U0。0UbANd Neo Album 『To,bE』
では、今回はアユ犬バンド(正しくは"U0。0UbANd"と表記)アルバム『To,bE』について訊かせていただきたいと思います。ニューじゃなくネオなんですね?
アユ犬(以下A):ネオです(笑)新曲の『Neo RomantiX』の話にも出たように、ニューと言われていたモノでも今は進化しているので、あえてネオとさせていただきました。
では、アルバムの背景からきかせてもらえますか?
A:まず、前作のアルバム『Red data』とシングルの『Rock The Cosmos』が去年あったわけですけど、これらは期間限定配信ということで、数年後には配信がなくなるんですね。それで、当時の世界や音楽が不要不急とか言われる中で、もはや音楽は“絶滅危惧種”だと感じてあのようなタイトルのアルバムを出したわけです。内容も、未発表曲だけじゃなくて絶滅してほしくなかった曲、きちんとリリースされていなかった曲『Stardust boyz』『Ronde』『E起動上のアリア』も取り上げました。
いきなり重いですね…。
A:そう、前作の背景は重い(笑)だけど、ずっとプログレなアルバムを出しながらも、実は毎回“次はポップな作品を出そう!!”とか考えていて、タイトルも『P.O.P.S』だと決めていたりしたんです。
衝撃の未発表プロジェクトですね(笑)
A:それで、今回アユ犬バンドのアルバム、となった時にpopな曲を入れようと思ったんです。後、曲が集まるにつれて前作の絶滅危惧種な曲からも救済したいって気持ちも出てきて、シングルになっていた『Rock The Cosmos』とインストの『Sparkle』を絶滅から救うことにしました。これについては、アルバムのテーマともリンクする曲だったこともありますね。
そのテーマとは何だったんですか?
A:簡単に言えばLifeとloveですね。歌詞にも“イノチ”とか“ココロ”が今回よくでてきてますし(笑)
アルバム全体を先ほど通して聴かせていただいたんですが、確かに今回のアルバムは非常言葉が耳に入ってくるという印象でした。
A:それは、単純に歌ものだからかもしれないけど(笑)だけど、伝わりやすさというかわかりやすいってことも大切なので、歌詞もわりとハッキリとした表現を入れるようにココロがけました。これまでは色々こねくり回して言葉を入れてたんですけど、パッと入ってくるような感じにしようと思って。ただ、絶対自分では書かないと決めている言葉がいくつかあって、それは入れてませんが(笑)
(笑)例えばどんな言葉なんですか?
A:う~ん、「寄せては返す波のように」とか(笑)
どこかで聞いたことがありますね(笑)そう言えば、今回の歌はちょっと重い言葉も結構入っているように感じましたが。
A:やっぱり、さっきも言ったように根幹にあるテーマが重いからでしょうね。昨年から今年にかけて世界に変化が起こって、ちょっと前まで元気にしていた方が亡くなったりとか、lifeとかloveを意識してしまうコトが増えてきて、自分でも何か残さないと…と思って。ある日、ある命は消えてしまっても、自分たちの中に想いは残っていて、想いがあることでまたいつか存在としてもこの星に戻れる日があるんじゃないか…。受け継ぐべき想いと、新しい命を受け止めていきたい、そんなことを歌っているのが『命の種』ですね。振り返ると、どの歌も結構、重いことを歌っていたりします(笑)でもアルバム全体としてポップに聴かせたかったので、そんなにドロドロはしてないかなと思いますけど。
なるほど、そういう世界観があったんですね。『Neo RomantiX』でも、ちょっと怪しい世界が描かれていますね。
A:ニューロマというのは元々怪しい世界観だっていうのもあるし、この曲では怪しい男女が、夜の街に消えていくところから始まるわけですけど、それは現代のように触れ合えないうちに、親しくなったような気にはなるけど、それはホンモノじゃない場合もありますよね。そんな、本来の人間的な部分がどんどんなくなっていってしまうような状況で、愛とか恋とか、人間的な行動もだんだんとなくなっていって、お互いに見えなくなってしまう。それがホントにreal loveなのか?と歌ってるのがNeo RomantiX、とかね(笑)
深いストーリーですね(笑)
A:まぁ、そんなのはどうでもよくて、聴いたヒトなりの捉え方で全然構わないんですけどね。確実なモノをヒトは求めるけど、今目の前にあるのがそれか判断できなくなってしまっていて、ホントなのかリアルなのかわからない。だから教えて!っていうね。
