【涙枯れる神作】恋愛作品の頂点と揶揄されるWHITE ALBUM2を今更プレイして、噂以上に物凄い作品だった話
こうしてレビューを書くのは全く経験がないので、拙い部分が多いとは思いますが、何卒ご容赦を
私は今まで幾つかのノベルゲームをプレイしてきたが、100点の作品が出るとは思っていなかった。そもそも私の中では99点が最高得点であった。(何故ならその後の作品でそれ以上の作品が出る可能性があるからだ)
しかしーこと恋愛作品に於いて、ホワルバ2を越す作品は今後出てこないと思える程物凄い作品であった。(少なくとも私が知る漫画、アニメ、ドラマ、映画含む全ての恋愛作品の中でトップである。)
文句なしの名作いや、神作と胸を張って断言できる。
未プレイの方は今すぐブラウザもしくはアプリを閉じて、DMMかAmazonでWHITE ALBUM2 EXTENDED EDITIONの購入を強く推奨する。この作品はそれだけの価値がある。
そしてプレイ時は特に攻略等は見ず、自分のあるがままにプレイして欲しい。
さて、前置きが長くなってしまったが、以下ネタバレなしでは語れないので、未プレイの方、今後プレイされる予定のある方はご注意を。
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つい先程white album2のかずさノーマルエンド(通称浮気ルート)を終えた。
残るところwhite album2もかずさtrueルートと雪菜trueルートの2つ。最後までやっていないので評価は変わるかもしれないが、おそらくこのルートが一番好きになるかと思う。
時刻は12月22日午前7時(ちなみに今日も仕事だ)。いくら夜長のこの時期とはいえ外は既に明るい。
泣き腫らした目に朝日が突き刺さるように痛い。
物語を終えた事と今日仕事か…と二重の虚無感が自分を蝕んでいた―等と高尚に宣っているがつまるところ面白すぎてやめられなかったのだ。
その証拠にここ1週間は仕事が終わったらすぐゲーム起動→朝方までプレイ(ストレスケアの為、酒を飲む)→疲れて泥のように眠る→仕事(生産性激減)を繰り返していた。
心身共にかなり摩耗していた為だろうか、この記事の主題にもある通り、涙が枯れるという稀有かつ奇妙な経験を人生で初めてした。
嗚咽が漏れ確実に泣いている状態なのに涙が出ないー心と体が完全に分離していたのだ。
自分で言うのもあれだが、私はかなり涙もろい。(社会人になってからより顕著になった)
いわゆる世間一般的な「泣ける」作品では、恥ずかしながら大抵涙する。
ただ泣けるということは=登場人物が可哀想。
ーと言うある種第三者目線の感情であり、あくまでもエンタメというフィルタ越しの―自分とは無関係であるが故の優位性から発生する感情―
―そうなのだ。本来はそういった感情であるはずであったのだ。
しかし、丸戸史明氏が描く登場人物達達があまりにも生き生きしている為か、とてもフィクションとは思えず、いつのまにか主人公春希として物語の追体験を余儀なくされていた。
その美しくも切ない、時に凄惨なまでの深い心理描写は「当事者」である私の心を容赦なく抉る。
没入等と言う生ぬるい言葉では表せず、擬似仮想空間にいるようなーそれと見紛う程、この世界そのものに飲み込まれていた。
恋愛を主軸にした物語でここまで、喜怒哀楽全ての感情を動かされた作品は今までにない。
おそらく今後も出てこないと思っている。(もし出たら私の身が持たない)
そんな劇的な体験故、私の中で絶対的なヒロインとして冬馬かずさは今後君臨することになるだろう。
追体験の主である北原春希と同じように―
ここから各キャラクターに関する私の所感を描き綴ろうと思う。
全てプレイした方ならわかると思うが、メイン2人のヒロインはとても魅力的だ。
私は先述した通りかすざ派ではあるが、51:49くらいの差だと思ってもらって良い。(物語の構成上かずさを好きにならざる負えなかった。)
いやいや、雪菜こそ最高だ!武也ルート待ち望んでます!(ちなみに私は武也と依緒のストーリーを見たい)等是非皆さんのキャラクター愛をコメントに寄せて欲しい。私はホワルバ2全てのキャラクターが好きだから大歓迎だ。
