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ストリートピアノに、心掴まれる 

NHKが不定期で放送しているストリートピアノの番組が大好きだ。

世界の空港・駅・街角に置かれた“自由に弾けるピアノ”。
人々が思い思いに音楽を紡ぎ、行き交う人が耳を傾ける。
一台のピアノから生まれる“一期一会”の感動・・・
ノーナレーションと定点カメラで見つめる。

NHK


この番組を観ていたらいろいろなピアノがあることにまず驚く。

コロンとしたサイズの真っ白でかわいいアップライトピアノ。
光る鍵盤がついている加工されたピアノ。
古くから大切に弾かれてきたであろう、音に哀愁漂うピアノ。
震災後、職人が修理した生命力を感じるピアノ。
寄贈されたばかりの、真っ黒で艶のある立派なグランドピアノ。

でも、どのストリートピアノも決して存在感たっぷりな感じはしない。
コンサートホールに置かれているような威厳あるピアノとは一味違うのに、確かな魅力がそこにはある。

ストリートピアノは、静かにそっと佇んでいて、
訪れる人々が素敵な音楽を奏でるのを今か今かと待っている。そんな感じがする。
ふらっと誰かが椅子に座って鍵盤に手を置けば、どんなピアノもキラキラと
輝きを放つ。

ストリートピアノを弾いていく人は実にさまざま。
旅行に家族で来ている小さな女の子。
会社帰りのおじさん。
80歳を過ぎたお洒落な婦人。
どこかの無名のロックバンドのボーカル。

世界には、こんなにもたくさん音楽を愛している人がいるんだと思うと、
嬉しくって心が跳ねる。
私も音楽が好きだよ、って画面の向こうに叫びたくなる。

別に上手じゃなくてもいい。
音楽学校の人も、独学の人も思い思いにピアノを弾く。
クラシックでも、ジャズでも、ポップスでも、何を弾いても誰もとがめない。
オリジナル曲を披露する人も少なくない。
それぞれが思い思いに、純粋にたのしんでピアノを弾いて、弾き終わったら
ササッと椅子を立ってそれぞれの生活に戻っていく。

この番組は、ストリートピアノを弾いていく人々の人生が
少し垣間見えるから、それで好きなのかもしれない。

音楽がその人にとってどのようなものなのか、みんなカメラに向かって熱く語ってくれる。
音楽に小さな頃から親しんできた人、辛いときにビートルズに救われて音楽を学び始めた人、今は亡き家族が音楽を愛していたという人。
それぞれの形で音楽に関わっていて、音楽を心から慕っている人ばかり。

観ていて本当にしあわせになれる番組だけれど、
壮絶な人生を持つ人もいる。

今日観ていたワルシャワ編では、
ウクライナ生まれの姉妹のミュージシャンがいた。
愛する祖国から逃げてきて、ウクライナのためにコンサートを開いているんだって。

ウクライナ人の母とロシア人の父を持つ、少女もいた。
健気にブルグミュラーを弾いていたけれど、
彼女のおかれている状況と心情を思うと、切なくてたまらなかった。
モスクワで働いている父には、オンラインでしか話せないそう。

皮肉なことだけど、抱えている苦しみ悲しみが大きければ大きいほど、
奏でられる音楽は聴く人の心にまっすぐ届く気がする。
伝えたい想いが明確だからかな。
ただただ聞き手として、込められているであろう痛烈な想いを
想像しすぎているだけかもしれない。


いつか私も、ストリートピアノ弾いてみたいなあ。
近くにないのだけど、ストリートピアノを弾くために旅に出るのも素敵かもなあ。

なんて思う年末の夜です。

みなさん、良いお年を。
また来年、お会いしましょう。

(NHKの番組、観てみてね。
年明け、元旦の夕方に放送があったように思います。)

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