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2020年振り返り:日本最大級の医療メディア「メディカルノート」として、コロナ禍の医療情報発信を振り返る

元号が変わったのはつい最近の事だと思っていましたが、あっという間に令和3年、あけましておめでとうございます。
新年の到来を手放しでお祝いするには、新型コロナウイルスの第三波に関する暗いニュースが続いており、まだまだしんどい状況です。とはいえ、せっかくの新年という機会なので何か始めようと思い立ち、ベタにnoteの執筆をはじめる事にしました。
最初のテーマとして、私がCPOとしてコンテンツ及びプロダクト開発において執行責任を預かる「メディカルノート」という医療メディアが、このコロナ禍でどのように医療情報の発信をしてきたのか、あるいはその際に感じた課題等を振り返っていこうと思います。

振り返りを書こうと思った理由

振り返ろうと思ったのは、このコロナ禍という百年レベルの世界的震災のさなかにあって、私が「医療」のメディアでコンテンツ責任者を務めているという機会の稀少性に改めて責任を感じたからです。

日本人にとっては、3.11の東日本大震災もコロナ禍とはまた比較し得ない悲劇的な出来事でした。後日、我々はこの震災に関する様々な記事や書籍を読む機会を得られましたが、その際に、これらを残してくれた人たちの努力を軽んじてはならないと感じたのです。こういった時に、少なからず"当事者"や"目撃者"であった人間が、多少のコストを払ってでも証跡を残したから、人類が歴史の歩みを止めずに今日まで改善を続けてこられているというのは本当に尊い事実だと思います。
少々、大袈裟な言いぶりになりましたが、日本における新型コロナウイルス感染症の様々な事象や政府/医療機関の対応については、下記の書籍に非常にリアルにまとめられています。まさに日本史・人類史にこのコロナ禍を残す為の取り組みと言える濃厚な一冊です。

臨床の最前線で闘っている医療従事者の皆さまと比較し、私が当事者の一端を名乗るのは非常に厚かましい事だと感じます。しかし、あくまで医療メディアの責任者としてどのように新型コロナウイルスに関する情報発信に向き合ったのか、という事を記録として残せておけたらと思います。

医療メディア「メディカルノート」とは?

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私がコンテンツ責任者を務める「メディカルノート」は、2014年に現役の医師が創業した医療情報のプラットフォームです。最前線で活躍する医師や専門家が保有する症例や治療例などのエクスペリエンスや、公開されている研究成果等のエビデンスに基づき、一般読者でもわかりやすい平易な表現で医療情報を発信する事を心がけています。

ご存知の方はご存知かと思いますが、多くのYMYL領域(人生や健康、お金に関わる領域)のメディアが昨今のSEOアルゴリズムアップデートのトラフィック影響を受けやすく、ひいては事業への影響を受けている状況です。
しかしメディカルノートは2018年よりヤフー様との事業提携により検索連動をさせて頂いている為、常に安定してヤフー検索の利用ユーザー様に医療情報を届けられるという強みと責任があり、平均して月間1000万人以上の読者様に医療情報を参照頂くことができています。

また、最近ではがんなどの難病・希少疾患・心疾患についての情報発信にも注力しており、治療先が見つからないユーザーやコロナの影響でなかなか医療機関を受診しにくいユーザーに対して、オンラインでの診療や事前予約などによって初診のハードルを下げられるよう、医療機関向けの管理ツール等のソリューションも提供しはじめています。

事業としては、いわゆるメディア事業・マーケティング事業を基本として縦に横にと事業展開を続けている状況ですが、いずれの事業も医療機関・医師とのつながりがベースにあり、メディカルノートが発信する医療情報への信頼を得られているという事が非常に重要であるという事がわかるかと思います。

メディカルノートの2020年の新型コロナウイルス感染症に関する記事は106記事/総計2000万近くの閲覧数

2020年1月から12月にかけて、メディカルノートでは106本の新型コロナウイルスに関連する記事を公開しました。
もちろん、1年間ずっと検索量が安定的に多かったわけではなく、感染フェーズに合わせて上下を繰り返していた為、メディカルノートとしての記事公開の頻度もそれらに連動して増減しています。
また、新着の記事公開のみならず、流入の多い記事は新しいエビデンスが出る度に記事の更新をする必要もあった為、実際には記事の公開以上のリソースを割いていました。