最初に触れたいのはなんといっても、声優の生天目仁美さんの演技の良さである。
普段はクールなのに甘えた時のすこし上ずった声、泣きの演技等々細かいところを上げたらきりがないほど全てにおいてレベルが高く、冬馬かずさを見事に演じている。もはや声を充てているといった次元のレベルではない。
この方以外にかずさを演じることはできないと感じた程完璧なキャスティングだ。
(余談だがかずさverのwhite album、届かない恋はここ最近ヘビロテで聞いている。)
彼女は作中で一番弱く、強くそして美しい―ここまで魅力的な一人の「人間」を描けたことに心底感服した。
彼女は基本孤独で雪菜には家族、親友と多くの支えてくれる存在がいるのに対して、かずさには春希を除くと母曜子のみで、曜子の病気のことを考えるとかずさノーマルエンドは何ともいたたまれない気持ちにさせられる。
彼女のその想いの強さはピアノが源流であり、母曜子曰く色っぽい音色を奏でるそう。この5年間ピアノを通し、春希と対話していた。
その忘れられない自身の罪ゆえ、ピアノを弾き続ける以上、春希への恋心をずっと引きずる構図になっているのは皮肉ではあるが見事だ。
ICルートでは雪菜のために一歩身を引き、今回のかずさノーマルルートでは壊れていく春希を見て自らの幸せではなく、春希の幸せを一心に願い断腸の想いで5年前と同じ決断をした。
春希から離れるという一見するとICと同じ結果ではあるもののその本質は全くの逆であり、5年前は春希と雪菜から逃げ出したのに対し、今回は春希ないし、雪菜、そしてかずさ自身の為に行動しており、圧倒的に能動的かつ前向きな決断である。
冬馬かずさが春希の依存から脱するこのルートは非常にしっくりきたし、三者傷付きはしたものの今後も大丈夫であろうと感じれたので、拗れに拗れたWhite Album2の結末として相応しい。
(全ルートプレイ後追記:やはりこのかずさノーマルエンドが一番良かった。
勿論、雪菜のトゥルーはグランドエンドとして相応しく、全プレイヤーの望んだ展開であるので、文句のつけようがない。
しかし、ここまで拗れてしまった関係はかずさノーマルのような終わり方が一番納得のいく着地であったと思う。)
このルートの終盤の駅でお互いの手を放すシーンで冒頭に述べた涙が枯渇した。本当に、本当にすばらしい。これ程辛くしかし前向きで美しい別れがあるだろうか。
今後のルートでかずさが心の底から幸せになることを願っている。頼むぞ春希。
そしてもう一人のヒロインである小木曽雪菜。
彼女はこの物語の根幹であり、彼女なしでは全てのルートが成り立たない。
そして雪菜はccでとても好きになった。
実にめんど…重…女性らしい性格であり、どこまでも春希を受け入れるその聖母とも見紛う優しさは見ていて心地がいい。
性格は少し小悪魔的であるが、完全に黒くはなれない そんな人間味溢れる愛すべきヒロインだ。
しかし、そんな彼女も春希と同じく自己矛盾に苦しんでおり、想いは決まっているのに春希との関係の修復ができずにいた。
そう、かずさの存在がどこまでも古傷を抉り続けている。学内のラジオのみで流れるもはや冬の定番になってしまったあの曲を聴くたびに—
私の個人的な見解であるが、春希と雪菜がいつまでも過去に囚われ傷ついていたのは二人を取り巻く優しすぎる友人達も関係していると思っている。
二人を想っての善意であるが故に、依緒と武也の行動は残酷だ。
この親友二人の行動が本来一番の薬である時間で春希と雪菜の傷を癒してくれることはなかったのだとそう感じる。
それでも依緒と武也の事は好きだが、作中で本人達も語っていた通り、忘れさせてあげるのが一番だった気がする。
しかし、この干渉過多とも言えるお節介さは、逆を言えば春希と武也の関係も同じであり、ある意味自業自得な皮肉さがあるのがなんとも…
追記:かずさtrueの武也はかなり好きだ。最後まで春希の味方であっては欲しかったが…エピローグで今でも春希の事は親友だと思ってる節はあったので安心はしたが。
