人種差別と黒猫
わたしのところにアメリカから、はるばる来てくれた12歳の女の子とその両親
お父さんはアフリカ系で
お母さんは日本人
アメリカでの黒人差別をきっかけに日本に住居を移すことになったと両親が話してくれた
彼女が受けた痛み
仲のいい白人の友達とご飯を食べていると
『全てがモノクロで不味そうになるなぁ』と声が飛んできたり
『今日はお父さんは狩りに行ってるのか?夕食はアフリカの動物なんだろ?』
とか
一緒に遊んでいる友人に
『こいつと共にしておもしろいのか?』
など、きりがない差別を受けたのだという
彼女の心は崩壊し、声を出せなくなった
セラピーが必要だと両親は言う
娘の声を返してもらえるよう何度も天に頼んだのだと
うつむく彼女に声がかけられず
隣に呼んだ
彼女は、日本語が通じるので
両親には、外で待っていてもらえないかと話をし彼女と二人きりになった
彼女の背中を抱き締めて
溝内に手を当てた
『魔女コさんも、痛い、痛いトゲが刺さったことがあってね
うーーんと痛かった。でも未来の自分が教えてくれた、あなたはこの世界にとどまる人じゃないって。あなたにも同じように守ってくださる人がいる。魔女コさんもその一人になりたいと思っている、大丈夫かな?』
彼女は、こくんと頷いた
『あなたが生きる世界はそんな狭い世界じゃない。世界はこんなに広い、たくさんの人がいるからたくさんの考え方がある。だから今まで受けた人の考え方はあなたの世界じゃない。もっと大きな視点で見てほしい。わたしがいる世界もそんな奴らの世界より遥かにキレイで温かい世界だもの。ようこそ、温かな優しい世界へ』
と言ったら彼女は微笑んだ
それから彼女のこれからをおしゃべりした
彼女は、獣医になる
とっても立派な名医だ
それをお話すると目を丸くしてわたしを見つめた
こつんとわたしの肩に頭を寄せて
ぎゅーっとしてくれた
わたしもぎゅーっとした
多分彼女は声を取り戻せる
そんな気がした
両親を呼んで、ペットを家族に向かえることを進めた
2ヶ月後、お母さんの方からメッセージをもらったそこに添付されてたのは動画
見てみると彼女が黒猫とじゃれている映像だった
お母さんのメッセージには
アメリカでは黒猫はあまり好かないのだそうで
保護された猫達の中で、一目見て彼女はその子を選んだのだという
日本に住居をうつし、一緒に暮らしているようで動画には、その猫と声を出して笑う彼女が写っていた
あぁ良かった…本当に良かった
彼女が黒猫の名前を決めたんです
と、お母さんが教えてくれた
その黒猫の名前は
witch(ウィッチ)
魔女だった