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DAOが僕を動かすのは「消費社会の変革」
DAOの市場を開拓する一年だった
僕はガイアックスという会社でDAO特化の事業部を担当している。
2023年は、約15社の担当者と一緒にDAOの組成事例をつくり、つい最近にはDAO FORUM 2023を主催して、大企業中心に450社以上を動員しガイアックスのDAO事例の集大成を発表した。
とにかく、蓋を開ける作業だった。内閣府がDAOの促進を公表してくれたのは良いものの、DAOの成功事例などあるわけでもなく。誰かがファーストペンギンになるしかなかった。
DAOやNFTといったバズワードも2023年の半ばには鎮火し、本質的な理解をもった人の合間で実証実験してきた。
その中でも僕は、DAOのマスアダプションには企業、それも大企業からの成功事例が必要だと思い、少数精鋭のメンバーでコンサルティングを進めてきた。ガイアックスのメンバーもだが、クライアント企業のDAOプロジェクト担当者はよくこんな如何わしいドメインに投資してくれたなと思う。
最終的に現時点で、かなりの進捗発見があり、本当に意味のあった一年だったと思う。
2023年はDAO「らしき」ものでいい
じゃあ堂々と純度の高いDAOが組成できたのかと言われると、60点と答えるだろう。
僕が思う純度の高いDAOはやはり、プロトコル(スマートコントラクト)をベースに、リーダーがいなくても自走する組織。
この理想的なDAOを完成させるには大きく3つのステップがあると思っている。
第三段階目が理想的なプロトコルベースのDAOだとして、
第一段階は、そもそものコンセプト、原資に活用できる既存アセット、インセンティブ設計、インセンティブを持続するためのマネタイズポイント、その他モチベーション維持のギミック、独自のルール設計、など多くの要素をクリアする必要がある。
この段階は比較的アナログでできるのでweb3.0は関係ない。
ここからプロトコル化させるためのテクノロジー導入として、暗号資産ウォレットの利用、NFTの導入、報酬の対価となるFTの活用が第二段階になる。
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2023年の1年で第二段階までの実装ができた。個人的にシェアハウスをDAOで運用するRooptDAOはいち早く第三段階目に移行するべきだと思っている。
2024年取り組みたいのは大きく2点
DAOのルールをスマートコントラクトにのせる
秀逸なビジネスモデルを導入し経済的インパクトを創出する
これまで作ってきたベースに磨きをかけ、1事例でもいい、世界でも注目されるDAOを作り上げたい。スキームの評価はもちろん、持続可能な経済的インパクトの創出の面に注力したいと思う。
DAOに情熱をそそぐ理由は「消費社会の変革」
話は広がるが、今の日本の消費社会はだいぶやばいなと思う。
高齢化社会による働き手不足や、最近は円安。こんなディスアドバンテージの中、企業は1円でも多くの利益を創出しなければいけない。
そりゃ一生懸命にマーケティングをするし、一円でも多く単価を上げる。
消費者は欲求が強制的に必要以上に底上げされて、消費に消費を重ねる。まぁ止まらない。でも給料は変わらない。消費に間に合わせるために働く。ストレスがたまる。土日休みに、また消費する。
僕が言いたいことは、多くの人は、自分の意思で時間とお金と体力を使うことができていないのではないかと思う。
DAOはそもそものコンセプトが、「成し遂げたいこと」を「好きな人たち」が「妥当な労力」で、実現するものであり、過剰な利益創出は誰からも求められていない。
なので参加者は自分の意思でプロジェクトに投資し、意義をもって働いて貢献し、最終的に見返り分が報酬で返ってくる。
簡単に言い過ぎかもしれないが、この価値観がポスト資本主義のソリューションの一手となるのは間違いないと思う。
資本主義に片足つっこみながらでいい
とはいえ、こんなことを言っておいて、僕は別会社で年間営利数千万を目標としているC向け事業を経営している。
売り上げを出すのは好きだし、競争も好き。資本主義からの脱退は流石に不安すぎる。
みんなもそうだと思う。明日からヒッピーになれるわけではない。各々守るものもあるし。
だから右足は資本主義社会での競争で奮闘し、左足は社会主義の実装に挑戦していきたい。
3年後あたりに丁度いい立ち位置ができるのではないかと思っている。
DAOワーカーを普及させる為の法規制改定
3年以内に、
DAOによる利益分配
(ライセンス不要のセキュリティートークン発行)DAOの有限責任
DAOの法人格
ステーブルコインでの報酬受け取り