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106本、という数字が多いのか少ないのかは人によって印象は異なるかと思いますが、メディカルノートとしては一つの疾患についてこれほど多くの記事を公開するのは異例のことで、その工程も決して容易なものではありませんでした。
ここからは、順を追って新型コロナウイルスについての発信の実績を振り返っていきたいと思います。

【感染拡大前】2020年1月、初めての新型コロナウイルス感染症に関する情報発信

新型コロナウイルス感染症は2019年12月に武漢で発生が確認され、2020年1月に入った頃には日本でも徐々に報道されはじめましたが、まだまだ日本では文字とおり対岸の火事でした。その後、2月になってダイヤモンド・プリンセス号の報道が加熱した事でようやく日本でも話題になりましたが、この時もまだ一船に閉じた他人事として受け止めていた方が多かったように思います。

メディカルノートには2000以上の疾患の基礎情報を掲載する医療辞典がありますが、その疾患に新しく「新型コロナウイルス感染症」を加えるべきかを議論しはじめたのは1月中旬頃でした。この頃は、まだ厚生労働省では「新型コロナウイルス関連肺炎」という名称が使われており、世界的にこの新しいコロナウイルスを何と呼ぶか、という病名すら固まっていないような状況でした。
そもそもインフルエンザや肺炎といった「病名」のデータベースはそうそう追加や変更があるものではなく、新型コロナウイルスの前は2012年のMERSの時が最後。メディカルノートの創業以来、その時点で新しい疾患が生まれる事自体が初めての事で、当然そういったケースの基礎情報作成のフローなども存在しませんでした。

論点となったのは、「まだ基礎情報をまとめるにはこの疾患についてのエビデンスが足りていない」という事でした。メディカルノートはニュースメディアでは無い為、速報性よりも信頼性を重んじた制作・編集をしています。これには医療記事の執筆にあたってどのようなエビデンス情報を拠り所とするかが非常に重要な為、エビデンスの水準を定めるホワイトリストが存在するのですが、その条件を満たすだけの公的な情報・論文がまだまだ不足していました。海外(中国)のメディアのニュース内容をエビデンスとして採用すべきかどうかというのを個別に検討したのも、初めての事です。
「本当に書けるのか?」「まだ早いんじゃないか?」といった事を繰り返し議論し、それでも「これだけ情報が少ないからこそ、医療メディアとして新型コロナウイルスに関する情報発信を出来ない状態に甘んじてはいけない」という認識で一致し、記事制作に乗り出すことに。
そこで、過去も何度か取材をさせて頂いていた防衛医大の加來先生であれば、新型コロナウイルスに関する最新情報が集まっているのではないかということでご連絡をさせて頂いたところ、公開可能な資料のご提供とご監修を快諾頂くことができました。

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資料をご提供頂いてから、すぐさま記事を執筆し始めました。お忙しい加來先生のご移動中の時間を縫って何度も電話やメールでご指摘を賜り、すべての制作フローにおいて最優先で編集・エビデンスチェック・校正校閲を進め、1月29日にはなんとか記事公開に結びつける事ができました。通常の記事の3分の1以下のスピード公開でした。
その後は、ダイアモンドプリンセス号の話題であれよあれよという間に検索流入が伸びました。1月末という早い段階で記事を公開できた事でSEO評価も高く、ヤフー社との検索連動システムからの流入もあり、2〜3月頃はサイト全体の10%近くのトラフィックを新型コロナの基礎情報が占めていました。逆にいうと、新型コロナウイルスの話題がピークの時でさえ、その他9割はそれ以外の疾患に関するトラフィックだったともいえます。それほど医療の検索領域はロングテールが強く、新型コロナウイルスがどれほど流行しようと、それ以外の疾患にも課題が起こっている事を忘れてはいけないと思っています。
また、そのひとつの記事への流入量の多さは同時に情報更新へのプレッシャーにもなり、その後幾度も情報をアップデートする必要に迫られる事にもなります。最も情報のアップデートが多かった1月から4月にかけては、この記事だけでおよそ10回(平均月2回以上)の更新が行われていました。

