失せ物がありまして
失せ物がありまして、まだ探しています。
そこでまだ此処にいて、旅立てないのです。
失せ物は、どこで失くしたのか判らないものだ。
見当はつけられても、ここという確証は得られない。
もし、確証があるとすれば、それは失う覚悟か、失うことへの諦めをしたときだろう。
もとい、失せ物が何か判っているなら、まだ良い。
失せ物が判らないということもあるだろう。
それは、失ったということを気づかなかったか、気づいたときには何を失ったのか明確に判らないときだ。
失ってはじめて気づくことは、往々にしてある。
その多くは、何かの恩恵を受けていたということに気づくだろう。
逆に、弱さや驕りを顕在化するということもある。
失せ物は取り戻せるものもあれば、モノとして完全に取り戻せないこともある。
取り戻すというよりも、取って代わるということもあるだろう。
失せ物は、忘れた物か、置き去る物か。
過去に戻る扉は必要ない。
飛び立て、戻る場所はもうない。
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