〇 上記事ではオフィスも「開疎化できているか」が評価基準に。たとえば島型レイアウトは無くなり、そもそもリモートが中心となり「『本当に集中的にブレストする、知的生産を行う』ときのために何割かの人が集まれば良いという形にオフィスは変わっていく」そうだ。
〇 これはコロナ禍前からすでに兆候(意向)は見れる。
2019年の調査⇒「集まるための本社オフィスと分散するための多様なワークプレイスといった選択肢を用意したうえで、機能ごとに使い分け、一体的に活用する」
〇 一方で安宅さんはビルスペック面にも言及している。換気性能向上やエレベータ混雑を避けるための低層化など。都心ではなく開疎な立地が評価されうるとも。
〇 ここは少しハードルがありそう。換気性能向上といっても既存ビルができることは限られている。
たとえば機械換気設備の更新であっても、換気ダクトの径口がボトルネックになって物理的に改善できない、自然換気には遠く及ばないとかありそう。(詳しい人教えて)
http://www.shasej.org/recommendation/shase_COVID_ventilizationQ&A.pdf
〇 となると機械換気より高効率な自然換気だが、いわゆるボイドコアの後付けは現実的ではないので「窓が開けられる高層オフィスビル」という頓智問題を解く必要が出てきそう。(詳しい人教えて)
〇 また仮に換気機能が改善可能となっても大規模な投資が必要となった場合、ビルオーナーが投資対効果を踏まえて決断できるかが次のハードルになりそう。たとえば投資対効果が分かりやすいLED電灯。2008年頃から普及したが、いまだに導入していないオフィスビルは多くある。
〇 要はウィズ/アフターコロナ時代、オフィス選びとして換気機能を絶対視するテナントがどれだけ出るか。LEDがそうであるように、意義だけでなく実需(テナントニーズ)が伴わないと投資に踏み切るビルオーナーは多くない気がする。
〇 たとえば東日本大震災を契機にBCP観点から非常用発電機が注目されるようになった。外資・金融系テナントを中心にビルの非発有無はポイントなった。ただそれでも、東京23区でオフィスが9,366万㎡※あるうち、非常用発電機があるオフィスはどれほどなのか。(詳しい人教えて)
※出典:東京の土地2018/東京都都市整備局
〇 以上から、しばらくオフィスビルの換気性能向上には時間を要しそうというのが私見。となると冒頭の話に戻り、当面は「都心オフィスの密度低下(利用人数抑制)」+「サテライトオフィスや在宅による分散化」が主戦場か。ただあくまで「開疎化が評価基準になる」という大前提だけど。
〇 さらに言うとこの「都心オフィス抑制+分散化」ですらそれなりに時間を要しそう。LINEと厚労省が行ったコロナ対策調査でテレワーク導入率5.6%という数字がそれを物語る(ただし20年3月末時点)。
〇 それでも、変化しないということはないだろう。意識すべきは変化の速度。トップランカーほどその速度を作り出す立場となり、フォロワーは速度の変化を意識しながら投資規模を考えるべきだと思う。
〇 そしてここまで議論したのはあくまで「リアルなオフィス」。ここにインターネットが加わることにより補完されるものは何で、逆に補完されない、欠落するものは何か。これはまた次の議論に。(完全に片手落ち…)
追伸
ちなみに冒頭のブログでは、あわせて職住一体型の住宅開発の必要性も触れていた。ちょうどリコー×コスモスイニシアからこんなのが。