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「浦和レッズ三年計画を定点観測」~#34. 2020 J1 第31節 vs神戸 レビュー&採点~

※こちらの記事では試合レビューに加えて試合後に行った三年計画に関する採点アンケートの結果を記載しています。採点アンケートの内容、意図については以下の記事をご参照ください。


両チームのメンバーは以下の通りです。

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浦和はトーマスデンと青木が久しぶりのスタメン。一方の神戸は週末の試合から大きくメンバーを入れ替えた陣容となりました。どうしても抱えているタレントのレベルにバラツキがある分、というより圧倒的な選手が存在してしまう分、チームとしてA面/B面のような見栄えになってしまいますが、この試合は言葉は失礼ですがB面のメンバーだったといえると思います。とは言え、8月の埼スタの試合でも同じような選手が出場していたので、B面なんてことを言っている場合ではないですが。


◆ズレを作れない序盤

フィンク体制の時には4-3-3あるいは3-4-3と初期配置の段階で三角形あるいは菱形を形成しやすくして、適切なポジショニングとボールをしっかり運んでいくスタイルでした。
8月に埼スタで対戦した時も浦和の4-4-2に対してSB、CB、SH、CHの中間ポジション、SHとCHのライン付近、2トップの中間背後と、誰がどう見るの?というのが難しくなるような場所へ人を置いて、陣形の噛み合わせの悪いところから丁寧にボールを運び、アンカーに入ったサンペールが右へ左へボールを振り分けて浦和陣内へ何度も侵入してきました。

チームとして具体性のある攻め筋を用意していた前体制から一転、三浦監督に代わってからは直近のガンバ戦と湘南戦を見ただけですが、ビルドアップの局面から全体的にテンポが速くなった印象で、ボールを動かすスピードが速くなった分、ポジショニング調整するための時間が削られてしまい、それまで神戸が強みにしていたじわりじわりと相手の守備を戸惑わせるような展開は見られなくなっていました。


お互い4-4-2ということで、ポジショニングで工夫をしない限りはボールを繋いで前進させながら相手を崩すことの難易度が相当高くなります。浦和は3戦勝ちなし、しかも前節は2-6の大敗を喫しており、対する神戸も4連敗中ということで、お互い攻守で形を動かしながらプレーした時に攻守の隙間の移行時間をリスクに感じたのか、攻守ともに4-4-2の形をあまり崩さずにプレーするところから試合はスタートしていきました。

神戸のビルドアップはSBが外に開いてCBとCHが2-2のBOX型になるため、守備側のCHは2トップの背後をそのまま縦に出て行って相手のCHを潰しに行く、サイドはそれぞれSHvsSB、SBvsSHという分かりやすい構図。

その中で時折、相手のプレッシングを交わしたところでズレが生まれてボールを前に運んでいくシーンも出てきますが、神戸の12'50~のようにビルドアップ隊のボールを離すタイミングが早く、なかなか相手の守備陣形を崩せない状況になります。

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◆3vs2を作って前進

「後ろの立ち位置の変更は前半の飲水タイムのときに少し言っています。」と試合後に大槻監督がコメントしていた通り、飲水タイム直後の25'30のところからビルドアップでの浦和の最後尾のポジショニングに変化が見られます。

最後尾で槙野、トーマスデンに加えて宇賀神、橋岡、青木のいずれかが下がってくることで神戸の2トップに対して3vs2の数的有利を作ります。そして、28'35に青木が槙野とトーマスデンの間に下りて橋岡を前に押し上げたところからチャンスを作りました。
このシーンはDAZNの中継映像も引いた画角だったので、全体のポジションが把握しやすかったですね。

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青木が下がってCBが開いたことによって、押し出されるように高い位置を取った橋岡がゴール前に絡むことが出来ていますし、最後尾で安定してボールを持てたことで長澤はデンからマルティノスへのパスが出た時にはマルティノスに対してのビハインドサポート、武藤までボールが出た時にはそれを追い越していく動きと、積極的に前向きなプレーをすることが出来ています。神戸のCBはここ最近の浦和と同様にSBが外に出る動きに対して横スライドしてついて行く傾向があるので、初瀬に対して渡部がスライドしたことによってできた隙間を真っすぐ狙えた長澤は素晴らしかったです。

