素人向けのDAO立ち上げベストスキームがあるので聞いてほしい。
最近、DAOについて評議された上流特化の記事が多いなーと思う。
大体みんな考えていることは一緒なので「活用方法、可能性」とかにもう意味はなく、現場では何がおきているかの情報が必要なはず。
というわけで、今回は現場の実情を執筆する。
2024年4月に合同会社型DAOの設立が可能になり、僕の周りでも2つ3つ設立して、しっかり運営を始めてみたがベストソリューションにはなっていない気がしている。
この記事では、合同会社型DAOに関して、
を主観ベースで書き下ろしていく。
実際に行ったこと
現時点でオープン可能な情報として2つの合同会社型DAOを設立した。
① iUDAO合同会社
iUDAO合同会社に関しては、個人的に正直あまり関わりがなく言及することはあまりない。
② RooptDAO合同会社
RooptDAOは僕が代表社員として声かけをして、業務執行社員7人で開始したプロジェクト。
実際にゼロベースからの立ち上げをしたので色んな景色が見れた。
立ち上げ期からの備忘録をメンバー内で順番にnote化しているので、ご興味ある方はぜひ。
感じた良し悪し
まずは、人づてでiUDAO合同会社から1つだけ聞いた課題としては、「銀行口座がつくれない。」とのこと。
DAOをしようとする組織が、「銀行口座がつくれなくて困っている」というのも笑っちゃう話ではあるが、たしかに法定通貨で報酬を払いたいという直近のニーズに対応するには銀行口座が必要で、組成時メンバーの個人の信用度によっては口座は作れないだろう。
後述する現行でのDAO組成運用の最適解でも触れるが、プロジェクトが安定するまでは法定通貨での支払いニーズには答えない方が良い。
次に、僕自身、代表社員として参画しているRooptDAO合同会社について。
良いと思った点
合同会社型で設立してみて良かったと思う点は、DAO運用における各書類のテンプレートが誕生したこと。
定款、ホワイトペーパー、トークン規定、他運営規程といったDAOを運営するための最低限必要な情報をまとめる作業が一般化された。
すべては日本DAO協会が各書類のテンプレートを作成してくれたことが大きい。
これまでは各DAOプロジェクトが独自の方法で規定やホワイトペーパーをまとめていたが、シンプルに一律化されたことで設立のハードルが下がった。
ちなみに、基本的にDAOの運営はコアメンバーと話し合って合意の上で決めていくことが大多数なので、設立時における書類上の規定は決まっているようでないようなもの。
その中でも日本DAO協会が「この部分は最低限監査します」という立場で認証をしてくれるのはとてもありがたいことだ。
これからだなぁと思った点
逆に改善、進化していきたいと思った点は、
社員メンバーの登記手続き
本人確認手続き(印鑑証明の提出)
代表社員の存在
法人の印鑑作成
という主に「普通の会社設立と何ら変わらない業務が必要」という点。
法人格をもてる、金銭的配当が可能、という利点を得るために、DAOの特権(参加ハードルの低さ)を全消ししてしまうことになっている。
そもそもDAOはトークンという非常に扱いやすい通貨/証券を活用してプロジェクトを進めていくので、設立や参加の業務だけでここまで手間をとってしまうのは論外だ。
もちろん投資家保護の観点や現行法律から最大の許容なのは理解している。
自民党web3PTのみなさん、使いこなせて申し訳ないです。という気持ちだ。
と、弱点ばかりをつくのは正直視野が狭く、本来の合同会社型DAOの活用意義は、
・トークンで資金調達が可能
・金銭的配当の分配が可能
・法人格として振る舞える
という、「成果がでてから考えればよいこと」に偏っている。
手軽さが大事な立ち上げ時期にとって、会社設立のメリットは特にない。メンバー同士の信頼が成り立っていれば全く必要がないと言っても良い。
あと、今の国内DAO情勢的に暗号通貨で資金調達を始めるプレイヤーはいない。まだまだ断然クレカ決済が優勢。
では、DAO立ち上げのベストスキームは?
