他人の買い物カゴを見てはいけないたったひとつの理由
ある日の17時ごろ、普段行かないイオンで食糧品の買い物をした。
火曜市の日だったからか、この時間はいつもそうなのか、みるみるうちにレジ待ちの行列が伸びていき物凄いことになっていた。
まったり献立考えながらぐるぐる回っている場合じゃなかった。
進まない行列に接続すると、ひとつ前に並ぶ50代くらいのオバサンがふと気になりはじめた。
肩に下げたボストンバッグからは小ぶりの花束がはみ出している。カゴにはプリキュアの大きなお菓子パックひとつ。
ジッと見るのはいけないと分かっていても、この組み合わせはどうしても気になってしまう。
そのとき私が思いついたシチュエーションは2つ。
・久々に孫が遊びに来るので花を飾り、プリキュアのお菓子でもてなそうとしている。
・花束は仏花で、亡くなった孫(あるいは娘)の墓参りに行く途中である。
進まない行列を待つ間、私の下品な妄想は物凄い勢いでふくらんでいった。
オバサンは地球滅亡を阻止する戦士。その娘は、我が子を守るために戦いで散った。遺された孫をひとり安全な場所に預け、オバサンは最後の戦いに挑むのだ。娘の墓に花をたむけ、孫にプリキュアのお菓子を渡しながらこう言う。
「いいかい、あんたの母親は勇敢な女だった。覚えておきなさい、実は私がプリ…………」
いよいよオバサンに会計の番が回ってきて私は我に帰る。彼女の勇姿を見届けなくては。
オバサンは、新人レジバイトの手際の悪さに嫌悪感をあらわにし、聞こえるように舌打ちをした。
ひとこと「袋いらねぇ」と吐き捨て、レシートを奪い去っていった。
悪いのは私だ。
他人の買い物カゴなんて見なければよかった。
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