【感染拡大第一波まで】日本を代表する医療界の先生方のインタビュー記事を公開

その後も、メディカルノートの編集部ではさらに制作体制を強化。取材も医療機関への訪問からオンラインインタビューに切り替え、30本前後の記事を矢継早に公開していきました。
公開情報などのエビデンスが充分ではない中でこれらが可能だったのは、日本医師会・東京都医師会の理事会の先生方や、各学会の理事長を務めていらっしゃる錚々たる先生方の取材のご協力があったからです。

メディカルノートは、一般読者に信頼できる医療情報を届けるにあたってのその品質の高さを伝えるために、その取材先・ご監修の先生が誰で、どのような領域の専門家なのかといった情報を明らかにする事を、強く重視しています。
しかし、これは同時に医師の先生方に我々と共に記事の信頼性について一緒に責任を背負わせてしまっているという事でもあります。すべての医療情報に言える事ですが、扱う言葉ひとつひとつ、誤解を生じさせる表現になっていないか、エビデンスに基づかない要素はないか、慎重に精査しなければいけません。
特に、この新型コロナウイルス感染症という疾患は、その疾患そのものの被害と同じかそれ以上に、インフォデミックによる誤解や構造的分断が恐ろしく、大きな影響を産んでしまっています。このような状況で、医師の先生方がテレビやインターネット記事にお顔やお名前を出して情報発信をする事自体、リスクが生じる事であり、この情報発信にご協力頂けるのはもうただただ公衆の便益の為でしかありません。

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(日本医師会常任理事の釜萢先生も、この期間に度々マスコミに出演されていらっしゃいましたが、お忙しい中で何度もメディカルノートのインタビュー記事にご協力頂きました ※内容は4月時点のものです)

稀に、「第一波の頃と発言が変わっている」などと医師を責める論調を見かけますが、次々と新しい症例が出てくる状況下では当たり前のことで、何一つ間違わない為には沈黙しているしかありません。そこにおいて、お忙しい中で昼夜時間を削ってその時点で得られる最大限の論文情報などのエビデンスを収集・咀嚼し、一般市民向けにオピニオンを提言してくださる先生方の血の滲むような努力と立ち居振る舞いは、私達には本当に推し量れないものがあります。
改めて、取材への度重なるご協力に、感謝の言葉もありません。

【感染拡大第一波期】大ヒット記事となった新型コロナウイルス感染症の「症状」の記事

新型コロナウイルスに限らず、疾患情報に関する検索ニーズは非常にシンプルで、基本的なテーマは概ね共通しています。そのひとつが「症状」に関するニーズ。
感染拡大前までは、どんな疾患なのかという前提知識・概要を知りたいニーズが強かったのに対し、4月以降は明らかに概要より具体の症状にニーズが移行しました。
これは、この時期にちょっとした風邪や花粉症の症状が出た際に、「もしかしてこれは新型コロナウイルスでは?」という疑いを持つレベルで、市中での感染が拡がり始めていた(あるいはそう感じさせる報道が増えてきた)事の証左でした。

症状に関する記事の中で最も検索流入を集めていたのは、2月頃に公開し、4月頃に内容を更新した事で劇的にランクが上昇した下記の記事です。

新型コロナウイルス感染症については独自の検索アルゴリズムが適応されており、その他の疾患記事以上に権威性と更新性が求められていました。その中で、「新型コロナ 症状」「新型コロナ 初期症状」「新型コロナ 喉の痛み」などの大きな検索キーワードにおいて、厚生労働省や国立感染症センターに次いで3位〜5位のランクを維持し、デイリーで最高100万PV近く閲覧頂けていたのは、ユーザーが知りたい具体の症状を易しくお伝えできたからだと考えています。
また、「症状」をテーマにした記事は新たな症例が増える度に情報のアップデートが必要で、公開から現在に至るまで何度も更新されています。聴覚味覚障害についても、今では新型コロナウイルスの症状としては基礎的な知識となりましたが、当時情報が出始めた頃は、まだまだ眉唾情報だと思われていた時期もあった事をよく覚えています。
この記事を経由して、およそ1000件の医療相談がメディカルノートに寄せられましたが、多くが自身の具体的な症状に関する内容です。このコロナ禍においては、何かしらの症状が出る度にコロナを疑わなければいけない、気軽に受診もできない、という異常な状況であった事がよくわかります。

