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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句

第433回 勝者が敗者の歴史を書く(テオドール・レッシング)

Immer schreiben Sieger die Geschichte von Besiegten, Lebengebliebene die von Toten.
(常に勝者が敗者の歴史を書き、生き残った者が死んだ者の歴史を書く)
 
 ドイツの哲学者、テオドール・レッシング(Theodor Lessing, 1872~1933)の『歴史―無意味なものへの意味の付与(Geschichte als Sinngebung des Sinnlosen)』から。その著書でこう強調する。
 ― ある史料からは、「その時点でそう書かれた」という事実以上のことは識別できない。つまり、その内容については検証が必要である。だが、往々にしてそのことは忘れがちである。―
 レッシングはハノーファーで同化ユダヤ人の両親のもとに生まれる。父は医者だった。ボン大学やミュンヘン大学で医学を学ぶが、次第に文学や哲学に惹かれるようになる。卒業後、ハノーファー工科大学で哲学科の講師になった。
 第一次世界大戦下では野戦病院の軍医として勤務した。その傍ら、『歴史―無意味なものへの意味の付与』を書き続けるが、その反戦思想のために出版は許されなかった。
 戦後はハノーファーで市民大学を立ち上げ、新聞に政治色が強い論説などを発表する。とくに大統領候補のヒンデンブルクを批判したため、ナショナリストたちの反感を買う。
 1933年、ナチス政権が誕生すると、レッシングはチェコスロバキアに逃走した。その土地でジャーナリスト活動を続けていたが、半年後にナチスの命を受けた暗殺者グループに自宅で銃撃され、落命した。

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