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伊豆半島を堪能する歩き旅7泊8日〜5日目(2/2)〜

A氏のスルーハイクを見届けて、2人になったトレイルパーティー。
レンタサイクルにて恋人岬へ向かう。
この先、ドン底にある苦難が待ち受けるとも知らず…2人は恋人岬へと向かったのだった…。

〜レンタサイクル最高じゃないか〜

土肥温泉地でたまたま見かけたレンタサイクル。
僕は今回の旅でワープやスキップはなるだけしたくなかった。
歩いている内に頭に浮かぶ雑念のようなものを体験したかったからだ。
「なんでこんなことしてるんだろうか」
「腹減ったなぁ」
「身体が汗でベタベタする」

などなど…主に悪態つくことになるのだが、割と嫌いではない。

今回のレンタサイクルは…
《まぁ人力だからセーフセーフ》
と謎理論により楽しさを優先して即採用した。

だって楽しそうじゃん!!

ここでも地域の方と触れ合う機会があった。
貸出時間ギリギリにレンタル申し込みをしたのだが、
受付のお姉さんがやけに心配している。
「時間内に返却できそうですか?」
割と表情無く、淡々とやっているので、僕は
「仕事増えるの面倒なんだろうなぁ」とか失礼ながら思っていた。
と思いきや、受付が完了すると
「乗り捨ての恋人岬に電話して、少し遅くなるかもしれないですと伝えておきましたので。お気をつけて行ってくださいね。」
と。

ツンデレか?なんだ優しいじゃない。

お気遣いありがとうございます。
と感謝して自転車に乗り込んだ。

見てよこのドヤ顔
右手はずっと海である。

水平線を眺めながら、この長い長い下り坂を下っていく。
後ろに乗せる君はいない。
ゆっくりゆっくりというわけでもない。
なにせ爽快感がすごい。
YUZUの香りもびっくりなくらいの爽快感だ!

舗装路混じりのトレイルに乗り捨て可能なレンタサイクル。

最高じゃないか!!

マウンテンバイクだから、安定感が抜群。
4日間と少し歩き続けてきた今、このマウンテンバイクは
ロールス・ロイスにも匹敵する乗り心地である。
いや、ほんと、マジで。

ロールス・ロイス乗ったことないんですけど。

舗装路をスイスイっと進んでいく

ほぼ西伊豆歩道に従って、途中に多少の山域のところもあったがそこはスルーして自転車で進む。
自分達で決めたトレイルだからいいのだ。

Make Your Own Tripだ。

徒歩から、自転車に乗り換えると
文明の素晴らしさを感じる。
タイヤ開発した人すげぇな。
これまでの4倍速くらいのスピードで景色が通り過ぎていく。

僕は《移動速度の違い》による旅の感じ方について考える。
これまでの経験から、速い旅はどうしてもスポット的に楽しむことに傾倒しがちであった。
だから僕は、歩いて旅することが今とても好きだ。
移動速度が遅いと、移動自体が思い出になって、その土地を旅した記憶が濃くなるような気がして。

この自転車区間は、歩いて旅している中のスポット的なアトラクションの一部として楽しめたような気がする。

西伊豆歩道上にある滝も

スイスイっと進んでいくと下り坂に入った。
快速快適。
と、途中T氏が嫌な予感を閃く。
「これ海側に降りてますけど、次は恋人岬。岬ってことは…登り返しあるんじゃないかなぁ…」
と呟く。

……
………
だよなぁ…。

とハッと気づく。
しかし進んでしまったものは仕方がない。

嫌な予感は的中した。
車が通れないくらいの幅と、かなりキツい斜度の道が現れた。
迂回路はない。
しかし、戻るにも戻ったらこれまで下ってきた道を戻るしかない。
僕たちは進むことにした。
海抜3mほどのドン底からの登り。

