UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2021-2022「Patrick Vegee」~蝉ファイナルを受け改めて~
UNISON SQUARE GARDENが2020年9月にリリースした8枚目のアルバム「Patrick Vegee」を引っ提げたツアー。
以前にも【ネタバレあり雑感】という形で静岡公演について綴ったのですが、無事にツアーも終了したため、改めてもう一つ参加した高崎公演を受けて追記したいと思います。
(静岡公演当時のレポはこちら↓)
ツアーが始まったのは、実にアルバムリリースから1年以上が経過した2021年10月。
なぜここまで空いてしまったのかというと、やはりコロナ禍によるところが大きいのだけど、ライブ自体を控えていたわけではなく、誰もが気兼ねなくライブに参加できるようになるまでは、アルバムを引っ提げた従来通りのツアーはしないというのが前提としてあったため。
その代わりではないけれど、2021年に入ってしばらくは、アルバムは引っ提げずにやりたい曲を普通にやるツアー「Normal」や、過去にリリースしたライブ映像作品の通りにライブを再現するリバイバルツアーを2本(「Spring Spring Spring」「CIDER ROAD」)回るという、コロナ禍ならではの試みでユニゾンは各地を回っていた。
さらに秋には自主企画「fun time ACCIDENT 3」で、普段は交わらない注目のバンドたちを招いて共演したり、合間でファンクラブ「UNICITY」にて投票を募ってセトリを組んだ配信ライブや、各フェスへの出演にも精力的だった。
そうこうしてまでライブを止めずにやり続けたのは、紛れもなくユニゾンがロックバンドだからだし、依然として好転しない状況の中でも、「ロックバンドはライブをする生き物」という当たり前を忘れないように提示してくれていた。
そうして時を経て10月。
当時、完全にとは言わないまでも、状況が落ち着きを見せ始めた中で無事、1年越しの「Patrick Vegee」を引っ提げたツアーが始まった。
もちろん、マスク着用必須かつ声出し禁止など、感染対策ガイドラインは続けながらではあったが、アルバムを引っ提げて全国を、長い期間かけて回るツアーは本当に久しぶりだったので、ようやく戻ってきた~!という感慨。
特にこのアルバムはこれまで以上に曲から曲への繋がりに快感と感動を覚えるものだっただけに、いつも以上に楽しみだった。
まず自分が参加したのは、10月の静岡・富士市ロゼシアター公演。
先述のリバイバルツアーはセトリが分かっているため次が読めたのに対し、曲間で次に何が来るんだろう…と固唾を飲んで待つ雰囲気や感覚は本当に久しぶりで、裏切られたり裏切られなかったりの連続が楽しくて。
曲順の妙が効いたアルバムだという前提があっても、いや、むしろその前提があったからこそ、ユニゾンの"一筋縄ではいかなさ"を改めて思い知らされたような気がした。
それからツアーを順調にこなし、合間に女王蜂との大晦日配信ツーマンライブ(これがまた交互に曲をバチバチぶつけ合うスタイルでめちゃめちゃ良かった…)を繰り広げて迎えた2022年。
再びオミクロン株なるものが猛威を振るい始めて穏やかではなくなってきたけれど、何とかツアーは続き終盤に差し掛かる1月下旬。
このタイミングで個人的にはツアー2本目となる高崎公演に参加した。
会場となる高崎芸術劇場は「Spring Spring Spring」の際にも訪れており、駅からすぐというアクセスと新しく綺麗なガラス張りの造りが個人的にも気に入っていて、当時は2階スタンド席だった一方、今回は1階の5列目(田淵サイド)だったためさらにテンションも上がる。
静岡公演のときと同じく、感染対策ガイドライン下でライブを行うというイベンターからのアナウンスと、まもなく始まりますという言葉に一斉に拍手が起きた瞬間、会場は暗転し、イズミカワソラさんの『絵の具』に乗せてメンバーが登場。