一方の神戸は飲水タイムを挟んでも大きな変化はなく、チームとしてというよりは個々人が局面の正解を探すようなポジショニングやプレー選択を続けたため、4-4-2でブロックを組んだ浦和の組織の外側でボールが回るシーンがほとんどでした。
35'00、40'00に下がり目の山口、郷家に対して青木、長澤が前に出て行った時に前川から青木、長澤の背後へ落とすボールが入った時にはデンが出て行っても潰すことが出来ずに神戸が浦和陣内へ侵入していくシーンもありましたが、それ以外のシーンでは浦和にとって脅威になるようなシーンはなく前半を終了しました。


◆後半も大勢は変わらず

ハーフタイムで浦和は武藤に代えてレオナルドを投入したものの、チームとしての大まかなスタンスは変わらなかったと思います。引き続きCBに加えてSBか青木を加えた3人でビルドアップを開始していきます。

46'40にはちょっと槙野との距離が近かったかなとも思いますが、宇賀神が最後尾に下がって古橋を引き付けたことでその背後を汰木が取り、一気に縦に運んで神戸の守備陣をスライドさせると中央に残ったレオナルドへパス。決定機にはなりませんでしたが、3vs2を作ってから相手のアクションを利用してボールを前進させることが出来ました。この一連の流れで得たCKはマルティノスからデンへのドンピシャのボールだったので、ここで決めてくれれば!と思うようなシーンでしたね。

最後尾で数的有利を作ったことによって73'50に長澤が西川から興梠に入ったボールに対してビハインドサポートでボールを引き取り、レオナルドにパスをした後も前向きにボールを受け直し、その後の展開も前向きにビハインドサポートやネガティブトランジションでの潰し役を担うことが出来たり、
77'26には最終ラインに下りた青木から高い位置を取った橋岡へロングボールを送り込んでコーナーキックを獲得したりと、前節で上手くいかなかった最終ラインで安定してボールを持つことで全体のポジションバランスを整えてから一気に前に進んでいくことが出来たシーンもありました。


神戸の方も65'33に郷家が瞬間的に浦和の2トップ脇に下りてボールを前向きに持つことで青木と長澤にアクションを強要すると、山口を経由してその背後にボールを入れ込みます。中盤の背後でボールを受けた古橋から逆サイドの佐々木へパスを送りペナルティエリアまで侵入していきます。

ただ、藤本と田中がゴール前にいたこともあると思いますが、橋岡、デン、槙野が一旦ゴール前のスペースを埋めて守備陣形の外へボールを出させたことで、青木、長澤がゴール前に戻ってくる時間を作ることが出来てピンチをしのいでいます。


浦和は数的有利を作りながら、でもその有利を前方へ継続することがなかなか出来ず、神戸はなかなかどのようにボールを前進させるのかをチームとして同じ画が描けていないような状態が続いた中で、終盤に均衡が破れました。

81'56にハーフライン付近からの神戸のスローインでボールをキープする古橋を山川が追い越そうとするも、汰木と山中が古橋を挟み込んでボールを奪いカウンターへ。神戸の最終ラインはSBが出て行った時に前から選手を補充するのではなく、全体でボールサイドにスライドしてスペースを狭めようとしますが、菊池がレオナルドのところで後れを取って潰せずに山中に抜け出されます。

中に残っていた渡部も自分が出て行って交わされれば大ピンチなので山中との距離を取って遅らせようとしますが、少しでも足を振るスペースが作れれば高精度のボールを蹴れる左足を持っている山中にはこのわずかなスペースで十分でした。逆サイドから入ってきたマルティノスが利き足ではない右足で見事にボールをミートしてゴールの隅へ突き刺し浦和が先制。

最後の最後にFKから菊池の素晴らしいオーバーヘッドもありましたが、西川がこれを防いでクリーンシート達成。今季4点差負けを喫したのは6節の柏戦、9節の名古屋戦、前節の横浜FM戦と3度ありますが、いずれもその次の試合では無失点で勝利している(7節vs横浜FC 2-0、10節vs広島 1-0)のは、嫌な流れをすぐに断ち切るという点では素晴らしいと思います。そもそもそんな状況になるなよというツッコミもありますけどね。


◆4バックのスライド問題の続き

さて、前節からの守備の立て直しという点で気になったのは、前節の記事でも書いた4バックのスライド問題についてです。よろしければご一読いただければと思いますが、この試合ではこれまで採用してきた
(1) 4バックは中に留まらせてSHが後ろに下がる
(2) SBが外に出たらハーフスペースはCHが斜めに下りて埋める
(3) SBが外に出たらハーフスペースはCBが横スライドで埋める
の3つとは違うパターンが見られるシーンがありました。