【感染拡大第一波期】高リスク患者向けの情報発信への注力

一通りの基本的なテーマを制作した後、私達は次にどのようなテーマで記事を制作するか、という課題にぶつかりました。感染拡大第一波の渦中でまだまだ検索ニーズは高まる一方だったにも関わらず、ターゲットとする検索クエリを非常に策定しづらい状況だったからです。
理由の1つは、Googleが新型コロナウイルスに関する一部のキーワードをキーワードプランナーでのimp取得不可にしていると思われる事、もう1つはインフォデミックによって撹乱されたユーザーの検索ニーズと医療情報として明示的に伝えられる情報との間に差がありすぎて、ひとつの記事として成立させるのが難しかった事です。(ex.「コロナ ボディソープ」や「コロナ 酸素水」など)

この時は、まずはインフルエンザやノロウイルスなど、その他の感染症の関連キーワードを調べ、その関連キーワードを新型コロナウイルスに置換し、違和感がないものは作成にすすめる、といった手法を取りました。この時に作成した「コロナ 潜伏期間」「コロナ こども」といったテーマの記事は、やはり早期にヒットし、多くの一般ユーザーに価値提供ができました。

しかしその方法でも早々に扱えるテーマは尽きてしまい、通常通りの検索キーワードターゲットでの制作方法は難しいと判断。一時的には新型コロナウイルスに関するニッチな検索キーワードについては追うのを諦め、当時から不安を抱えていた、高リスク層向けの情報発信に注力する事を決めました。

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特に報道で多く扱われていたのは高齢者や妊娠中の方、喫煙者でしたが、その他「基礎疾患を持つ人」という属性については包括的な表現でしか説明されない事が多く、「どの疾患にリスクがあるのか?」「どんなリスクがあるのか?」という事は不明瞭でした。
検索量は少なくても確実にユーザーにニーズはある事、またその時点では患者様以上にそういった患者様に向き合っている医師の先生方からの情報発信ニーズが高く、医療崩壊においての貢献度合いが高いと思われました。COPDや喘息、糖尿病、腎臓病、がんを治療中の方など、高リスクと言われる基礎疾患を洗い出し、取材を打診し、制作を進めました。

【感染拡大第一波期】新型コロナウイルス感染症ポータルの立ち上げ

まさに緊急事態宣言中、これまで制作してきた記事をまとめて網羅的に掲載するポータルが必要という認識が社内で一致し、企画から公開まで2週間突貫でポータルを立ち上げました。

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まだまだ厚生労働省による発表も連日変化があるような状況で、ユーザーに向けて何を優先して届けるべきかというのは非常に難しいテーマで、ワイヤーフレームも何度も書き直しました。多くの社員が自宅保育をしながらなんとか踏ん張って働いている中、担当エンジニアと共にこどもが寝静まった夜に手を動かさざるを得なかった瞬間もありました。

このポータルを立ち上げた事で、各学会から「一般ユーザー向け」「医療従事者向け」にそれぞれ情報発信をしてほしいとご依頼を受ける機会も増えました。

また、当時各医療機関からその不足が叫ばれていた医療用防護具についても呼びかけを行い、多くの企業様や一般ユーザー様からご提供についてお声がけ頂きました。

こういった状況下での突貫のプロジェクトというのはどうしても採算性を可視化するのが難しく、今思い返すと色々と反省はあるのですが、総論としては間違いなくやってよかったなと思っています。3.11の震災が起こった際に主要なコミュニケーションツールだったmixiでもそうだったという話を聞いた事がありますが、有事の際こそ、社員ひとりひとりが「何かできることはないか?」と考える時、自社のビジョンを強烈に意識します。
医療業界という、公共性や福祉の意識が無くしては携われない業界にあって、ユーザーに情報を届ける手段ももっていて、「自分たちって何かやったっけ?」という状況にはしたくありませんでした。社内外に説明しやすい形で、コロナ禍に確かに「医師と患者をつなぐ」為の価値をアウトプットできたという事は、リモート環境下における組織のつながりを緩めないためにも、非常に重要な瞬間だったなと思います。

