テレワークでかつらを買った話

まるで、テレワーク業務としてかつらを買ったかのようなタイトルだけれどもそうではない。テレワークのために部分カツラを買ってみたのでそのことを書き留めておこうと思う。

もっと正確に言えば、テレワークの時の顔出しのオンラインミーティング用、である。

出勤していた時は、毎週白髪染めをしていて、なんだかんだと1時間はかかっていたけれど、テレワークの生活になってからは、全然染めずにいる。 とはいえ、「顔出し」の会議のある時は一回染めたけど。でも、あれから2か月ぐらい。なんだか、顔回りの髪が白い方が顔色が明るく見える気がするのだ。まあ、こんな家ごもり生活はかつてなかったので、ここまで白髪を伸ばしたこともなく、ちょっと目新しいというのもあるかもしれない。  そして、なんとなく「今までずっと染めてきて、今、自分はどこまで白髪なのか」という興味もすごくある。なのでたった一回のために、ここ数ヶ月のコダワリ(?)を振り出しに戻すのは。。。というのが勿体ない。 

一方、環境を振り返ってみると。

オンラインの会議だらけになってきて帯域がひっ迫しているので、きちんとディスカッションをしたい会議は顔出しがない方がいいんじゃないかと思っている。ただでさえ、資料共有とかするし。マンションのWi-Fi使ってます、という人だと、このご時世、結構音がブツ切れで聞こえなかったりしていることも多い。そういう人は多いのか、私の回りでは音声+資料という会議ばかりで業務時は恰好は気にしないで済んでいる。同じミーティングに入っていた男性は「僕、パジャマですから」なんて言っていたぐらいだ。

勿論、顔出しの良さはあると思う。たまに顔出しでみんなを見ると、ただただ懐かしい。人とつながってる感はものすごい。なんていうんだろう。相手が生身のヒトであるという感覚?視覚からの情報量は多いんだ、ということを改めて思い知る。ただ、まあ、仕事上の大抵の要件であれば、情緒より理屈優先、と思うし、何よりたまにだから懐かしいのであって。やはり、まあ、仕事上の在宅会議は顔出し不要かなあと思う。

そして、プライベートも、外に出る時は髪をまとめて帽子をかぶっているので不要。他人の目に髪がさらされるのは、神社仏閣の参拝とか通院などで帽子をとった時だけ、というのが最近の実態である。

だが、いつ、急に仕事中に顔出し要請が入るかわからないのも事実だ。特にお客様案件の時は、「はじめましてのご挨拶」はあるのかもしれない。だが、急な話の時に、毛染めの1時間がとれるとは限らない。

で、かつらを探してみることにした。折角、ネットショッピングでなんでも買えるいい時代なのだ。これを使わない手はない。

思いおこせば、50になったのを一番実感したのは、50になると同時ぐらいにいきなり「女性用ウィッグ」のダイレクトメールが来た時だったっけ。。。などと、ふと思い出した。あの時はなんともいえないショックをうけたものだった。だから、「カツラなんて絶対買わない!カットとふんわりパーマで頑張る!」と妙な意地をはってここまで来たのだった。

しかし、今は状況が違う。「あなた、そろそろ薄くなってきてるんじゃないですか?」と言われたわけでもなく(いや、ダイレクトメールでそんな言い方してたわけではないけれど。決して)、わたしが、わたしの快適生活のために積極的に狩りにいくのだ!まってろよ、カツラ!ものの5分でポチってやるぜ!

が、いきなりつまづく。

検索キーワード。「カツラ 」。。。                  あらー、なんか若い人がコスプレで使うようなものばかり。。。???  えええ?なんて検索すればいいんでしょ?

あ!「ウィッグ?」                         ほぼ変わらず。そりゃそうか。イマドキ、同義語辞書ぐらいあるよなあ。

「カツラ、白髪かくし」 おおう。かくしはさらっとスルーされて、グレイヘアのかつらばかりときたか。ううむ、ううむ。。。          あ!もしかして「カツラ、ミセス」おお。イメージに近づいてきたぞ。でも、何故、ショートばかり?                     「カツラ、ミセス、セミロング」。。。うん。まあ、この辺なのかなあ。 へえ、地肌もカツラについているんだ。すごいなあ、技術の進歩って。

と探すこと30分、「部分かつら」に行きついた。まあ、ある意味、前半分ともみあげ部分だけでいいわけだからこれにしようか。と、その中から探していく。おっと、もう1時間近くもたってしまった。

やるな、カツラ。そう簡単にはゲットさせないぞってか?だが、もうここまでだ、観念しろ、ふっ、、、とは言わなかったが、どことなくビミョーなハイテンションな状態のままポチる。やったぜ、この達成感!

