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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)
第430回 突風に生卵割れ(塚本邦雄)
突風に生卵割れ、かつてかく撃ちぬかれたる兵士の眼
前衛短歌運動の旗手、塚本邦雄(1910~2005)が1958年に発表した歌集『日本人霊歌』のなかの1首。このようにして戦場では兵士たちが瞬時に死んでいったことが想起される。
塚本は滋賀県東部の川並町の商家に生まれた。母方の祖父は俳諧の宗匠だった。商業学校を出て、商事会社に就職する。その頃、兄の影響で作歌を始めた。1941年、呉海軍工廠に徴用された。終戦の年、広島に投下された原爆のきのこ雲を見る。
戦後は大阪に転居し、前川佐美男が主宰する『日本歌人』に入会した。1951年に出版した第1歌集『水葬物語』が三島由紀夫に絶賛される。それからも商社勤務を続けながら短歌をはじめ、詩や小説を創作した。
1960年代には、岡井隆や寺山修二とともに前衛短歌運動を展開する。1985年には歌誌『玲瓏』を創刊し、主宰。1990年には近畿大学文学部教授に就任した。