なるほど、、、。この曲と『命の種』はK2Rさんのリミックスも収録されていますね。『Rock The Cosmos』も含めてオリジナルとリミックスが同時に入っているというのは面白いですね。
A:元々、K2Rのリミックスができたことでアルバムが始まったということもあるし。彼のリミックスは、ほとんど別な曲として聴けるぐらい変わってるので。例えば、クラシックやプログレのアルバムを聴いていると、同じメロディーのモチーフが楽章が進んでも何度も出てくることがありますよね。そういう感覚で聴けるんじゃないかな~と思っています。
では、アルバムタイトルにもなっている10分に及ぶ大作『To,bE』はどうだったんですか?僕は、この曲にすごく衝撃を受けたんです。というのは、これまでアユ犬さんの曲にあったような物語的な世界観というより、すごくリアルな今、現在の状況を歌っていて、メッセージがすごく具体的に書かれていたからなんですけど、それがプログレッシブな曲にガッチリ乗っていて、こんな曲は聴いたことがないぞっ、と感じたんですね。
A:確かに物語的よりもリアルかもしれません。冒頭の部分はほとんど、やなせたかしさんみたいな気分で書きましたからね(笑)"そうだ、それだけだ!"みたいな。この曲は、一番最後にできた曲なんですけど、これがなくてもアルバムはほとんどできていたんですね。でも、まだいけるんじゃないか、もう、とことんいかないといけないんじゃないか?と思ってしまって。もっと今を描かないといけないなと。半日で歌を乗せて、歌ものにしてしまいました。
最後の最後にノリで作った曲が10分のプログレですか(笑)
A:一番の問題作となりましたね(笑)さっきも言ったように、もう少しだけ何か…と考えたときに、これまたボツになったままの『mixage』というプロジェクトを思い出したんです。それは、ボクがずーっとやってきた、即興曲をベースにして上に声や演奏を重ねて歌にしていくというものでした。前作『Red data』に入った『E軌道上のアリア』はその名残で…。今回の『To,bE』もベーシックは即興曲で15分ぐらいあるような曲だったんですけど、そこに歌を入れて、ギターを入れていくということをやったんです。
また幻のプロジェクトの話がでてきましたね。ということは、まず演奏があって歌を作って入れたということですか?
A:そうなんですけど、この演奏自体、元々歌ものにしたくて、上に歌のメロディーがのることを考えながら弾いているんです。なので、もう最初から展開は決まっているというか、ある程度できていたという感じなんですよね。
そうだったんですねっ!それで、あのようなプログレな展開になったわけですか。後半のギターの音が重なっていってハーモニーになっていくあたりゾクゾクとしました。
A:ギターについては、歌を入れた後に弾いたんですが、歌についていきつつ、あらかじめ録音されていたmoogのリードとの絡みなどを意識しながら、セッションする感覚で弾きました。それで、ああいう曲の流れに沿ったアレンジになったんですよね。
この曲は歌詞がすごく入ってきたんですけど、『To,bE』というメッセージはこの世界に今必要だと感じられたんですか?
A:"To be"と出てくると、なんにでも繋げられるんですよね。この後に色々繋げられるじゃないですか。"to be with you"でもいいし、"to be happy"でも"to be a rock star"でもいい(笑)後に言葉が続いて、前向きになれるんですよね。それで、ここでアルバムテーマとして使いました。生きてるということだけで前に進んでいるんだ、とね。とにかく、これは生きることへの賛歌ですね。
なるけど、それで聴き終えた後にどこかポジティブな気持ちになるんですね。最後の最後にこの曲が出てきたときに、何が起こるんだ?という不安感と期待感で聴き進むと、最後に"your dreams振りかざせ!"と出てきて、救われた気がしました。
A:最後に"愛するココロを持って"とも言ってるんですけどね(笑)全てはそこですね。ボクらは、毎日自分を演じて日々を生きていますけど、同時にアナタが生きてることを讃えよう、愛するココロを持って…とね。まぁ、聴いた方がそれぞれに感じてもらえたら嬉しいかな。単純に、ああ、この青い犬面白いな、でもいいし。
(笑)今までの深イイ話は何だったんですかっ!今日は長い時間ありがとうございました。
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