夏の信越トレイル2021〜Day3(1)
〜出発〜
今日は30km歩く行程だ。
そのため出発は5時。
朝早く起きて、もう一度水を取りに管理棟近くへ行く。
そうすると、昨日のおっちゃんが出てきた。
「5時ごろ出るって聞いてたから、起きて待ってたんだよ!見送らないとと思ってさ」
なんと……まぁまぁ…
ほんと嬉しいよ
ウルッときちゃうぜ
そして話し始める。
話好きなおっちゃんだ。
北島三郎より早く
日本でロレックスを買ったんだ!
と自慢していた。
「若い頃からな、いいもん持ってたんだよ!でも今はぜーーんぶ使わないけどな!」
おっちゃんが改装した家はセンスがよかった。
いいものに触れてたからなのかも、と思いながら、話を切り上げて出発だ。
また会いにくるよ!と言って、キャンプ場を出た。
〜長い道のり〜
歩き始めてしばらくは歩きやすい道が続いた。
あぁ、これなら30kmいけそうだ。
どうかずっとこのままの道で…
朝一のまだ涼しい気温の中、平坦で開けた道を歩いていた。
しかしそう長くは続かなかった。
あれ?
おやおや?
これは…東海自然歩道みたくなってきたぞ……
人1人分ほどの痩せ尾根を歩く。
草木が生い茂り、横断する枝が多い。
上部には草木がなく、まだ8時前だというのにギラギラした太陽が垣間見える。
あーくそぉ……
ようやく抜けたところで、一時休憩をする。
山と道5ポケットショーツを爽やかに履きこなした男性ハイカーとすれ違う。
少し情報交換。
お兄さんは桂池テントサイトから光ヶ原高原キャンプ場へ向かっているところだった。
「この先ももう少し、テクニカルなルートが続きますよ…」
その言葉に心底がっくしきながら、歩きを再開した。
〜ようやく抜けた〜
歩き続けていると、ハイカー数のカウンターが設置されていた。
昨日までの道で置いてあったカウンターより遥かに数字が大きい。
歩きやすい道となるのか…?と期待して歩みを進めた。
3人の会話はずっと変わらず他愛もない話を続ける。
もうしばらく歩くと、先程すれ違ったお兄さんに聞いていた通り、スキー場に出た。
あぁ、これは上りだったらキツイなぁ…
「ほんと南下ルートで正解でしたね!!」
うんうん、と3人で会話をしていた。
この辺りから、足が湿り土踏まずは水膨れ寸前となっていた。
下り終えると、とても開けた気持ちのいい場所へと出た。
廃墟的な雰囲気もある。
別世界に来たかのようだった。
ジブリ作品の中で見たような。
スキー場のリフトの辺りで小休憩をする。
そろそろ皆、肩が痛くなってきたのかこの辺りからパックを下ろす休憩が増えた。
雪のないスキー場は滅多に来れない。
伸びている草に牧歌的な雰囲気を感じながら、
リフトの影の下、吹き抜ける風に心地よさを感じていた。
よし、もう少しで中間地点の桂池テントサイトだ。
そこで昼にしよう。
ただただデカい土地と、分厚くて白い雲を眺めながら、私はなにも考えず歩き始めた。
〜再び草木が密集したところへ〜
信越トレイルはバリエーションが豊かだ。
牧歌的な雰囲気感じる開けた道から、数十分も歩くとまた山らしい道へ戻る。
それにしても暑い。
渡渉ポイントを見つけるとなぜか嬉しくなる。
石を踏めば渡れるようになっている。
…3人とも間違えて沢へ入ってしまったようだ。
間違えたのだ。
気を引き締めなければならない。
間違えてしまった。
間違えてしまったというのに、3人はニコニコしている。
あまりの暑さに疲弊しているのだろう。
沢の冷たさが気持ちいいと言っていた。
順調に歩き進め、ちょうど12時ごろに桂池テントサイトに着く。
メシだメシだ。
コンクリ造のシェルターがある。
中にはクーラーボックス。
それに寄せ書き帳が置いてあった。
私は素直に
「水、ありがとうございます。助かりました。Happy trail!!」
と書き込んだ。
ギラギラとした太陽は力を増していく。
昨晩濡れたテントはあっという間に乾いた。
ここからまだ15km。
時刻は13時。
どうなるんだろうか。
不安を抱えながら、たっぷり休憩を取って歩きを再開した。