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【寺子屋・森岡】陸上競技における奇跡の起こし方

そうだ寺子屋・森岡をclubhouseでやろう。

ふと朝ジョグをしながら思った。そういえば最近、横田さんも西本さんも忙しそうだなぁと。TrackTownJPNのメッセンジャーグループにもあんまり情報が飛び交わないし、萩ちゃん駅伝部のグループLINEもほとんどやり取りがない。選手もあんまりツイートしていないし、なんか最近つまんないなぁと思ったら、そうか、そろそろ日本選手権でみんなピリついているのか。と、いまさら気づきました笑

これ、みんな暇してんじゃないか?そして暇を埋められるの俺しかいないんじゃね?と自問自答。最近、1番LINEのやり取りをしているの誰かなぁと思ったらマラソン博士こと森岡芳彦さんだった。

森岡さんとのやり取りはテキストのやり取りだけで追いつけない情報量。週に1回ぐらいおしゃべりをして消化をしたい。という個人的な気持ちもあり、寺子屋・森岡のClubhouseをお昼時にやってみようと思って始めました。編集者やライターの方が取材をclubhouseで公開しているように、マラソン博士との雑談で自分的に腑に落ちたことを文字にまとめてみようと思います。

初回なので、ゆる~く話そうと思ったのに、マラソン博士から大盛り、味濃いめ、油多め、超コテコテの陸上トークを引き出してしまったので、しっかり書きました。

陸上競技における奇跡の起こし方

森岡さんは格上のチームや、選手と戦うときにどういった作戦を立てるのでしょうか?

森岡さんの監督歴の中で、奇跡が起きるときは、良い準備ができていたときが多いとのこと。その良い準備とは何か。まずは、選手のコンディションや実力をデータを細かく取ってきちんと把握する。次に、現状のチカラから見た現実的な順位やペース、位置取りを決める。そして、その現実選手に伝え、理解してもらうこと。

選手の気持ちからしたら、どんなレースでも出るからには優勝したい、ベストを出したい、そういった気持ちがあることは当然である。森岡さん自身も自分が選手だったらレース前に現実を突きつけられたくないと思うとのこと。

でも、現実をきちんと把握できていないと、実力以上のオーバーペースで入ってしまって後半失速したり、ラジオでも再三話にあがっているチョロついた位置取りをしたりと、結局は思うような結果が出ないことが多いとのこと。

シドニー五輪男子10000m7位入賞高岡寿成さんのレース展開

森岡さんから見て、世界と戦う上でのひとつの教科書となるレースとして挙げたのはシドニー五輪男子10000mで高岡寿成さんが7位入賞したときのレース展開だそう。マラソン博士によると高岡さんは、シドニー五輪前のベストは1996年の27:49.89で、決勝に残った20名中自己ベスト記録は14番目の状況。そこから7位入賞の結果を得られた背景には何があったのか?

入賞後のインタビューではアナウンサーの方から「前から積極的にいきましたね」的なことを言われていましたが森岡さん的にポイントはそこではないとのこと。

金メダルを獲得したエチオピアのゲブレセラシェ選手がいる先頭集団の後方、前すぎず後ろすぎずの位置取りが良かったと。そしてレース終盤に先頭集団が分裂したときに無理に追わず後方の集団について力をラストに残していく作戦が的中した。入賞後の高岡さんのコメントからも入賞を明確な目標と位置付けていたようで達成感に満ちた表情とコメントをされていました。当時の伊藤監督も五輪前のインタビューで高岡さんがスタート直後の位置取りが前にいすぎることを心配するコメントをしていたようです。

メダル狙いなら先頭集団についていかなければいけないところでしたが、入賞狙いならあの戦術が完璧だったと。

国際映像なのであんまり映っていませんがアーカイブがありました↓

2005年東日本実業団女子駅伝セガサミー

当時森岡さんが監督をしていたセガサミーのときのこと。当時セガサミーのチーム状況は怪我人がいたこともあり決して良い状態ではなかった。日々データを取り続けている森岡さんがチームの実力を客観的に見て、今のクイーンズ駅伝にあたる全日本駅伝に出場できる11枠のギリギリライン。そこで最初から最後まで11位狙いのレースをする作戦を立てた。

若い選手たちは駅伝が好きな選手も多く、気合いが入りがち。積極的な攻めたレースをしたいという選手もいたという。けれど、森岡さんは選手たちにきちんとデータを見てもらって、自分たちの現状を理解してもらい受け入れてもらう努力をした。そして、悔しいけれど選手に現実を受け入れてもらった。その結果、レースは最初から最後まで11位前後をキープ。最後アンカーで逆転して11位に滑り込むことに成功した。

2007年名古屋国際女子マラソン優勝橋本康子選手のレース展開

森岡さんが2007年名古屋国際女子マラソンで優勝した橋本康子さんを指導していたときの話。レース終盤で2006年覇者の資生堂の弘山晴美さんとデッドヒートとなったが、ゴールまで残り1Kmを過ぎた後に、橋本さん自らのラストスパートで弘山さんを引き離して、念願の国内マラソン大会初優勝と、大阪世界陸上の出場権を獲得した。

このときも自力で上回る弘山さんに勝つ為にポイントに上げたのは40k地点の給水ポイントと41k地点の左カーブの曲がり方。そして、ラスト0.7km地点の山崎川を渡るアップダウンで上り坂の後の下りでペースを落とさないこと。この3つであった。

橋本さんが40k地点までで目一杯になって弘山さんに少し差をかりにつけられても、給水、左カーブのふたつのポイントで差は戻せる。そして、0.7k地点で勝負を仕掛けることで勝機を見出す。

そんな作戦を立て準備をしてきたことを橋本さんは本番のレースで全て完璧に実行し勝ち切ることができたレースだったという。

まとめ

オンリンピックという大舞台。選手も指導者もメディアやファンもワンチャンあるんじゃないかと期待値で目標設定をしがち。でも、陸上競技は大番狂わせがなかなか起こらないスポーツ。高岡さんの入賞のように現状値をしっかり把握して作戦を立てること。その為には監督は選手を、選手は監督を信頼し合える関係も必要。時に監督は選手に思い描いた目標とは異なる厳しい現実を突きつけなければいけない。監督が一方的に押し付けるでもなく、選手は無自覚に受け入れるのでもなく、選手はその事実を理解し受け入れお互いの認識を合わせる。そして、そこから勝つための作戦を練りレース本番で作戦を忠実に実行する。そこで生まれたわずかな勝機を掴めるかどうか。それが陸上競技における奇跡の起こし方のようです。

(写真:マラソン博士)

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