陸上競技を考える

noteを始めて3ヶ月経ちました。しれっと始めたつもりでしたが、コロナ関連の記事は物凄い反響で色々シェアされてしまいまして。想定外にフォロワーもたくさん増えてしまいまして。影響力が高まると色々言葉に責任も出てきてしまいまいます。そうするとエンジョイのリスクが高まりますので。投稿ボタンを押す指が更に震えるのです。それは避けたいということで自分の立ち位置を改めて見つめ直しましたのであります。

その結果僕は①陸上を知らない宇宙人の視点と、②陸連の中の人の視点と、③自分が学んだスポーツビジネスの視点、この3つの視点を上手く融合させて、陸上競技に対する新たな気付きや、発見を話したり書いたりするのが良いかなぁと思っております。ということで、タイトルを「陸上競技を考える」縛りにしていこうと思います。やってみて、また変えるかもしれません。
とりあえず思ったこと書いてみようで始めたシーズン1、みんなが議論している話題にファクトベースで説明してみたシーズン2悪くなかったけど反響が大きすぎて精神的に良くなかったので、でシーズン3は色々考えてみることにしてみます。

ストーリーの紡ぎ方

ということで陸連競技のストーリーの紡ぎ方をどうしたら良いのだろうか、というテーマで考えてみたいと思います。このテーマにバシっとハマった本が西本さんにご紹介いただいた今からちょうど30年前に書かれた「おいしいラグビーのいただきかた」という観客の観客による観客のためのラグビー本です。

30年前の本が今でも芯を食った内容と感じたということは、観るスポーツのアップデートがあまりされていないということかもしれません。僕は、陸連に入り5年が経ちましたが未だに陸上競技をどう楽しんで良いかいまひとつ分かりませんし。

ここから少しずつ内容を切り取って考えてみます。

ラグビーをひとつの文化として捉え、成熟したスペクタクルとして楽しむやり方をオトナのラグビーと呼びます。

「ひとつの文化」「成熟したスペクタクル」、オトナのラグビーの具体的な説明は書かれていなかったのでニュアンスで読み取ると、多分基本的なルールの説明とかしないし、勝った負けたみたいな分かりやすいところで一喜一憂しないことなんじゃないかと思います。

例えば海外サッカーの中継をたまに見るのですが、選手が絶妙な体の向きでトラップした時のリプレイが流れたり、良いディフェンスをして相手の中盤の選手がボールを後ろ(ディフェンスライン)にパスを出させた時にサポーターから拍手が起きたりするシーンを見ると盛り上がる視点がニワカじゃないなと。そういう時に僕は、なんとも言えないフワッとした豊かさというか文化の差的な感覚になります。

そういう意味では、TrackTownShibuyaはルールや選手の説明はせずにコアな陸上の話をガンガンします。そしてニワカな僕は、ついていけなくて横でいつもググりまくっています。もう終わっちゃいましたが振り返るとTrackTownShibuyaはオトナの陸上競技の楽しみ方をやっていたのかもしれません。笑

そして具体的にオトナの陸上競技の視点を身に付けるには、ラジオのメインテーマにもなりつつある「ストーリーの共有」ではないかと思います。選手のストーリーが分かると勝った負けたを超えたところに面白さや価値を感じるようになるからです。つまり、分かりづらいところの味わいを楽しめるようになるということです。

そして本書を読んで改めて、ストーリーは選手とファンが紡ぐものではないかと思ってきました。

ラグビーを成立させるものは、・プレイヤー
・ルール、クラブ・ハウス、芝のグラウンド
・観客
以上の3つです。観客なしにラグビーは成立しないのです。協会もコーチも十分条件であって必要条件ではないのです。

この本にも書いてあるように協会は必要条件ではないのです。つまり協会の存在が無くても観るスポーツは成り立つよ~って話です。僕も正直なところ陸連みたいな統括組織ってあってもなくても、あんまり変わらないんじゃないかなぁって思っていまして、個人的な理想は協会は空気みたいになれば良いと思っております。

「陸上が盛り上がらないのは陸連のPRがイケてないからだ」なんて言われてしまうのですが「陸連なのかなぁ」と内心思っているところがありました。

さしあたってぼくら観る者がオトナの視点からラグビーを語るようにすれば、プレイヤーもレベル・アップするはずです。

観る者がレベルアップしたらプレイヤーもレベルアップする、僕もそう思います。

「記録が出る時って出そうな空気があるんです」ってラジオで西本さんと横田さんに教えていただきました。出るぞって空気を作れるのは陸連じゃなくてファンだと思います。

書くと長くなってしまいますが陸連の強化策のひとつとして「キメラ」プロジェクトというのがあります。6大マラソンにメディアの方々を陸連が費用負担して派遣して、マラソンを観る目を肥やして帰ってきてもらう取り組みをしました。そして西本さんがボストンマラソンに派遣されることに笑 競技を観る目を肥やすことは強化にも繋がるのです。

