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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句

第432回 隠遁生活へのオード(フライ・ルイス・デ・レオン)

iQué descansada vida
la del que huye del mundanal ruïdo,
y sigue la escondida
senda, por donde han ido
los pocos sabios que en el mundo han sido;
(なんと穏やかな暮らしだろう。一握りの過去の賢者は、騒々しい俗世を離れ、狭い間道を歩いてここに辿り着いた)
 
 スペインの文学者、フライ・ルイス・デ・レオン(Fray Luis de León , 1527~1591)の詩「隠遁生活へのオード(Oda a la vida retirada)」の第1連。ホラティウスの「幸いなるかな(beatus ille)」に着想を得た作品で、心の平安を取り戻す願望が籠められている。
 フライ・ルイスはマドリード東方のクエンカでキリスト教に改宗したユダヤ人の家庭に生まれた。サラマンカ大学で神学とヘブライ語を学び、同大学の教授になる。
 ところが1572年、ラテン語訳の聖書に疑問を呈したことや、旧約聖書中の「ソロモンの雅歌」をカスティーリャ語に翻訳した罪を問われ、異端審問所の牢獄に投獄される。(聖書を俗語に翻訳することは1545~1563年のトリエント公会議で禁止されていた)
 その後、無実が認められ1576年にサラマンカ大学の教授に復帰した。それからは聖書の翻訳や詩作に打ち込んだ。『キリストの御名について』では、聖書のなかで使われたイエスの様々な呼び名について解説した。
 

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