七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)
第400回 筆にまかす(元政上人)
跂智愈長愚 勤巧更増拙 耐愛児童歌 無節還有節
(智を跂(くわだ)つれば愈(いよいよ)愚を長じ 巧を勤むれば更に拙を増す 愛するに耐えたり児童の歌 節無くして還って節有り)
江戸時代の学僧、元政(げんせい)上人の「信筆(筆に信(まか)す)其ニ」。元政は江戸初期に京の深草に瑞光寺を開いた。ここで長年、歌会を主催し、国学者の松永貞徳も参加していた。松永には幼少時に和歌を習った関係がある。
元政は45年間の生涯に多数の和歌や漢詩を作った。作詩に当たり、己の心に感じた性霊を重視し、技巧に走るのを戒めた。掲出の詩でもそれを強調する。
― 智慧を振り回せば愚かさが際立つ。巧みにやろうとすれば拙さが増す。子供の歌は、節がないようで実は有り、愛すべきである。―