登場SEがフェードアウトした瞬間、
"全部が嫌になったなんて簡単に言うなよ"
と斎藤さんが弾き語り始め、『Simple Simple Anecdote』からライブスタート。
静岡では、まさかこの曲から始まるとは!と度肝を抜かれたものだけど、このときユニゾンがまず真っ先に伝えたいメッセージがこれなのだなと思うと、何度聴いてもグッときてしまう。
そして余韻に浸ろうとするのも束の間、一気にギアを上げるような瞬発力で、『Hatch I need』を繰り出し、さらにアルバム通り、"…I need Hatch"→"マーメイドの…"と間髪入れずに『マーメイドスキャンダラス』を畳み掛けた。
この緩急はツアーを経てさらにキレが増していたような気がした。
間近で迫力溢れる演奏と照明を浴びていたからかもしれないけれど。
続く『Invisible Sensation』は、コロナ禍を挟んでリアルライブではこのツアーで久しぶりの披露となりながら、もうすっかり定番曲として浸透している感じがあり、イントロで会場中が跳ねまくっていた。
特に今回は、2番を終えてさらに言葉を怒涛のスピードで畳み掛け"生きてほしい!"に繋がるあのCメロを受けて力強くドライブする間奏、そしてそれに呼応してジャンプ力を増す会場の跳ねっぷり、自分もそのあまりのパワーに持っていかれて、手足にグッと力が入ったとともに、目には溢れ出てくるものが…。
人それぞれでかなり判断も別れるような状況になってきて、正直自分の中にもライブに行くことに対して迷いが生じるときがある今日この頃。
そんな中でも、相変わらず全力で最高にかっこいいライブをしてくれるユニゾンが目の前にいて、皆が声を出せないながらもその分、思いっきり飛び跳ね、拳を振っている光景にめちゃめちゃ勇気づけられた。
まさにその瞬間、ライブに生きている!というのを強く実感させられた気がした。
それぞれの楽しみ方を持ちつつも、配信では決して味わえない、皆で、その場で味わうライブ感、これが好きなんだよ。
そんな感動に浸りながらもとどまることなく『フライデイノベルス』『カラクリカルカレ』と続き、まさに空を"超えていけよ"と言わんばかりに会場の沸点は上がり続ける中、斎藤さんが「新曲っ!」と叫んで始まったのは、ツアー初日にリリースされた最新曲『Nihil Pip Viper』。ライブで演奏されると、その一筋縄ではいかない、あっちこっちへ展開する曲調が際立つが、自身もあっちこっちへ激しく動きながらも、複雑なベースラインを弾きまくる田淵のヤバさも際立っている。
そして『Dizzy Trickster』が鳴らされると、「MODE MOOD MODE」ツアーで初披露されたときと違って、既存曲として自然とセトリに組み込まれている中だと、改めて純粋にライブ映えするなぁと感じさせられた。
それはツアーもセミファイナルを迎えてさらに強くなった感覚だった。
続けざまに跳ねる曲を畳み掛けきった後、ひと休みするようにここで暗転と沈黙がしばらく訪れ、緊張も混じったような静けさを引きずったまま、ギターの弦だけがリフをゆっくり刻み始め、『摂食ビジランテ』へ。
この曲はサビに入ると一気にギタードラムベースが爆発したように鳴り出すのだけど、ライブだとその迫力もさらに強い。
そのまま続く『夜が揺れている』でも、曲調とは裏腹に激しく畳み掛け続ける。
このとき、静岡では席が1階やや後方だったので気付かなかったけれど、間近だと貴雄のドラミングが大爆発を巻き起こしているのが分かり、かなり驚かされた。
そして個人的にはここから3曲の流れが特にお気に入りポイントで、まずは『夏影テールライト』。
昨年、ファンクラブで募ったランキングでも早速上位に食い込んだこの曲は、アルバムでも前後を繋ぐ緩衝材のような重要な役割を担っている気がしていて、そうなると当然次の曲は…と予想するも、それに反して鳴らされたのは『オーケストラを観にいこう』。