【感染拡大第一波期】海外の事例紹介

第一波の頃は、日本以上に欧米での感染者数の拡大スピードが早く、連日報道を賑わせていました。そんな中で、JAMSNET(海外居住経験を持つ医療・保健などのエキスパートが、国境をまたいで活躍する人々を支援する団体)と連携させて頂き、現在海外で勤務中のJAMSNET会員の医師が、医療者の目線から各国の状況を現地から報告するリポートリレー企画なども行っていました。
日本より先行して感染拡大やロックダウンを経験していたフランスでどのような課題が起こり、どのように政府が対策したのかといった事例や、「大きな政府」として有名なシンガポールがどのようにデジタル施策に先行投資をしていたのかなど、今読んでも参考になる情報ばかりです。

【感染拡大第一波終息後】ダイアモンドプリンセス号で現場責任者として陣頭指揮を取られた竹内先生への取材

第一波の感染拡大が一度落ち着いた頃、まさに冒頭で述べた「証跡を残す」取り組みにも乗り出しました。

まだ新型コロナウイルスの症例が少なく、治療法も確率されていなかった頃の船上での集団感染には、世界中から注目が集まりました。この時に陣頭に立って医療チームを率いていた横浜市立大学附属市民総合医療センター高度救命救急センター長の竹内一郎さん先生への取材は、本当に貴重な機会でした。
「医療者は決死隊じゃない」という竹内先生の印象的な一言は、ダイアモンドプリンセス号の後、第二波第三波へと状況が悪化する中、改めて医療現場が疲弊しきっている今だからこそ、重く響き渡ります。

先日、メディカルノート代表の井上が審査委員の一人を務める医療マンガ大賞においても、こちらの記事における「医療現場」をテーマにしたエピソードが入賞しました。いずれも心に響く本当に素晴らしいストーリーでした。

【感染拡大第一波終息後】グーグル社・メドレー社とのQuestionHubプロジェクトの取り組み

これらの様々な取り組みをご評価頂いたのもあり、グーグル社より、QuestionHubプロジェクトへの参画をお誘い頂きました。QuestionHubというのは、キーワードプランナーにはあがらないボリュームで、かつまだ検索結果に「回答」が存在しない検索ワードを調べるツールです。(日本ではまだメディカルノートを含めた数社にのみ限定公開しているようです。)
プロジェクトの詳細については下記をご覧ください。

【感染拡大第二波以降】QuestionHubの活用と、夏以降の検索傾向

QuestionHubを初めて見た時には、その混沌としたキーワードリストに面食らいました。しかし、やはりキーワードを眺めていると、新型コロナに関する検索ユーザーのニーズの移り変わりというのは非常に興味深いものがありました。

第一波が落ち着きはじめた時期には、世間が「新たな生活様式」を手に入れようとしていました。より具体的な感染予防や備えの為、消毒方法や消毒液の種類、解熱剤リスクについての検索ニーズが高まりました。

第一波が落ち着き、「そろそろ外出してもいいのでは?」という世論が主流になった頃、「感染しない(しにくい)場所」についての検索が増えました。「カラオケ」「ジム」などは元より、「焼き肉屋」「脱毛エステ」「ヨガスタジオ」など非常に具体的な行き先についての検索ワードも多かったのが印象的です。

その後、第二波から第三波にかけては感染者数は落ち着いたものの、実際の感染症例の報道が増えていきました。検索ニーズはさらに具体に寄り、特定の土地や施設の感染状況を調べる傾向が長く続きました。
そうして今強烈な第三波を迎え、最も検索キーワードが増えているのは検査関連のキーワードです。これは、自由診療扱いでの格安の抗原検査が普及した事や、年末年始の帰省ニーズによって増えたといった事が理由だと思われます。

