がん早期診断市場の規模予想(2035年)と関連銘柄:米国株投資
Illuminaの資料を基に、そろそろ実用化されそうな、がん早期診断の市場にフォーカスして記事を書きたいと思います。
がんの早期診断の手段としてのリキッドバイオプシーを使った方法が注目されています。
これは主に血液を使った診断方法です。
がんは遺伝子に何らかの異常が起こった結果、細胞分裂に制御が効かなくなることで発生する病気です。
血液の中に微量に含まれるがん由来のDNAをみることで、がんの早期診断ができるのではということで注目を集めています。
市場規模はどれくらいになりそう?
※出所:illumina
上の図はIlluminaの投資家説明会でハイライトされたものです。
この図によると、がん関連リキッドバイオプシー検査関連の市場は2035年に75B USD、8兆円弱になるとされています。
一番大きいのが、Screening市場(早期診断)
Screening市場は、足元ゼロの状況から2035年に4兆円程度。
Screeningは、がんの診断が下りていない人が受ける検査を想定しており、早期診断を目指すものです。
この図では年間1億5千万人が検査を受ける想定です。
Illuminaは2035年のASP(平均販売単価)は300ドル程度と想定しており、これに人数をかけた数字が市場規模です。
ちなみにIlluminaはすでにLDT(保険は下りないが、商業で販売することが認められた検査)を来年ローンチする予定。
最初のASPは1200ドル程度を予定しているそうです。
繰り返しになりますが、今後10年ちょっとで、3万円くらいになるという計画です。
ちなみに、この価格ですが、主にシーケンスコストと比例しています。
ゲノムあたりシーケンスコストは過去15年くらいで、数億円から600ドルに下がりました。
これを主導したのが、DNAシーケンサー製造のIlluminaということになります。
では、二番目に大きい市場と三番目に大きい市場は?
図に乗っている残り二つの市場は、Therapy selectionと、Monitoring。
Therapy selectionとは、がんの遺伝子変異の度合いを調べることで、オプチーボなどが、効き易い患者を選別できるというもので、Guardant healthなどが手掛けています。
こちらはすでに市場が立ち上がっています。
Monitoringは、がんの再発をリキットバイオプシーによりモニタリングするという市場で、これも早期診断と同じ原理を使うと考えられます。
これら二つの市場もかなり大きく、2035年時点で4兆円ほどの市場になると同社は予想しています。
がん早期診断を狙っている会社で先頭にたっているのは?
がんのスクリーニング市場で有望な会社として、Exact lifesciences(EXAS US)と上で述べてきたIllumina(ILMN US)があります。
両社ともに、がんから血液に遊離してきたDNA(ctDNA)の配列を分析するためのコア技術の確立を目指しています。
両社とも買収により技術を獲得しました。
Exact lifesciencesはThriveという会社、IlluminaはGrailという会社を買収。
二つの会社がなぜ有望と考えられるかというと、臨床実験により、極めて高い特異度を達成している点です。
詳細はExactが行った試験であるDetect-A study、Illuminaの試験であるCCAR studyを参照してもらいたいのですが、それぞれ特異度99%を達成しています。
特異度とは、偽陽性が出る確率の低さであり、これはがんのスクリーニングでは極めて重要な指標です。
何故かというと、同社が狙っているように1億人をこえる人数の検査をするとなれば、偽陽性が大量に出てしまうためです。
例えばがんマーカーなど既存の技術は、大量の偽陽性を出してしまうことが一番の問題であると考えられます。
2社の現時点での成果は?
二つの試験を見ると、ややIlluminaが優位に立っているように見えます。
その理由としてはPPV(陽性反応的中度)がIlluminaのほうが高いことに加え、Illuminaは1滴、つまり一回の検査で高い特異度を出せています。
Exact lifesciencesもIlluminaと同様の99%程度といった高い特異度を出せているのですが、実は2滴、つまり2回検査しています。
これは、一回目の検査で陽性になった人に対し、二回目の検査をしなければならないということで、一回だけの場合特異度は95%程度と実用的な数字は出せませんでした。
これは手法の違いが影響しているようです。
両社が、がんから血液に遊離してきたDNA(CtDNA)を見ているのですが、
Illuminaはメチレーション、Exact lifeはミューテーションを見ています。
ミューテーションを見る場合、CHIPと呼ばれる変異(がんではないのですが、がんのような変異)が邪魔をします。