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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句
第445回 真浄界中、別離なし(無窓疎石)
真浄界中無別離 何須再会待他時
(真浄界中、別離なし 何ぞ須(もち)いん再会して他時を待つことを)
室町時代初期の臨済宗禅師、無窓疎石(むそう そせき、1275~1351)の死を目前にした遺偈から。 ― 真実で清らかな世界には別離はない。なぜ再会の時を待ちわびるのか。―
自分が死没した後は、すべて後継者の指導に従って仏法を守ってほしいと弟子を戒める。
伊勢の国に生まれた疎石は幼少期に出家し、奈良の東大寺、京の建仁寺、鎌倉の円覚寺などで修行した。1325年、後醍醐天皇の要請で上洛し、南禅寺の住持となった。そして後醍醐からは国師号を授かる。1330年には甲斐の恵林寺を創建した。
後醍醐の建武政権から離脱した足利尊氏は室町幕府を樹立。後醍醐の死後、尊氏は疎石の勧めにより菩提を弔うために全国に安国寺を建立した。京の嵯峨野には天竜寺を建立し、疎石がその開山となった。そして、足利氏は末代に至るまで疎石の門徒に帰依することを約束した。