「合同会社型DAOはミドル期に設立する!!」
具体的にいうと、集まった資金の精算が必要になるタイミング手前での設立で問題ない。
では、合同会社型DAOを設立するまではどういった座組で運営すれば良いのだろうか。手順を説明する。
1. タスク遂行分のトークン付与基準を決める
結構面倒なタスクなので後回しにされがちだが、絶対に一番最初に話し合うべきポイント。
最初のうちは業務は限られているのでざっと以下の業務を時給換算して合意を得るべき。
・AMA進行
・議事録
・AMA参加
・note執筆
・ホワイトペーパー作成
・その他ペーパー作成(資料など)
・HP作成
・FT,NFTミント作業
など
RooptDAOメンバーが作成したら素晴らしいリワード単価表はこちら。
この表の内容が優先度が高いものから段階的にスマートコントラクト化されていく。
2. マルチシグウォレットを作成する
DAOを組成する際に一番重要といっても過言ではないのが、トレジャリーの被中央集権型管理だ。
合同会社型DAO設立をする際の定款やホワイトペーパーでの記載にも必要になってくる為、ウォレットの共同管理は間違いなく実施しておくべき。
コアメンバーと共同で利用するマルチシグウォレットを作成する。
Gnosis Safeがわかりやすくてよい。
ウォレット代表者が作成時にガス代、800円くらいを払う必要があるので立替金として後々DAOから返してもらおう。
3.DAO運用ツールに連携する
マルチシグウォレットをDAO運用ツールと連携する。
「DAOX」というツールを使えばNFTの発行から売上のプールまで可能。
投票機能もついているので予算の使い道や入出金の合意議決をすることもできる。
ちなみにDAOXは日本DAO協会のDAOツール認証も受けている。
海外ツールだとAragonがおすすめだが、投票一つにガス代がかかるので初期から資金力があるDAOではないと破産する。
「NFTやFT発行プラットフォームにマルチシグウォレットを紐づける。」
これがDAO運営における最低条件であり、これだけで問題なくプロジェクトは推進できる。
リワードトークンの換金スキームやインセンティブ設計については長くなるので今回は割愛する。
4. 合同会社型DAOを設立する
そこそこ運用が進むと、
・契約まわりで会社のエンティティが必要
・利益が出始めて配当の準備が必要
・トークンの現金化が必要
なタイミングがやってくる。
そのタイミングで始めて合同会社型DAOの設立を開始する。
登記に必要なのは、合同会社型DAO設立に理解のある司法書士。
マネーロンダリングの観点など、DAOならではの特殊な項目があったりする。
もし身近に知見を持った士業の先生がいなければ、
ガイアックスが設立経験のある寺本先生とパートナーを組んで組成支援をしているので相談してみると良いかもしれない。
ちなみに、登記時は書類提出が面倒なので社員は2人だけを専任して登記するべき。
5. メンバーを業務執行社員にする
登記完了後に残りのメンバーを業務執行社員にする。
配当を配るのであれば配当金額の議論等をして、定款やホワイトペーパーを更新しながら金銭的事項を対処していく形となる。
マルチシグウォレットに溜まったトレジャリーを各メンバーのウォレットに送金し、人によれば法定通貨に換金する場合もあるかもしれない。
という流れで最低限のDAO運用はできることは実証している。
もし、小さく実験程度に始めていきたい人はぜひ参考にしてほしい。
もちろん、初期から暗号通貨で資金調達をするケースや、最初から配当分配する気満々のパワフルで先進的なDAOがでてくるのが理想的ではある。
ただ、日本の現行では、「持続可能性の高い民主的組織をweb3技術を表面に出さずにいかにスムーズに浸透できるか」が最大のニーズになっている。
小さくてもいいので、一つでも多くの資金調達を実施するDAOが増え、それぞれのノウハウを共有しあえる状態になると嬉しい。
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