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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句

第437回 奇妙な出会い(オーエン)

I went hunting wild.
After the wildest beauty in the world,
Which lies not calm in eyes, or braided hair,
But mocks the steady running of the hour,
And if it grieves, grieves richlier than here.
(ぼくは野性の美を求めて世界中を飛び回った。美は人の眼差しや綺麗に編まれた髪に穏やかに宿るのではなく、時間の歩みを打ち砕くほど激しいものだった。そこに嘆きがあるとするなら、戦場での嘆きより大きかった)
 
 英国の詩人、ウィルフレッド・オーエン(Wilfred Owen, 1893~1918)の「奇妙な出会い(Strange Meeting)」から。
 戦場を脱出した〝私〟は、薄暗いトンネルを抜けて、眠りにつけない人々がうめいている陰気な部屋にたどりつく。そのなかの一人が身を起こし、〝私〟を見つめる。その死相を帯びた微笑みから、〝私〟は地獄に立っていることを知る。そして、その男は掲出の言葉を語った。
 オーエンはウェールズとの境界に近いシュロップシャーで生まれた。父はウェールズ人、母はイングランド人だった。10歳のころから詩に目覚め、キーツの詩を愛読する。高校卒業後、教会の牧師の助手などを勤めた後、フランスに渡る。そのとき、第一次世界大戦が勃発し、オーエンも参戦した。
 戦闘中に精神を病んだオーエンはエディンバラで療養した。そこで詩人、シーグフリード・サスーンと出会い、詩作の指導を受ける。1918年7月、オーエンは西部戦線に復帰。そして終戦の1週間前に戦死した。没後、サスーンの紹介によってオーエンの詩が世に知られていく。

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