【モデル紹介】 EYES / EYES+
【主な仕様】
EYES / EYES+共通
・ドライバ構成:BAドライバ x9基(片側)
Low : Knowles RDE x4BA
Mid : Sonion 2600 x2BA
High : Sonion E50 x2BA
SuperHigh : Opened-EYE Driver (Knowles WBFK) x1BA
・音圧感度:107dB SPL/mW@1kHz
・インピーダンス:(未測定)Ω@1kHz
EYES+ (プラスオプション適用時) のみ
・ネットワーク回路の部品をアップグレード
・フィルタを交換可能な仕様にアップグレード
・内部配線を銀メッキ銅&銅の複合線にアップグレード
【モデルの特徴】
(1) Opened-EYE Driverによる超高域再生
超高域にはオープン型BAドライバ:Opened-EYE Driverを採用しています。筐体が目型に開口されており、振動板が露出しているのが特徴です。音が遮られることなく出力されるため、超高域のロス低減が図れます。
カナル先端に設置し、かつ開口部を鼓膜に向けて配置することで、ロス低減による音場拡張や解像感の向上を図っています。
(2) 高性能ドライバの採用とチューニング手法の最適化
高域ドライバにはSonion E50シリーズを採用しています。繊細・滑らかで、刺さらない高域が特徴です。BAドライバとESTドライバの中間のようなイメージです。中域ドライバにはSonion 2600シリーズを採用しています。低〜中域において滑らかな特性を有し、マルチドライバ機の中域に適しています。EYESではさらに滑らかな特性にチューニングしており、聴きやすさと他帯域との滑らかな繋がりを狙っています。低域ドライバにはKnowles RDEシリーズを採用しています。他のドライバと比較して特に歪率が低いという利点があります。EYESではチューニング手法の検討を重ね、その性能を維持しつつ狙った低域特性を得ています。
(3) 3D-CADによるサウンドチャンバ設計
EYESではサウンドチャンバ構造を採用しており、カナル部分の限られたスペースを有効活用しています。低・中・高域ドライバからの音導管はチャンバに接続されます。Opened-EYE Driverはチャンバ内に設置しており、そこで全てのドライバの音が合流します。すべてのドライバを正確に配置するため、3D-CADによる設計を行っています。
(4) 耐久性を向上させるドライバ実装方法
EYESではドライバにレジン製のホルダを装着することで、シェル内への固定をレジン同士の接着によって行っています。従来の直接固定(金属-レジン間の異種素材の接着)に対して接着力を向上させ、ドライバ脱落や断線のリスクを低減しています。
【プラスオプション】
基本モデルのEYESにプラスオプションを適用したEYES+は、次の3点をアップグレード。
(1) ネットワーク回路の部品をアップグレード
EYES+ではネットワーク回路の部品をフィルムコンデンサと金属箔抵抗にアップグレードします。フィルムコンデンサにはRubycon PMLCAPおよびPanasonic ECPUシリーズを採用。金属箔抵抗にはVishay Naked Z-Foilを採用。左右で特性のマッチングを取って使用します。いずれもオーディオ用途として定評があり、解像感の向上などが感じられると思います。
(2) フィルタを交換可能な仕様にアップグレード
EYES+ではカナル先端に装着されたフィルタを交換可能な仕様にアップグレードします。フィルタはOリングで固定されているため簡単に取り外すことができ、清掃や交換が可能になっています。
(3) 内部配線を銀メッキ銅&銅の複合線にアップグレード
EYES+では内部配線を銀メッキ銅&銅の複合線にアップグレードします。芯数および断面積の増大による抵抗値の低下に加え、配線そのものが丈夫になることで耐久性も向上すると考えられます。
【開発後記】
(1) 音質設計について
音質の設計テーマは「ニュートラル+リスニング」です。ニュートラル70%+リスニング30%くらいをイメージしています。どちらにも振れるドライバ選定・構成によって帯域バランスを調整し、Opened-EYE Driverで補強しています。MYLESTONEではニュートラル90%+リスニング10%くらいをイメージしていたので、EYESはリスニング側に振った位置付けです。
やはり最大の特徴はOpened-EYE Driverです。実は音量としてはそれほど出していないのですが、搭載することで音場の拡張や華やかさの向上という効果が得られました。最初に入手して試したのは4~5年前になりますが、当時は全て手作業で製作していたため加工精度の面で使用を断念しました。しかしここ2~3年で確立した3Dデータ・プリントによる製作フローによって精度の課題をクリアできると考え、設計を開始しました。
Opened-EYE Driverはその特性を最大限に活用するためにカナル内部のサウンドチャンバに埋め込む形で搭載しています。カナル側面に穴を設け、そこから差し込む形で実装します。これは3Dデータ・プリントによる製作フローでなければ困難でしょう。
(2) 構造設計について
構造設計のテーマは「合理性」です。ただし、これはEYESに限らず基本のテーマです。EYESに関して言えば次の3点が主要なポイントです。
(1) Opened-EYE Driverの搭載方法
Opened-EYE Driverは通常のBAドライバと比較して高域成分のロス低減が図れますが、ドライバそのものの性質であり、それを損なわない搭載方法が重要です。一般に高域成分は長い・狭い経路によって減衰します。そこでEYESでは広く短い経路で音導するために、カナル先端のサウンドチャンバ内に振動板を鼓膜に向けた状態で搭載しています。一般的な音導管が直径1~2mm前後であるのに対して、EYESのOpened-EYE Driverは直径5mm弱のサウンドチャンバ(音導管)を通して音を出力しています。
(2) チューニングポイントの増加とメンテナンス性の向上
EYESではフィルタによるチューニングを多用しています。カナル先端部のフィルタだけではなく、音導管内とシェルにもフィルタを設けています。これらは完成後でも交換が可能(*プラスバージョンのみ)であり、チューニング最終段階で分解が不要となるため調整を効率的に行うことができました。
同時に汚れの侵入防止やメンテナンス機能の役割も果たしており、日常使用においても非常に大きなメリットです。
(3) 耐久性の向上と実装時のリスク軽減
EYESではドライバホルダーを介してシェルとドライバを固定しています。ドライバの直接固定に対して固定強度が向上しているのと同時に、実装時のリスクも軽減しています。
EYESで採用したドライバの一部にはベントと呼ばれる非常に小さい穴が筐体に設けられており、それを塞いでしまうと特性が変化します。かつ硬化前のレジン(液体)はベントからドライバの内部に浸入してドライバを破損します。
直接固定の場合はレジンをドライバに直接塗布するため、ベントを塞いでしまうリスクがありました。一方でドライバホルダーを介した場合はベントと固定位置を物理的に離すことが可能になり、ベントを塞ぐリスクを低減しています。
【作例紹介】
【レビュー紹介】
皆様からいただいたレビューをご紹介します。