後半の立ち上がりのシーンや50'20のように浦和は守備の時にSBが外の対応に出て行った時に、ここ数試合ほどはCBが横スライドでついて行くシーンは見られませんでした。むしろ50'30は宇賀神が出て行ったことによって空いたハーフスペースに汰木が下がってこようとしています。

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また、マルティノスも汰木も神戸のSBに対しては斜めに下がりながらついて行くことが多く、外~内レーンはボール保持と同様にSHとSBが内外、前後を入れ替えながら2人で対応しようとしていたように見えました。

前節の2失点目のようにCBが外に出ることでゴール前を数的不利にしてしまうリスクを抑えるために、SHの走行距離は伸びてしまいますが対応の仕方を調整したのではないかと思います。

勿論、神戸の攻め方が前回対戦時とは大きく異なり、Fマリノスや広島のようにどんどん選手が浦和の最終ラインの選手の間から抜け出したり、組織の中で中間ポジションを取ってボールを受けるシーンが少なかった影響は多分にあります。ただ、その相手に応じて守り切れたという点で評価しても良いのではないかと思います。
次節以降で対戦相手が変わった時に、ここの運用がどうなっていくのかは継続してみて行きたいところですね。


◆採点結果

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前半の飲水タイム以降から最後尾で3vs2を作ってボール前進をさせようとしていきますが、その時にSBとSHが神戸のDFとMFの中間の高さにポジションが取れた時にはボールを刺し込むだけでも相手の守備組織をずらせるシーンもありましたが、73'36のように2トップ脇から槙野が運んで相手が何かしらの守備アクションを起こさないといけない状況が作れそうな時も、運ばずにボールを離してしまうのはもったいなかったかなと思いました。

そういう点から考えてQ4は2点、Q5は4点としています。最終ラインでボールを安定して持って、周りもポジションをしっかり取ることは出来ていたので、もう少し前にボールを運べる時には運んで相手を動かしてからボールを展開すると、整えられたポジションバランスを活かしてスピーディな攻撃が出来たのではないかなと思います。

試合後の監督会見で記者から「前半はビルドアップやボランチの立ち位置をずいぶん調整していたと思うが、後半にレオナルド選手を入れ、早めに前にボールを入れて後ろでつなぐリスクを少し避けた部分があったのか?」という質問が出たのも、もう少し運べるところで運べばこのような印象を持たれなかったかもしれません。

一時期は槙野も運べるようになってきていましたが、その必要がない、そもそも運ぶプレーを選択できない状況が続くと、元の状態に戻ってしまうというのは人間誰しもあることなので、もう一度運ぶプレーに対する意識を上げてもらいたいなと思いました。


守備では最終ラインの選手が前向きにボールを奪えるシーンが何度かありましたね。22'04のデン、27'44の宇賀神、72'44の橋岡、77'06の山中など前向きに奪いに行く守備が表現されたのは良かったと思います。守備組織の縦の距離自体はFマリノス戦からそこまで変わったようには見えないので、この辺りは神戸の攻撃力に助けられた感じもしますが、こうして成功体験を得るということも大切なので、ここからより全体をコンパクトにして鋭くボールを奪いに行くアクションが起こせるようになると良いなと思います。


アウェー4連戦がようやく終わって次は約1か月ぶりのホーム戦。土曜日の川崎の結果次第では今季のJ1の優勝チームが決まる試合になるかもしれません。

ガンバは夏に対戦したときは3-5-2から積極的な縦スライドで相手を捕まえに行く守備をしていました。4-4-2に陣形を変えてからもそのスタンスは変わらず、攻撃面でも個々のタレントで局面を打ち破ってきている印象を持っています。そういう意味では今節の神戸と少し似通ったチームのスタンスともいえると思います。
なので、今節と同様に最終ラインでしっかり数的有利を作ってボール保持を安定させたところでガンバの守備にアクションを起こさせる状況を作るような主体的な試合展開になれば理想かなと思います。

気付けばもう残り5試合。目標として掲げているACL圏内は難しい状況ですが、ガンバ、鹿島と今の浦和よりも上位につけているチームとの対戦になるので、ここで連勝すればまだ可能性は残せるかもしれません。

次節も試合後のアンケートを実施しますので、是非ご協力をお願いします。

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