そして数日して到着。思ったより小さな箱におさまっている。

ドキドキ。いざ、挑戦!                   

はやる気持ちをおさえつつ、できるだけさりげなく包装をとく。いや、誰かが見ているわけではない。なのに、何故だろう、ことさら何気ないふりをしてしまうのは。そのくせ、口元はニマニマをかくしきれていないのが鏡を見なくても自分でわかる。

さて。

え?え?ちょっと待って、どっちが前なの?そして、このピンみたいなのはどう使うんだ。どうつけるんだ?                   えええっと。説明書説明書。。。                   あった!説明書を見る。

「ウィッグライフを楽しむ」  お、おう。以下、概要のみ。      1.ヘアアイロンでストレートにする                 2.人工地肌部を見ずで湿らせて分け目をつけたり形を整える     3.ピンを開く                          4.生え際から1~3センチ後ろにつける」

おお「残念ウィッグはこれで解決!ポイント」なんてあるじゃないか。あ、これはフルウィッグの時か。

ううむ。。。。説明書を読んだけれど、どちらが前かわからない。。。

とりあえず、かぶる。

おお!この乗っかってる感!ううん、やっぱり、分け目がわざとらしいなあ。これ、斜めにしたらどうだろう。などなど、いろいろ試してみる。10分ほどあれこれやったところで、「この感じならヘッドセットつけたら、いけるんじゃない?」というところまでたどりつく。ヘッドセットで、不自然にたれてくる前髪部をおさえたりできそう。うん。いいんじゃない?ヘッドセットは少し前よりにつけることになるけれど、音の聞こえも問題ないし、マイクの位置は動かせるし。

さて、数日がたち。かつらデビューの日が来た。気のおけない若者たちとのオンライン飲み会である。一応、事前にアナウンスしておいた。本当に気のおけないメンバーなので、きゃーきゃー言いながら「カツラとってくださいよー」「カツラってそうなってるのか見せてー」ぐらい言われるかと思っていたけれど、みんな何も言わない。なんだろう、この「触れてはいけないもの」空気感。まあ、それならそれでいいや。とりあえずは久しぶりの飲み会だ。初夏の陽気で、ビールがおいしい。               が、5分すると、もう暑い。カツラがこんなに暑いものだったとは!!!

しかも、もう一つ落とし穴があることに気づいた。カツラは毛がツヤツヤしている。言い換えれば、つるつるしてる、ということだ。ここにヘッドセットをつけるのだから、当然、すべり落ちてくる。前から横の不自然さを隠すために、若干、バーの部分を前めにつけているので、滑り台の途中に座っている状態だ。

これは。。。ヘッドセットを直そうとして、かつらごとずれるパターンではないだろうか。

暑い、なんとなくかゆい。しかも地味に、が着実にヘッドセットはずり落ちてくる。なんということだ。かつらをつけるということが、こんなに畳みかけるようなハードルの嵐だったとは!                 結局、飲み会では「そろそろカツラで遊ぶのも飽きたから外してくるねー」と飲み物のお代わりを取りに行くときに外して、ヘアバンドで生え際を隠して過ごした。

ごめんなさい、今まで、カツラがずれてるのを見つけると「あっ」と見てはならないものを見てしまったように思っていた。

違うんだ。カツラは、もう「ずれているのがあたりまえ」なんじゃないだろうか。それを、ナチュラルにつけていられることの方が奇跡なんだ!!

コスプレイヤーさんも俳優・女優さんほか芸能界の方々も、一般のご利用者のみなさまも、あの暑いカツラをつけたまま、ずらさずに歩いたり演技したり飲んだり食べたり歌ったりしてるんだ。。。すごいなあ。       知らなかった。あれは達人の「技」なんだ。人生の奥義にまた一つ触れられた気がする。

感服は感動をよぶ。明るいカツラ生活はまだまだ遠そうだけれど、カツラは確かに私に感動を与えてくれた。今のところはこれでよしとしよう。

結局、テレワークの顔出し会議の時にかつらを使うかどうかと言われたら、最初の一瞬自己紹介だけして、あとは音声優先でビデオオフ、という時であれば使えるだろうと思う。使ってみたいとも思う。

他人の事情を考えもせずにあれこれ言う人に、いきなり顔出しと言われたら「あ、じゃあ、ちょっとカツラつけてきます」と、かましてもみたいと思う。


ところで、もみあげの白髪に関しては、耳当ての大きいヘッドセット(ヘッドホンみたいな)で覆うのが一番いいんじゃないかな、ということにこれを書きつつ気づいてしまった。

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