そうかそういう世界線もあったか!と、片思いの淡い気持ちが幻に消えずにさらに募っていく展開にグッとくる流れ。
しかし、このままで終わらないのがユニゾン。
ここでまた間髪入れずに『Phantom Joke』である。
アルバムの流れに引き戻される、急転直下の展開。
夏の夜、そして30度を超えた日曜にどんどん近づいていった2人の距離は、枯れ葉が舞う頃には結局幻に消え、嘘となってしまったのだろうか…。
ガラっと雰囲気を変え、激しく揺さぶられるような演奏は流石としか言いようがない。
そしてここで、ドラムソロタイムへ。
1!2!!3!!!と半ば雄叫びのようにカウントをしながら貴雄が高速ドラミングを披露し、その後も数字をランダムに叫びながらそれを繰り返すのだが、何とそれに合わせて田淵と斎藤さんもその都度、貴雄が叫んだ数だけ弦を弾くという即興セッションを展開。
どのタイミングで何の数字が来るかわからない中で即座に対応するフロント2人の圧倒的な対応力に驚かされる中、そのままベース→ギターのソロリレーも鮮やかに決まると、『世界はファンシー』へ。
その流れるような歌と"fantastic guitar"に圧倒され魅了されているうちに、静岡では思わず"ハッピー!"のところでMVのようにピースサインをするのを忘れてしまった自分も、高崎ではリベンジ成功✌️😎✌️(笑)
そして『スロウカーヴは打てない(that made me crazy)』と繋がりラストスパートへ向かっていくのだけど、続けてレイテンシーもなく即座に『天国と地獄』へなだれ込んでいく様は、もはや全然直球じゃないです…。
『Nihil Pip Viper』でも"蓋然性合理主義なんてガキの遊び"という歌詞が出てくるが、次に来る曲の可能性(=蓋然性)を無視した選曲群を経て、続く『シュガーソングとビターステップ』で再び同じようなニュアンスのフレーズが歌われると、やっぱり一筋縄ではいかないのがユニゾンの面白さだよなぁと改めて実感する。
会場の盛り上がりもMAXに高じ、踊るように楽しい時間もあっという間。
もはや自分も汗だくになり、ハッピーな余韻の中、「UNISON SQUARE GARDENでした!」と、『101回目のプロローグ』へ。
アルバムでもラストを飾るこの曲だけど、終盤に向けてどんどん高まっていく演奏は、また新たに何かが始まりそうな予感もして感動的だ。
それはライブだとより強く感じられたのだが、Cメロを経た後ピタっと演奏が止み、
"君だけでいい 君だけでいいや こんな日を分かち合えるのは
きっと拙いイメージと でたらめな運命値でしか 描き表せないから"
と斎藤さんがアカペラでゆっくりと歌い始め、この瞬間、会場の空気が一変した。
最近は本当に皆がハッとするような、ここぞ!というタイミングで渾身の気持ちを込めるようなこの人の歌い方に感動させられっぱなしだ。
序盤に感じた「ライブに生きている」という感覚に、そうか!と説得力が加わった気がして、グッときた。
そして再びバンドが演奏に加わり、"世界は七色になる!"で七色になる照明。
日常でもユニゾンのロックを聴いていると、世界がフルカラーにパッと明るくなるような気持ちに何度もなり、救われてきた。
それはライブでももちろんそうで、それを体現してくれているかのような演出を目の当たりにして改めて、本当にこの日ライブに来て良かったと思ったし、きっとこれからもユニゾンがいれば大丈夫だと確かめることができた。
そんな感動的な汗と涙の本編を経て、アンコールへ。
ここでの斎藤さんの一言目が、
「全20公演のツアーももうセミファイナルということで………蝉ってさ、地面にひっくり返っててもう死んでるかな?と思って近付いたら、ミ~~~ン!!!って急に動き出したりするけど、あれに"蝉ファイナル"って名付けた人、天才だよね。」