ちなみにこのエピローグ雪菜死亡説が巷では流れているようだが、作品のテーマ的にそれは有り得ないだろう。あくまでも前を向く雪菜が二人の居場所はまだ日本にあると伝えたかった—そう解釈している。曜子さんのあの含みのある言い方は勘違いしそうになる…曜子さん最後までお茶目だ…
IC、CCの他ヒロインルートで散々雪菜との別れを見せられ、CCでやっと春希と結ばれた時は心から祝福できたし、正直これで終わりでいいとさえ思っていた。CCのエピローグからのcodaのOPが流れた時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。(衝撃的過ぎて声を上げて叫んだ程だ)その後のcodaでは彼女の成長と芯の強さが窺えた。
この5年で傷つきながらも、最も強く成長した人物だと思う。
IC時点ではかずさ以外あり得るのか?と思っていたが、まさか評価が指数関数的にうなぎ登るとは考えもしていなかった。ある意味予想を一番裏切られたキャラクターだ。
千晶=麻理→小春の順で好きである。
千晶の友達以上恋人未満な距離感がとても心地いいし、最後のシーンは心にふわりと残る良い話だ。
小春があまり好きではないのはこのルートの雪菜があまりにも不憫であるから。しかし、小春希と武也に呼ばれるほど春希との相性は良いと感じた。
ちなみにこのルートは嫌というほど人間の陰湿さが出ており、心をかなり痛めた。
そんな陰湿な雰囲気の中、もう一人の主人公は孝宏君であったと思う。
なのでかずさtrueの孝宏君から叱責されるシーンはされて当然とはいえ、かなり辛い。
そして麻理さん。えぇ最高です。ホワルバ2で唯一そこまでめんどくさくない方のヒロインだと思う。
(ちなみに春希の年齢的にも26歳は年増じゃないと思うが皆さんどうだろうか?)
バリバリのキャリアウーマンなのに恋愛は奥手というギャップにやられた。
唯一の年上キャラということもあり、春希も甘えられたのではないかなと思う反面、冬馬かずさと比べたり年増を否定しなかったりとこのルートの春希は結構ひどい。最後の空港のシーンは主人公しててよかったが…
さてこの物語を語る上で外せない人物ー主人公北原春希に関して語ろうと思う。
巷ではクズだ、優柔不断だなどと酷評であるが、私は春希の事がかなり好きだ。
ここまで悩み、時に逃げる事もあれど彼なりに真摯にお互いの気持ちに向き合おうとする様は(矛盾していることを含め)人間心理としてとてもよく理解できるし、とてもリアリティがある。
これはメタ的な視点にはなってしまうが、三角関係の物語である以上、主人公春希は2人のヒロインの間で揺れざるおえない。
春希が嫌われていると言うことは、ある種丸戸氏の狙い通りとも言えるのではないだろうか。(しかし、新○結衣と佐々木○から同時にアプローチされたらそりゃ揺れるでしょという話であるのではないか)
人は元来自己矛盾に苦しむものであるし、一貫した行動というものは中々取れないものだ。(ただどのルートでもかずさのピアノを聴きにいかなかったのは本当に許せん)
だから彼の泥臭くも人間味のある性格を好ましく思う。
—とここまで好意的?に綴ってはみたものの、正直な話春希のことはicでは好きではなかった、好印象をもつきっかけはデジタルノベル「雪が解けそして雪が降るまで」だ。
そのチャプターはかずさ視点で描かれている為、春希をなぜ好きになったのかがわかるし、彼の行動が他者からどう思われているかが分かる。
春希の行動は基本利他的である。たとえ自分が損をしてもその持ち前の几帳面さと面倒見の良さでしつこいまでに他人に干渉する。
だからか他者から依存されやすいし、自らも他者に依存しやすいのである。言葉を悪く言うと八方美人のメンヘラ製造機である。
この世界を否定し、人の優しさにこの上なく飢えていたかずさが彼に惹かれ、依存する形となったのは至極当然であったと言える。
とここまではかずさtrue前までの印象でさすがにかずさtrueの春希はとてもではないが擁護できない。
だが、それでもその人間味故かやはり憎めない主人公である。(彼を否定する事はヒロイン二人を否定することになるからと無理やり納得しておく)
