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夏の信越トレイル2021〜Day2〜

〜霧とトラブルと〜

2時ごろトイレに目覚める。

近くに大きな池があって、湿気が高いからなのか
霧が立ち込めている。
濃い霧に、カエルの声が響くテントサイト。
幻想的な雰囲気。

知らないところに来たなぁ

と思いつつ、霧の濃さに少し恐怖を感じながらそそくさとテントへ戻り二度寝する。

一晩中、虫の羽音がうるさくて寝付きは悪かった。

気温は思ったよりも下がり、18℃前後だろうか。
夜は快適だった。

5時過ぎ。
相方たちも起きて、昨晩はどうだったかを話す。
やはり羽音がうるさかったようだ。

早速トラブルが発生した。
モバイルバッテリーに不具合。
充電ができない状態となっていた。
4年前に買ったやつだからかなぁ?

相方1にありがたくモバイルバッテリーを借りて、iPhoneを充電した。
完全に現代人な私はスマートフォンが使えないとなると不安で不安で仕方なくなりそうな気がしたが、
おかげさまでなんとかこの日は保たせることができた。

朝のシリアルを食べて、今日のルートを確認する。

18kmほどの行程。
向かうキャンプ場にはシャワーとビールがある。
暑さの中、これ以上ない至福の瞬間を容易に想像できる言葉だ。

シャワー
ビール

それと

コンセント

貸してくれるかなぁ…

この3つの言葉が頭の中で繰り返し繰り返しとなる1日だった。
 
朝一の気持ちいい空気の中歩き始める。

今日もいい天気だ。
相変わらず雲が分厚いしどデカいし真っ白だ。

野ノ海高原から先はテクニカルなルートが続いた。
倒木や生い茂って道を横断する木があり、じわじわと体力を削り取っていく。

パッキングを面倒がって外付けしたマットと、
日除け用で追加した傘が引っ掛かる。

外付けはあまり良くない…
エアマットを買おうかなと考えながら歩く。

実際に連日歩いていると些細なところが気がかりとなる。
あれは欲しい、あれはいらない。
歩くことに集中するからこそ、内省的になれているのかもしれない。

午前中だが気温が高い。
汗だくになったころ、日陰で休憩をする。
その繰り返しをしていた。

しばらく歩くと、舗装路に出た。

少し休憩だ。

トレイルエンジェルが置いてくれたクーラーボックスを発見する。



ここにきてミネラルウォーターが本当にありがたい。
水が美味い……

この後も様々ありがたい触れ合いや心遣いをいただくのだが、
信越トレイルとは

感謝の気持ちを学ぶところ


でもあるのかなと振り返ると思う。

トレイルエンジェルからもらった水で回復した私たちは、少し長めの休憩を取ったあと再び歩き出した。

休憩後から30分ほど歩いたところだったか
信越トレイルの整備スタッフの方たちと出会う。

「暑いですねー」

「この先の光ヶ原高原キャンプ場にはビールがありますよ!シャワーも!」

それが…もうそれが楽しみで今日は歩いています。

先の道は草を刈ってくれているようだ。

綺麗に刈られた道を歩く。
ここまでの道からしたら、格段に違う歩きやすさだ。

3人とも自然と

歩きやすい
ありがたいなぁ

と言葉を漏らしていた。


〜黙々と歩く〜

細かな休憩を取りながら順調に歩みを進めて行く。

集中力が高まっているのか
それとも暑さによる体力消耗なのか
会話が減って、歩くことに集中している。

黙々と
黙々と歩く

アップダウンが少なく、道が広くなり、
ブナ林がとても美しい。

時たま現れる池や、朝露でむした苔に立ち止まる。



あぁ、これがハイキングか。

そう思いながら、
トレッキングポールと熊鈴の音色のリズムで頭をいっぱいにして
ただひたすら歩いた。

もう少し先に水場があるから、そこで水を取って休憩しよう。

ひたすら歩いた。


〜水場、再会〜

舗装路に出て、少し下ると水場を発見する。

この冷たさは悪魔的だッッッッッ

手が痛くなるほど冷たい。



濁りなどなく、そのままで飲めそうなくらい綺麗な湧水だ。
冷たい水を飲んで一息ついていると、車が一台通る。

先程の整備スタッフの方と再会した。

「水、こっちのが冷たくて美味いよ!」
と教えてもらった。
そしてまたしばし交流をする。

とても和やかな時間だった。

テント場まであと2時間半くらいだよ!
と教えてもらった私たちは、もう少し好天の気持ちよさを味わって休憩したのちにまた歩いた。




〜光ヶ原キャンプ場と管理人のおっちゃん〜

気持ちのいい雑木林を歩いて、予定時刻より3時間近く遅くなりながらもテント場へ到着。


早速受付に向かう。
管理棟に入ると、1人の女性ハイカーに声をかけてもらった。
シャワーから上がってきたところのようだ。
私たちとは逆ルートを歩いていて、赤池テントサイトから来たようだった。
仲間の2人もきっと鼻の下が伸びていただろう。
私は女性ハイカーの出立ちに夢中で、仲間の顔は見ていないが、きっとそうだろう。
きっとそうだ。

デレデレしてしまった。


気を取り直して、受付のおっちゃんに声をかける。
予約電話のときと変わらない。
気さくで優しいおっちゃんだ。

「今日はなんだかトレイル以外のお客さんも多くてね!
予約もらってたから、テント張れる場所空けといたんだよー!」

おっちゃんはそう言って、案内してくれた。

「管理棟は一晩中空けておくからね!トイレも綺麗にしといたからね!自由に使ってね!」

優しさが身に染みる。

早速設営をして、シャワーへ向かう。

ぅあぁと声が漏れるくらい気持ちがいい。
最高だ。

コンセントをお借りしたいのですが…
というと、
「んなもん聞かなくても、空いてるの好きに使っていいんだよ!」
と快く承諾してもらえた。

そしてここには自販機もある。

迷いなくコーラを買った。

なんだここは、天国か…。

夕食を取り終えて、水をもらいに管理棟へ行くと、
3人の顔を見たからなのか話しかけてくれた。

仲間の1人が大工だよ、と話をするとおっちゃんの顔がパァッと明るくなったとと同時に話のスピードがどんどん上がる。
おっちゃんは建築関係の仕事をしていたようで、信越へ移住する際に古民家を自分で改装したようだ。

「ちょっと待ってて!」
とおっちゃんは車からファイルを持ち出して、
3人をソファ席に誘導する。

自慢気に、改装した自宅の写真を見せてくれた。
おっちゃんは東京からの移住者で、少しずつ自身の手で家を改装し、しばらく住んでいるようだ。

東京出身と聞くと気づくのだが、所作や言葉遣いが江戸っ子だ。
それはもうチャキチャキの江戸っ子。

てやんでぃ!がよく似合う。

てやんでぃ!とは言ってなかったけど。

管理棟から見える夜景を目に収めてテントへ戻る。

おっちゃんみたいに自由に生きるって憧れるなぁ
そう思いながら、寝床に着いた。

歩いてメシ食って
それだけの1日なのにとても濃密だった。

おやすみ。

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