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『三伏』(2018)

はじめに

『三伏』は初めて池田君が関わらないゆうめいで行った公演でした。

2018年8月、上井草のエリア543という劇場でフェスタ543という会場費無料で公演が行える企画に参加しました。池田君はその時期別の仕事が入っており僕と小松ちゃんはスケジュールがら空き。
「リスク少なく公演できるんだからとにかくやってみよう」
「でも俺ら二人だけでゆうめいの名前使って公演やるのはなんか怖いよね」
みたいな流れから“ゆうめい発表会”と銘を打ち、番外公演感を全面に出してハードルを下げたところから企画はスタート。

始めは二人芝居の『俺』を再演するはずだったのですが、小松ちゃんと二人で集まって話していくうちに段々と自分でも台本を書いてみたくなり、少しずつ自分のことを台本にしていきました。稽古場で小松ちゃんに感想や修正案をもらいながら漠然と書き進めていき、公演本番2週間前に祖母の一回忌で佐賀に行った際に痛い目にあったので「最終的にここに持っていこう」と方向性が決まりました。

台本を書くのにも慣れていないし、そもそも二人芝居をどうやって作っていけばいいかわからなかったので旗揚げ公演で池田君が書いた二人芝居『俺』を何度も読んで参考にしました。参考というよりそのままパクったと言っていいくらいに構成は『俺』そのものになっています。構成の他に、『俺』は主人公の小林がどのシーンでも常に追い込まれて傷ついているのですが、『三伏』でもその部分をかなり意識しました。(マネしました。)

技術はなくてもとにかく見ている人が飽きないようにと、『俺』のフォーマットに自分の傷ついたエピソードを乗っけていきました。舞台上でちゃんと傷つく、というのはミエユースに参加してハイバイの岩井さんに言ってもらって以来意識していることだと思います。大量の矢が刺さってて、でも立っている、その人を鑑賞する、みたいなことを教わりました。

冒頭で「池田君が関わらないゆうめいで行った公演」と書きましたが『俺』をめちゃくちゃに参考にした(マネした)時点で池田エッセンスはもりもり。その他にも池田君に音響素材や映像素材も作ってもらったし。それでも小松っちゃんと二人で演出を付け合って照明を決めて、制作の健さん(黒澤さん)に音響と照明のオペをしてもらってと、各々がそれまでの公演とは違うポジションで作ることがその時の自分にとって楽しいことでした。

以下『三伏』の台本ですが、かなり言葉で説明してしまっているので読み物としては読みやすい方だと思います。購入して読んでくださった方、どこかで感想をいただけたら嬉しいです。

※『三伏』を上演した際には登場人物を実名で出していました。お客さんも少人数だったので「ここだけの話」として実名のまま上演していました。許可取りは中途半端のままでした。ごめんなさい。今回は登場人物の名前を一部変更して発表しています。

田中祐希

『三伏』上演台本&写真

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作・小松大二郎 田中祐希
【出演者は小松大二郎と田中祐希の二人芝居】

***〇場

舞台上中央に四人掛けのテーブルと椅子四脚。舞台奥の両端には黒カーテンが吊るされており、出はけや小道具を置くスペースとして使う。舞台上手にipadとそれを立たせるスタンドを置く。客入れ中と〇場は、AI『みんながみんな英雄』とOasis『Don`t Look Back In Anger』の二曲が繰り返し流れている。2018年8月。

小松、田中があいさつしながら出てくる。

小松  こんにちは。本日はゆうめい発表会vol.1『三伏』へお越しいただきまして、誠にありがとうございます。えーこの公演はですね僕と、こちらにいる田中くんと二人でですね、普段身近にいる劇団のメンバーとか友達とかには言えないようなことをこの場をお借りして発表し合おうという秘密の会でございます。自分だけで抱えてる言いにくいことって普段行かない場所とか会わない人への方が言いやすいそうです。そういった秘密を発表していきます。でも誰にも言えないような秘密は話しません。「王様の耳はロバの耳!」みたいな本当の秘密は、絵本に出てくるあのおっきな穴みたいなところに叫ぶか、おっきな穴が見つからない場合はツイッターの裏アカウントにぶちまけます。とか言いながら僕ツイッター苦手なんですけど。何なんですかねあれ。本当につぶやいてるのはいいんですよ。本当につぶやいてるのはいいんですけど、色々考えて世間体気にしてつぶやいてるなぁってツイート見ると世間体気にすんなよ、気にするぐらいなら心に留めとけよって思っちゃいます。今回の公演は言いたくないけど本当は言いたい、だからやっぱり言っちゃう、みたいなそういう僕が嫌いなツイッターみたいなやつです。ツイッターの裏アカウントみたいな公演です。僕たち顔さらしてますけど。それでは田中くん前説お願いします。
田中
  あ、はい。僕はツイッター嫌いじゃないんですけど。開演前の諸注意でございます。携帯電話は電源からお切りいただくか、音が出ないような、そのようなモードでお願いします。あと飲み物なんですけど、ワンドリンク付きなので上演中も自由にどんどん飲んでいただいて構いません。そもそもなぜワンドリンク付きかと言いますと、こちらの劇場がですね本当は劇場ではなくカフェとかバーのような経営の方式をとっているようでして、劇場さんからするとチケット代の料金は実は公演の料金ではなくてドリンクの料金で、公演はおまけみたいな振り分けになるようです。多分。もしかしたら全部僕の勘違いかもしれません。難しいことはわからないんですけど、おまけにならないよう頑張ります。上演時間は60分ほどを予定しております。それでは始めます。

小松、はける。

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***1場

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