しかし、陸連が選手個々のストーリーを引き出すには2つの限界があると思っています。ひとつは大会ごとに主催者が違うこと。ふたつめに種目があり過ぎて選手を追いきれないこと。

Track&Fieldは「グランプリシリーズ」マラソンであれば「MGCシリーズ」という形で大会を括ってはいるものの、大会ごとに主催者が異なります。コロナによる開催可否判断を各大会ごとにしていたのも、それが理由です。

つまり各大会主催者は自分の大会の魅力は発信します。一方で他の大会のことにはそんなに積極的に情報発信はしません。つまり個々の大会という点での発信に構造上なりがちということです。

陸連も、ゴールデングランプリ、日本選手権等の点での発信です。唯一違うとすれば、代表選手の合宿や遠征等のチームJAPANの活動期間中の発信かもしれません。

メディアも同様、大会の結果とコメントを点で載せています。余程の選手でない限り個々のストーリーを取り上げてもらうのは至難の技です。

サッカーや野球のようにリーグ戦形式の興行はリーグやチームの広報がストーリーを作れますが、陸上は点の集合体なので誰かが編集しないとストーリーになりずらいと思います。

チームスポーツであれば試合の結果と結果を繋げばある程度チームのストーリーは作れますが、陸上競技が更にややこしいのは、個人競技なので試合と試合のストーリーを選手個人単位で追わないと面白くありません。

日本選手権という場には、ほとんどの選手が出場しますが、そこに至るまでの道のりも、日本選手権後の道のりも選手によって全然違います。

選手が1000人出れば1000通りあります。それぞれの選手がシーズンを通して出場パターンは何万通りにもなるのではないかとも思います。

世界陸連の新谷選手の記事の作り方は、参考になりますので見てください。

こういう観点から、点を繋いで線に、更に種目や選手間の繋がりも含めた面としてのストーリーを作っていくのは陸連だけでは到底追えません。だからこそ選手やファンの情報発信が陸上界の盛り上がりの必要条件なのではないかと思っております。

TVでは味わえない生の感激を知った時、「大人のラグビー」への第一歩を踏み出します。そして、シーズン中の秩父宮通いだけでは我慢できなくなった時、ウィーク・デーに練習グラウンドに日参するようになった時、それは「大人のラグビー」のひとつの死であります。つまり、ラグビー・ウォッチャーが"族"へと転生することを意味します。
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ひいきチームの練習を見るために、雨の日も風の日も必ず顔を出し、グランドの隅から練習を飽きもせずじっと見守っている"東伏見族"とか"八幡山族"と呼ばれる熱狂的ファンのことです。ここではそんなオジサンたちを"天狗山のオジサン"と呼びます。
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ラグビーではマスコミ情報より早く面白いし、的確です。

そして当たり前ですが、陸連やメディアよりファンの方が詳しいし、面白さを知っているわけなので、面白さをもっとおすそ分けして欲しいのです。何事も面白さの源は偏愛であることは間違いないと思いますので。

@EKIDEN_Newsや@EKIDEN_MANIAは陸上界の"族"ですし、僕はまだ知りませんが他にも色んな族がいるはずです。実際桐生選手が初めて9秒出した時の陸連の写真はマニアさんからもらったものです。

そろそろ話をまとめにかかると、陸上競技を面白くするには陸連、大会主催者、メディア、ファン、それぞれの役割を上手く絡めあっていくことが大事なんじゃないかと思います。

陸連職員としての僕はなかなか踏み込むのは難しいですが、ラジオのエンジョイ職員としての僕はこの部分を頑張ってみたいかなと思っております。

ではでは点と点を紡ぐにはどうしたら良いんだろう、というのが最後の課題ですがヒントは、ほとんど陸上界以外に転がっているもんです。教えてもらったnoteがこれです。

既に「野球を語る場所」という場があるようです。つまり、"族"が集いあーだこーだ言う場所だと思われます。

きっとこれから、こんな感じのことをやっていくんだろうと思います。

渋谷のラジオでのTrackTownShibuyaはサラッと終わりました。パンピーの僕がスタジオで毎週喋ってるのは不思議な感じでした。そして4月から文化放送で「TrackTownJPN」に。

今までの番組は「新国立を陸上競技でいっぱいにしよう!」というコンセプトですが、新たに柏原さんと生島さんも加わりパワーアップ。今後は、新国立ではなく武道館をいっぱいにしよう、ということになるみたいです。

僕は変わらず横で「なるほど〜」と思ったり、「その人誰よ」って検索したりしながら話についていって、いい加減陸上競技をおいしくいただけるようになりたいと思います。

渋谷のラジオはギリギリに来てもスタッフさんが全て用意してくださったので良かったのですが、今度は僕が機材をセットしてマイクテストとかしなきゃいけないので媒体としは全国区に昇格しましたが、放送環境はますます手作り感満載な状況です。せめて横田さんとゲストの方の交通費と謝礼を出せるようにスポンサーもみんなで取ってこないとなぁという状況ございます。

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エンジョイ職員
お金もったいないのでサポートしなくて大丈夫です。笑