煙草
ぼんやりと赤くなるその先を見つめながら
少し吸い込んだ煙が無くなるのが怖くて
気付けばずっと繰り返している
別に美味しいものじゃないのに
その行為に依存するように
視線の先は遠くを見たままでも俺が見てるのは今じゃない過去でもない
突然何かを思い出したように
消えてしまいたくなるんだ。
無くてもいいものにすがる時間は
無くてはならない時間の代わりで
いつまでもやめられないでいるのは
この時間がゆっくり流れるように錯覚するから
悲しみも寂しさも何故か選んで浸ってしまう
夜が好きで夜が嫌いな天邪鬼。
今夜は月が綺麗だから、どうか貴方も
見上げていますようにと
吐く息は届くはずもない。
寒さか、タバコのそれかわからないものを
ため息と共に吐き出して
来るはずの無い貴方を
またここで待っている。
なんでもなかった喫煙所。