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誕生日の前日
誕生日の前日は、少し寂しくなる。
日付を跨ぐだけなのに、午前0時には今日まで生きてきた私の身体がばらばらに分解されて、新しく組み立てられてしまうような予感がする。
これまで散々こき使ってきた身体が急に愛おしくなって、身勝手な精神はそのままだ。
ひと続きの私の身がまたひとつ、土に近づいただけのこと。
もう何十回も繰り返したこの喪失感に、今も慣れない。
歳をとることが、自分自身を手放すことと同じになって久しい。
小さな遊び心、見境の無い反抗心、密かな夢、やめられない癖。
"私らしさ"なんてもう遠い幻想みたいだ。
空っぽな身体は、どうにか社会を生きる抜けるためだけの洗練された道具になっていく。
一日が短いと感じた体力も、何も許せなかった気力も、日々器が小さくなっていくのを感じる。
無に等しくなっていくこの寂しさが、喪失感が、あと何回繰り返されるのだろうか。
20代最後。
ここから先は成長なんて言われてた魔法が消えて、ただの状態変化だ。
発生して、変化して、消滅する。
全てのことに意味が無いと知れた時、嬉しかった。
どうせ無に還るのなら、明日からはもう少し自分の我儘に素直になってみようか。