あたりが実装できれば、かなり現実味のあるラインに来れるのではないかと踏んでいる。
僕のような資本主義の競争に疲れ始めた人が、少しずつ社会主義にシフトしにいけるシステムとして、
DAO型クラウドファンディングを作りたい
急だがここで目をちょっと離して、今のクラファンのプロジェクト一覧をイメージしてほしい。
興味のあるプロジェクトに参加する為に、NFTを購入。5,000円でポチる。購入費用はDAOの運用資金に使われる。
このNFTは株式会社でいう、ストックオプションにあたる。
NFT保有の意味としては、セカンダリーマーケットで売却できる証券性を持ち、コミュニティ参加の証明になり、経営方針に参画するガバナンス権を持つことができる。自分が投資した費用の使い道にも意見することができる。
また、NFTにはユーティリティ機能として何らかの特典をつける場合が多い。DAOが運用する物件に住めたり、実った農作物が届いたり、株主優待券みたいなもの。
DAOワーカーの働き方
朝起きて、スマホを開いて、自分の参加しているDAOプロジェクトを確認。
今日のタスクをこなして独自トークンで報酬受け取り。
独自トークンをステーブルコインで吐き出して法定通貨同様の利用をしても良し、NFTを買い増ししてもよし。
ある時、そのDAOプロジェクトが急激な成果を出し始めて、DAOに新規参加したい人が増えたり、既存メンバーがNFTを買い増したいニーズが広がり、1NFTの価値が向上し始める。
当時は5,000円で買ったNFTが、今や20,000円でマーケットに出ている。そろそろ自分は違うDAOに入りたいと思っていた時期なので、自分のNFTを売却して利確し、その利益で他のDAOのNFTを購入してメンバー加入。
そうやって、仕事をしながらインカムゲインとキャピタルゲインを楽しむ生活が可能になる。
インカムゲインがある分、ライスワークとして成り得るのが大きなポイントだ。
こういったプロジェクトをいくつも掛け持ちすることで、1つの企業に就職する必要はなくなり、自分の興味のある分野で仕事を全うし、本当のオーナーシップをもって生活することができる。
全員が全員というわけにはいかないが、こんな働き方で生きていけるのであれば、無理した娯楽への追求や物資の消費も抑えられるのではないかと思う。本来の余暇を得るのではないだろうか。
社会全体側で考えても、働き手不足でタイミーやメルカリが注目されていることもあり、ギグワークと呼ばれていた価値観がリバイバルすると思う。
真新しい投資の形
ちなみに、気づいただろうか、これは新しい働き方だけではなく、新しい投資の形になる。
これまでの投資の形を平たく順に書くと、
①一般的な投資
株式やFX、不動産投資は、a)投資して b)待つ c)保有資産を売却して金銭的リターンを得る。もしくは損失を被る。インカムとしては、配当や賃貸収入などがあるが自分の労働には比例せずアンコントローラブル。
②寄附型投資
投資というより寄附に近いが、クラファンの誕生により、a)投資して b)待つ c)体験/物資的リターンを得る。という形が増えた。インカムはないと言っていいだろう。
③貢献型投資
これがDAOの醍醐味にあたる、クラファン2.0とでも言える。a)投資する b)働く/貢献する c)労働の対価で金銭的&体験的リターンを得る d)参加権を売却して金銭的リターンを得る。もしくは損失を被る。自分の労働に対してインカムゲインが得られる。
僕は③の貢献型投資が本質的なクラウドファンディングの形だと思っている。
近い将来、このプラットフォームを作るために、DAOXというDAOの組成運用インフラを開発している。そして、貢献型投資が上手く回るスキームやコンセプトを見つけるべく、多くの企業や自治体さんとDAOの組成運用を実施している。
まぁ既存のクラファン事業者が手を出してくれると良いが、僕らガイアックスほどDAOを理解しているとは思えない。フィナンシェも惜しいな、と思う。
だから僕らが動く。このような新しい投資のあり方、働き方をいち早くマスアダプションしにいきたい。
DAOの世界線に期待を込める皆さんへ
こんなプラットフォーム上で働きたいプロジェクトを羅列させる為には、イカしたビジネスモデルを作る能力と文化的訴求が必要不可欠である。
さらにはプロトコルを中心として組織運用の為のアーキテクチャーと開発技術が求められる。
こんな大そうなことをガイアックスメンバーだけでできるとは思っていない。
このDAO黎明期に、DAOだお言っている如何しい皆で協力して何とか成し遂げれないかと思う。
国内上場企業で唯一、この雲かかっている事業ドメインに投資をしてくれるガイアックスというロケットを多数の個人の力で運転していきたい。
資本主義社会の地球でやる事はやりつつ、ちょっとより良さげな社会がありそうな月に顔をだしにいきたいなと思っている。