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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第295回 訣別(梅田雲浜)

妻臥病牀兒叫飢 挺身直欲拂戎夷 今朝死別與生別 唯有皇天后土知
(妻は病牀に臥し兒は飢ゑに叫(な)く 身を挺して直ちに戎夷(じゅうい)を拂(はら)はんと欲す 今朝死別と生別と ただ皇天后土(こうてんこうど)の知る有り)
 
 幕末の志士、梅田雲浜(うんぴん、本名は源次郎、1815~1859)の「訣別」。梅田は若狭小浜藩士。この詩は、安政元年(1854年)にロシアの軍艦が大阪湾に入った際、討伐軍の先頭に立ったとき作った。
 ― 妻は病気で、子供はひもじさに泣いている。自分は身を投げ出し、異国人を撃ち払おうとしている。今日、別れた後、再会できるかどうか。それは天地の神々だけが知っている。―
 梅田は大酒のみで偏屈な男だったが、人を説得する力は抜群だった。ロシアの軍艦が示威行為をしかけたとき、十津川郷士に推されて総帥として斬り込みをかけることになった。
 幕府から目の仇にされていた梅田は、安政の大獄で捕まり、牢死する。


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