さてかなり文章がとっちらかっているのとキャラクター愛を語るという気持ち悪い展開になってきたので、物語の流れに関して語ろうと思う。
大まかには三部構成となっている本作。
ICではかずさをメインに話が進み、CCでは下がりきった雪菜の株が急上昇し、codaでそんな魅力的な2人の中から1人を決める究極の選択を迫られる。
codaはシークレット扱いになっており、初見時の衝撃は凄まじかった。
ICで望んでいたかずさとの再会とは言え、ここからまだあるのか…!と感じた程だ。しかしCCで終わっていては少し切い恋愛物の枠として収まっていただろうから結果は間違いなくよかったのだが。
そして内容を語る上で外せないのが、この作品は決して退廃的でない。三角関係の恋愛をテーマとして取り扱っているのだからもちろん退廃的な要素が全くないというわけではないが、ただ全編を通して良い意味でドロドロしていないのだ、主な理由は以下二点。
①心理描写がメインで、背徳的ではあるものの、所謂人間の黒さに焦点があてられていない。恋愛の切なさ儚さ、そして思いの強さをメインに綴られている。
この点はバランスがとても難しいところだが、非常に良い塩梅であったと感じる。
②作中でヒロイン達が春希に関して会話するシーンはICを除きない。
そんなICでさえ春希を奪い合うという昼ドラさながらな展開もない。
white album2のヒロイン達は主人公と同じかそれ以上にお互いを想う気持ちが強く、お互い恋敵ではあれどそれ以上に親友なのである。
故にお互いへの罪悪感からくる贖罪で、結果一歩引く形をとってしまう。
その構図がICではかずさであり、codaでは雪菜であったのだ。
この対比が本当に綺麗で、ただただ残酷だ。浅慮な表現になってしまうが、正に悪人のいない昼ドラとでも言うべき内容だ。
もはや説明不要で特に語ることはない気もするが、敢えて言わせて頂きたい。
BGMも歌も最高であると!
全て良いのだが、その中でも群を抜いて好きなのが作品のタイトルを冠するWHITE ALBUMだ。(余談も余談だが、ビートルズの The Beatles・通称ホワイトアルバムは超名盤なので、興味がある方は聞いてみてほしい)
この楽曲は完成度が本当に高い。90年代後半を感じさせるシティーポップライクなサウンドと間奏で入るサックスが楽曲をこれでもかと盛り上げてくれる。
この曲を聴くと文化祭でサックスを吹くかずさが目に浮かぶのは私だけではないだろう。
それら作中での演出とサウンドが相まって一番好きな楽曲として心に深く刻まれている。
その他にも皆のトラウマ、氷の刃。心に残るボーカル曲、優しい嘘、心はいつもあなたのそばになどタイトルだけでもうるっと来る珠玉の曲達が揃っている。
自分なりのグランドエンディング予想としては誰とも付き合わないのではないかと、そして三人共それぞれの道を歩むのではないかと思ってます。まぁ恋愛ゲームでそれはないか…ただこのかずさノーマルエンドはかずさルートでありながら最終的に雪菜を選んだので、そんな当たり前の常識を破ってくれることを願ってます。
あくまで希望ということで、残りラストまで駆け抜けたいと思います。
ここまで駄文に付き合って頂きありがとうございました。
12月26日追記:全ルートコンプしました。ホワルバロスで胃ではなく心に穴が空いています。素晴らしい作品を作ってくださったAQUAPLUSのスタッフの方々、そしてシナリオライターの丸戸史明氏に最大の敬意と感謝を。
自分の予想とは全く違いましたが、このグランドエンディングのカタルシスが凄まじく、なんだかんだでハッピーエンドが至高ですね。
そして、かずさアフターは本当に書いてくれて良かった…。かずさの最後のドレス姿には自然と涙が溢れました。
P.S.4月にDMMのスクラッチのA賞のタペストリーが届きました。クリア後に何かないかと見つけた物だったため迷わず購入しており、A賞が出て飛び上がったのを思い出しました。笑
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