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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句

第431回 農夫ピアズの夢(ラングランド)

Parish priest and pardoner share all the silver
That the parish poor would have if he were not there.
(教区司祭と免罪符売りが銀貨を山分けしている。彼らがいなければ、教区の貧しい人たちが得るはずだったのに)
        
 中世イングランドの宗教詩人、ウィリアム・ラングランド(William Langland, 1330?~1400?)の頭韻詩『農夫ピアズの夢(The Vision of Piers the Plowman)』から。自らも聖職者だったラングランドは、宗教界の腐敗を激越に糾弾する。
 『農夫ピアズの夢』はイングランド中西部の方言で書かれている。50種以上の写本が残っており、長いものは7,000行以上に及ぶ。前半部はローマ教皇から末端の聖職者に至る宗教界の堕落への風刺と批判が主になっている。後半ではあらゆる階層の人々の生活を生き生きと描く。
 ラングランドはイングランド中部に生まれ、ベネディクト派の修道院で教育を受けたとされる。その後、ロンドンに出て聖職に就いた。1362年ころから『農夫ピアズの夢』を書き始め、生涯にわたり手を加えた。同書は説教文学の傑作と評価されている。

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