「パクリ」は馴染まない
注目のデジタル庁
なかなか考えものな記事を目にした。
今年9月1日付でデジタル庁が設置された。
担当相は先んじて任命されていた平井大臣が続投する。
この表現も少し法的に自然であるかは考える必要があるが、便利が良いので、ここではそうしておく。
ネットでは、デジタル庁の公式HPやロゴに注目が集まっていただけに、好スタートではないかと思っていた。
そして、こうした形で注目を浴びて、政治に興味のない人も、国の施策に触れる機会を得られるのは、良い契機だとも感じた。
その意味においても、デジタル庁の設置という話題性は抜群だった。
そんな中、今日、冒頭に張った記事を見つけたのである。
記事への細かな指摘
まず先に、記事の見出しと中身の細かな点を指摘しておきたい。
見出しに「デジタル庁長官」とあるが、デジタル庁には長官を置いていない。
官房長官や国家公安委員長などを除いて、長官職には事務方を充て、事務方トップと呼ばれる。
デジタル庁では、記事本文中にもあるように「デジタル監」を置き、これを事務次官級(事務方トップ)としている。
付け加えるならば、たとえば消費者庁などのトップは長官であるが、デジタル庁のトップは内閣総理大臣となっている。
もう1つ言えば、これは復興庁とデジタル庁のみの体制である。
そして、中身。
最後の一文である。
デジタル庁は菅義偉首相の肝いり政策だったが、この騒動直後に総裁選不出馬を表明し、今月末で辞任する見通しとなった。
おそらく影響は少ないだろうというのが筋だと思う。
たしかに時期は重なっているが偶然だろう。
こうした「えっ」と思うような事務方や大臣の発言などは、しばしば政治に見られるが、そこまで影響はしてこなかった。
「パクリ」は馴染まない
記事では「パクリ」とされている。
その言葉が意味するところは「盗品」「盗作」といったものが検索でヒットする。
たしかに、意味としてはシックリとくる。
ただ、この問題が「パクリ」というふわっとした表現に馴染むとは思えない。
たとえば、他者がSNSなどで公開するものを勝手に転載した場合。
これもこれで見過ごすことができない。
ただ、今回は販売されている素材のカンプデータを使っている。
「コンテンツの使用に先立つ準備という目的を超えて使用」しているので、利用規約にも違反する。
こうした言葉の置き換えが、ことの大小を左右する面は少なくない。
だからといって、この一件で事務方の交代などは不要だろうが、職務内容と見比べて適当かは再精査しても良いとは考えられる。
これが私人であれば、権利保護の厳格さが多少薄れるということは往々にしてある。
実際、そこまで私人間で権利関係に厳格に対応している例は数えるほどだということは否定できない。
こと、デジタル庁の事務方トップなのだから、一般知識レベルのことでつまずいてほしくなかったという印象だ。
あわせて、権利関係に意識が不足していることとが、デジタル庁の事務にどれほどの影響があるのだろうか。
デジタル庁の事務
法律には、さまざま書かれている。
それに他の法律から引っ張ってくる内容もあるので、本当にさまざま書かれている。
一見、見る限りでは、権利関係のことをそこまで意識していないようにも考えられる。
ただ、「デジタル社会の形成のための施策」を定めるからには、「デジタル社会」の定義を置き去りにはできない。
定義の中に、「インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報又は知識を世界的規模で入手し、共有し、又は発信するとともに、」とあることから、今回のような権利関係も含まれると考えられる。
そうとはいえ、主題であるかといえば、さしてそうでも無さそうであるため、数ある事務の中で当然漏らしてはいないという程度だとも考えられる。
何かあったときは
何かあったときは、その問題となっていることは本当なのかを含め、本元に当たってみることも大切だ。
今回の場合は、デジタル庁設置法をはじめとする諸法令を、簡単にでも確認して、雰囲気で「デジタル監けしからん」とならない方が良いだろう。
今回の場合は、行い自体はアウトだ。
その上で、その行いをした者の立場を考えあわせたときに、どの程度の問題があるのかという問題がある。
個人的に、印象としては、「おいおい」という感じで、さして立場が危ぶまれる問題ではないように思う。
念のためにもう一度。行い自体はアウトである。
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