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副業「指導者」 Vol.4

副業可、北本市職員に認める 地域貢献し、週8時間以下・1カ月30時間以下・平日は3時間以下が条件

少し古くなってしまいましたが、この「埼玉新聞」の記事は非常にセンセーショナルでした。「いよいよ、埼玉もか」と。
検索したら、一昨年にはこんな記事もありました。

公務員の〝副業解禁〟自治体にもジワリ 神戸市、奈良・生駒市で基準明確化

もともと、地域のスポーツを取材している中で、特に「スポーツ少年団」と呼ばれる非常にボランティア度の高い団体がどこも苦労しているのを目の当たりにしていました。
その大きな課題はとにかく指導者。
最初に書いてしまいますが、公務員が仕事の流れで指導してくれるようになったら、どんなにいいだろうかと思っていました。

そんなことを妄想するようになったのは、私自身がサッカーに触れた窓口は小学校の部活動だったからです。部活動があったので、悩むことはなかったのです。
というか「スポーツ少年団」の存在を知ったのは、こちらに来てから。逆に「小学校で部活動?」と不思議そうに言われたのを覚えています。

それでも、地域のボランティアの人たちから野球を教わりました。
春から夏の限定でしたが、小学校の校区を6つに分けてチームを作り、大会を開いていました。確か、そこで優勝したチームが市大会に出場したと思います。
そうそう、負けても補強メンバーに選ばれることもあり、なんだか「都市対抗野球」のようなシステムでした。

練習は朝。週2回くらい、やっていましたね。4年生から参加がほぼ義務化されており、親の躾けがよろしくて毎回練習に参加していたおかげで、4年生から毎年登録メンバーに入っていました。技量は聞かないでください……。
あれが、「スポーツ少年団」の原型だったかもしれません。

それで放課後です。私の場合、放課後すぐにボールを蹴る環境があったということです。
また西日本というのは、東日本に比べて日没が遅いこともあり、日曜以外はどっぷり暮れるまでボールを追いかけました。

振り返ると5年生のとき、地元・島根大学を卒業したばかりの先生が担任となり、その先生がサッカー部の顧問になったのです。まぁ、強烈に勧誘されて……入ってすぐにレギュラーに抜擢してもらいました。

しかし、基本技術はほぼ無いままにも関わらず、身体能力だけで対応できたものですから、結局そこから伸びなかったという残念な結果に終わってしまいました。ただ、蹴る時間があれば、それなりに形になりますし、そこで正しい指導がなされれば(もっと)伸びるはず。時間と技量は比例するのは当時でも実感したものです。

だから、こちらに来て子どもたちが平日の放課後、ボールを蹴ることができない、そういう環境が無いということを聞き、逆に驚いたものです。同世代に聞けば、自分たちでなんとかしていたというのと、土日は朝からずっと「スポーツ少年団」でサッカーにどっぷりだったとのこと。

サッカーに携わる中でJリーグ人気が高まるとサッカースクールがあちらこちらで始まり、「週末はスポーツ少年団、平日はスクール」という話を聞くようになりました。

当時の笑い話として、「少年団の指導者が『アイツ、上手くなったんだよ。俺の指導がいいからだよ』と言うけれど、上手くなったのは平日のスクールのおかげ」というのがありました。今はどうでしょうか。

実際、土日は練習では無く試合のオンパレードというチーム、まだまだ多いと聞きます。「スポーツ少年団」の活動の中ではチームとして個人として、練習そのものが十分にできていないというのが現状でしょう。

「平日、練習できないの?」
あるとき、軽い気持ちで「スポーツ少年団」の指導者の皆さんの前でこんな質問をしたことがあります。速攻で皆さんが口を揃えて言った言葉はこうでした。
「できるはずがない」

続けて、
「平日の夕方、誰が指導できると思っているのか?」
「学校のグラウンドは開放してくれない」
挙げ句の果ては、
「平日の子どもたちは塾で忙しい」

確かに、地域に住んでいるからといって、仕事も自宅もしくは市内でしているかと聞かれれば、そういう環境ではないでしょう。
部活動ではない、学校とは直接的に関係ない団体への施設貸し出しは容易ではありません。
で、塾かぁ……。

この話の流れで一番引っかかったのは、「誰が指導できるのか?」でした。
立ち位置として「自分たちが指導する前提」なんですね。

近年、元Jリーガーたちのセカンドキャリアが話題になっています。
古巣のJクラブに指導者として残れるのはごく少数という現実の中、サッカーに関わりたいという人たちは年々多くなり、私の教え子でも指導者を目指して学生がいます。

単純ですが、平日の夕方、2時間程度の指導だけで食べていけるサラリーを出せるクラブというのは、なかなかないのではないでしょうか。街クラブであればチームを持ち、スクールも、と指導に追われて収入はいかほどでしょうか。要はJクラブではない、クラブの指導者という立場で食べていくのは容易ではないということです。

それこそ一学年50人程度所属するチームならば、それ相応の月謝をいただければ別でしょうが(実際、公式戦に関われる選手はいったい何人なのでしょう?)、「スポーツ少年団」というほぼボランティア団体ではそのような収益を得ることは難しいのが現状です。

子どもからの視点で考えると、能力があり、両親に理解と金銭的余裕があれば、Jクラブをはじめとする相応の環境の中でサッカーはできます。しかし、それもごく一部と考えれば、地域レベルの環境をもっと整えてあげることが子どもたちの可能性を高めることができるはずです。サッカーも近所でできるのが一番です。

その担い手は、都心に通うサラリーマンではなく、職住接近の中で活躍している人たちでしかないのです。そう、子どもたちの下校に合わせて学校に顔を出せるフレキシブルな存在。それでいて、学校への出入り、校庭や体育館の管理も委譲できる存在……。公務員の皆さんこそが、最も適していると思うのです。

どうせならば「副業」というよりも「職務」にして、16時になったら地域の小学校で指導する人材を確保するのはいかかでしょうか。サッカーだけでなく、様々な種目の人材を登用して、適切な指導をして中学年代に送り出してほしいのです。

子どもたちの可能性を消さない、素晴らしい事業だと思います。
またセカンドキャリアに悩むアスリートたちにも、安定したサラリーを得ながら地域貢献という生きがいを持ってもらうことができます。

もちろん、北本市のように地域のNPO法人が受け皿になって、そこから幾ばくかのサラリーをもらって活動できるのであれば、それはそれでよろしいかと思います。しかし、少子化は待ってくれません。

地域コミュニティにも関わっていますが、やはり必要なのは人材です。
それも行動できる人材。
近い将来、各市役所・町村役場が、日中は業務をして、夕方からは地域振興の一つとして「指導者」として活躍してくれる人材を雇用してくれることを願っています。

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