後戻りはできない。
二人は心の中でカチリと決意を固めて登り始めた。

自転車が重い…。とてつもなく重い。
漕いで登れるような斜度ではなかったので自転車を降りて押して進む。
30秒ほど登っては息を整え
また登る。
それを30回ほど繰り返しただろうか。
この旅中全日程を通して、本当にここが一番辛かった。

ひたすら登り続けていくと、車が通る音がする。
もうすぐだ。
二人の背中は汗でびしょびしょだった。

〜恋人岬は恋人と来よう〜

やっとの思いで到着した恋人岬…。
なにか冷たいものを口に入れたい。
自転車を返却した。
どうにか迷惑をかけずに返却することができた。
自転車のレンタル費用は500円。デポジット金で土肥温泉地で1000円をプラスして支払い、恋人岬で返却時に1000円が返ってくる仕組みだ。
500円のアトラクション。満足感がとても高い。
舗装路あり街あり海あり坂あり。最後の坂は辛かったけど。

冷たいものを口にしたいが…
恋人岬…
恋人同士が多すぎる!!!
僕たちはぎゅっと各々自分の拳を握りしめて心の中で泣いた。
居た堪れなくなり、次へと進む。
…次は彼女と一緒に来たいものだ。
いないんですけど。

そろそろ宿泊地も決めたいので、
宇久須キャンプ場に向かってみる。
この辺の海岸はフリーでキャンプするのは厳しそうだ。
それと、少しゆっくりしたい。
そう思い、泊まれるならばキャンプ場を利用しようと考えていた。

舗装路を歩いていく。
歩道がない。
この辺は車通りが多く、バスでスキップしたほうがよかったのかもしれない。

山の合間をぬって作られた舗装路だ。
ひたすらに歩いていくと、舗装路脇に砂利を溜めているところがあった。

なにかに気づきよく見ると、鹿が立っていた。

鹿もこちらの存在に気付いたのか
ジッとこちらを見ている。
ニンゲン、なぜそこにいる?
そんなふうに見られている気分だった。

〜宇久須キャンプ場の夕陽〜

無事宇久須キャンプ場に到着し、受付へと向かう。
数区画は空いているようだった。
受付の方が配慮してくれて、奥側の隣に誰も入っていない区画を用意してくれた。ありがたい。

戸田から歩いてきたんですよー
と話すと、「えぇ!?お疲れ様でした」とリアクションしてくれる。
少しコミュニケーションが生まれるこの瞬間が好きだったりする。
キャンプ場の管理人さんから「ここは夕陽が綺麗なんで是非見て行ってください!もうすぐ見どころの時間ですよ」と教えてくれた。

ちゃちゃっと設営を終わらせて見に行こう。


キャンプ場からすぐ浜辺に降りられる。
すごくいいロケーション。
場内には温水シャワーもあり、コンビニまで徒歩15分ほど。
向かいには日帰り温泉が楽しめる高級ホテルもある。

すごくいいロケーションに心が震えていく。
たくさんの人が夕陽を見に来ている。
これは綺麗だ…。

今回の旅のハイライトの一つ。間違いなく。
沈んでいく太陽をぼーっと眺めながら、タバコを吸った。

《思えば遠くへ来たもんだ》

そんな気分でいたと思う。
これを旅情と呼ぶのかはわからないが、この染み入る感覚が好きでロングトレイルが好きなのかもしれない。

旅、あるいは、冒険。

それを構成するものは未知との遭遇だろうか。

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酒でも買いに行こうか…という気分にはならず、適当に夕飯を済ませて、キャンプ場内にある自販機のジュースで乾杯をした。

辺りからは美味しそうな肉の匂いがする。

自販機に向かうと、グッドセレクトな音楽を静かにかけながら楽しんでいる家族もいる。
僕たちはそんな中、人1人分ほどしか覆えないタープの中で寝る。
借りた区画にはもう1張り張れてしまえそうだ。

トレイル中にオートキャンプ場を借りると、いつもこんな体験になる。

明日もまた歩くんだなぁ

楽しみにしながら寝床に着いた。

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