なのだから、やっぱり一筋縄ではいかない(笑)
だけど同時に、
「感染者がまた一気に増えてきてる中で、UNISON SQUARE GARDENがこれだけ長いツアーをやれていることは誇っていいと思います。何でかっていうと、それは皆さんが声を出せなかったり、マスクをしたりという制約の中でも、ルールをしっかり守って、目一杯楽しんでくれているからです。」
と言ってくれた。
極めてシンプルであるが、実際昨年10月から何事もなく、延期や中止も一切ない状態で無事にセミファイナルまで辿り着いている。
そう考えると改めて凄いし、誇らしい。
そしてまた自分自身も肯定されたような、救われた気持ちになった。
そうと分かれば、あとは最後まで全身全霊で楽しむのみ。
MCを終え、また一気に演奏にギアを入れるように始まったのは『crazy birthday』。
「CIDER ROAD」のリバイバルツアーでも、”起承転結結結”な流れを作っていたのが記憶に新しいので、またいきなりぶち上がるような曲をこのタイミングでもってくる今のユニゾンは本当にパワフルだ。
そしてさらに『オトノバ中間試験』と続くと、観ているこちらも手足が筋肉痛になりそうな勢いなので、本当に"息継ぎがてんでない"斎藤さんが心配になる。
しかしそれは全くの杞憂で、ラストの『春が来てぼくら』では、大サビ前の次のフレーズを力を込めて歌ってくれた。
"新しいと同じ数これまでの大切が続くように"
最近はこの曲でこのフレーズが歌われる度に、自分も強く頷くように噛み締めている。
ライブの在り方は新しく変わりつつあるけれど、それ以上に、皆が音に身を委ねて飛び跳ねたり、拳を振ったりして、感情を解放するように楽しめるライブの場は、失われちゃいけないし、これからも大切にしていきたい。
そのためにも引き続き、ガイドラインなど、守るべきものを守りながらライブに行き続けたい。
-1/23 UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2021-2022「Patrick Vegee」@高崎芸術劇場セットリスト-
01.Simple Simple Anecdote
02.Hatch I need
03.マーメイドスキャンダラス
04.Invisible Sensation
05.フライデイノベルス
06.カラクリカルカレ
07.Nihil Pip Viper
08.Dizzy Trickster
09.摂食ビジランテ
10.夜が揺れている
11.夏影テールライト
12.オーケストラを観にいこう
13.Phantom Joke
14.ドラムソロ~世界はファンシー
15.スロウカーヴは打てない(that made me crazy)
16.天国と地獄
17.シュガーソングとビターステップ
18.101回目のプロローグ
en1.crazy birthday
en2.オトノバ中間試験
en3.春が来てぼくら
この3日後、東京ガーデンシアターにて無事にツアーも完走。
本当にお疲れ様でした。
自分が知る限り、コロナ禍以降ここまで長いツアーを一本も取りこぼさずに走り切ったバンドはそうはいない。
しかもアルバムリリースから1年以上の時を経てである。
そんなユニゾンを見ていると、たとえ時間はかかっても、成し遂げられるときが来るかもしれないという希望のようなものが湧いて来さえする。
そして今年はこの後も、対バンツアーのリベンジとなる「fun time HOLIDAY 8」や、4月にリリースされるシングル「kaleido proud fiesta」のツアーも予定されているので、一瞬も止まる気がないのがわかる(笑)
さらには直近ではこれまたリベンジとなるBase Ball Bearの対バンツアーやフェスへの出演など、まだまだ楽しみが尽きない。
相変わらず懲りもせずついていきたいし、そのためにも引き続き健康でい続けて、これまでの大切が続くように、なんて。