妖怪中年引きこもり無職
木造アパートの隣室に住む住人がどう考えても異常だ。
私は夜勤かつ休日が不定期なのだが、在宅の時は常に隣室から笑い声や物音がしていて、騒音の途切れる瞬間がほとんどない。
無職の引きこもりであることはまず間違いない。
無職も引きこもりも理由は様々だし、人の生き方は基本的に自由だと思っている。
人に迷惑をかけない引きこもり無職を虫に例えれば、岩の影にひっそりと暮らすダンゴムシみたいなもので、何の益もないが、何の危害もない。
しかし世の中には、見た目の醜悪さに加えて危害まで加えてくる害虫というものがあり、それはまさしく人に迷惑をかける引きこもり無職のことである。
よっぽどゲームが楽しいのか、毎日毎晩毎朝という調子でニート仲間としゃべりながら不愉快な笑い声を連発している。
それも常識人にとっては考えられない頻度と音量で。
人生で最も多く笑い声を聞いた人物は誰か?と問われれば、それは親でも知人でもなく、100%確実に迷いなく、名も知らぬ隣室の引きこもり無職の中年男性だと答える。
笑い声を発するのに時間も場所もわきまえない常識のなさと傍若無人さに呆れ、一度は直接に、そして一度は管理会社を通して注意をさせたが、どういうわけか恥も反省もなく生きているようだ。
この時点で社会生活など到底不可能であることは自明だが、常識もなく反省もできないから無職なのか、無職だから常識もなく反省もできないのか、果たしてその因果関係が気になるところだ。
深夜早朝にゲームしながら笑い声をあげて人から注意されるなんて中学生でもギリ恥ずかしいくらいだが、それが成人をとっくに過ぎた大人がやってるというだけで驚きなのに、その上に反省の色すら見られないというダブル☆オドロキ
親の顔が見てみたいとは言ったものだが、少なく見積もっても人間の親ではないし、どんな種類の妖怪かは気になるが、正直顔が見たいとは思わない。
幸いなことに仕事の都合で転居が決まり、近々この妖怪ともおさらばできることになった。
過去に死人が出た事故物件より、壁の向こうに妖怪がいる現在進行形の事故物件の方が脅威だと思うのは私だけだろうか。
この物件は健常者には気の毒だ。次の住人が妖怪と戦える妖怪であることを祈るばかりだ。