新型コロナウイルスはあまりにも私達の生活を大きく変えてしまった為、生活に即する検索キーワードが多いのが特徴的だなと感じています。これらのニーズに医療記事として広く回答を用意するのは非常に難易度が高い事ですが、引き続きQuestionHubを活用する事で検索ニーズを踏まえ、適切な情報提供を続けていければと思っています。

【感染拡大第三波以降】今後、伝えていかなければいけない今の医療現場のこと

最後に、今後心がけなければいけないと思っているのは、私達メディカルノートは医療現場の代弁者として、ユーザーが読みたいものではなくユーザーに届けるべき医療情報を提供する立場でありたいという事です。
検索キーワードをターゲットとした記事制作というのは、どうしてもユーザー認知の後手に回ってしまいますし、必ずしも本質的ではない検索ニーズが多い中での選り分けも必要です。だからこそ、医療メディアとしてはユーザーニーズに寄り添うだけでなく、メディカルノートとして率先して伝えていかなければいけない事が何かを定義する事の必要性を実感しています。

「受診控え」「検診控え」によるリスク

そういった中、まだまだ世の中の危機意識が足りないように見える事のひとつが、「受診控え」「検診控え」によるリスクです。
例えば、日本が誇るがん検診の実施率が2020年は30%程度減少すると見込まれており、この結果として、がんの確定診断を受けた患者数も減少傾向にあります。当然患者自体が突然減少するわけはないので、早期検知の機会を奪われた結果です。近い将来進行がんが大量に増えた時、日本の医療機関はその状況に耐えられるでしょうか。今叫ばれている「医療崩壊」とは今この瞬間の問題ではなく、もっとずっと根深く、長期に渡る問題である可能性が高いのです。

また、心疾患など、治療の遅れが致命傷になりうる領域でも、新型コロナウイルスへの感染を恐れて治療を中断してしまい、深刻な事態を招いてしまったケースが増えてきたと言われています。

新型コロナウイルス感染症は非常に恐ろしい疾患ではありますが、それによりその他の恐ろしい疾患が消えたわけではありません。今現在も持病を抱えていらっしゃるユーザー様に向けても、メディカルノートとしては幅広い疾患情報の提供と、適切な受診勧奨を続けていきたいと考えています。

最後に

大変長くなりましたが、改めてこうして一年を振り返ると、医療メディアとしてのメディカルノートはもちろんですが、日本全体・世界全体があまりに長くこの問題に向き合い続けている事を実感します。いずれの事業・職業でもこの影響を受けていないという人はごくわずかで、多くの人が新型コロナウイルスによって事業や生活を見直さざるを得ない中、この1年でどういう変化があったのかというのを改めて振り返るのは非常に有意義な事だと思います。

私がこの1年で最も感じたのは「"言葉"の強さ」でした。コミュニケーションは対面からオンライン会議になり、それ以上にチャットやメールに移行しました。ニュースを見る時間より、TwitterやFacebookを見る時間の方が長かった人も多いのではないでしょうか。

そういった中で、やはり文字として形に残るメディアはその影響力が段違いで、また誤解を産む頻度も高かったように思います。新型コロナウイルス感染症についての情報発信もまさにそこが最も重要なポイントで、「どう表現すれば誤解されないか」ではなく、「誤解されるリスクがある前提でどう書くか」という目線での編集をしていました。1000万以上の読者すべてのリテラシーを推し量る事はできない中で、伝えられる最大限の情報は何か、誤解された場合に起こるリスクはないか、常に考える必要があります。

そしてそれは医療メディアに限らず、すべてのテキストコミュニケーションに言える事だと感じています。言葉は強いからこそ、より正確に、より客観的に伝える必要性を実感しましたし、「伝わらない」前提でのコミュニケーションを考える必要もありました。その上で、2021年はさらに受け取る側が気持ちよく正確に情報を受け止められるよう、正しく美しい言葉を使っていきたいなと感じています。

信頼性の高い医療情報により、正しく新型コロナウイルス感染症を受け止め、それぞれが最善の手段を取れますように。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。

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