小説同人誌の段組を考える

はじめに

はてなブログから記事を移行しながら、以前書いた小説同人誌の段組に関しての記事はちょっと情報量が少ないと感じたのでこれを機に一から書き直すことにしました。しばしお付き合いいただければ幸いです。
新書サイズは作ったことがないのでA5と文庫の2種ぶんしかないです。ごめんなさい。

同人誌のサイズについて

小説同人誌の場合、A5サイズかA6(文庫)サイズが主流です。新書サイズもありますがあまり見かけないイメージ。
A5と新書は2段組、A6は1段組が主。
それぞれの特徴として

【A5サイズ】


(メリット)
・扱っている印刷所の数が多い
・装丁を凝れる
・料金が安い
・文庫と比べてページ数が少なく済む
・締切が遅い

(デメリット)
・2段組になるため、慣れるまではやや読みづらい
・改ページがしにくい

【新書・A6(文庫)サイズ】


(メリット)
・商業の文庫本と同じような装丁ができる
・一段組のため読みやすい(新書二段はやや読みづらい)
・改ページや章区切りをつけやすい
・普通の本棚の文庫と並べて収納できる

(デメリット)
・新書・文庫サイズを扱っている印刷所が少ない
・料金がA5と比べて割高になる
・締切が早い
・装丁を凝りにくい(できても箔押しまで)
・ページ数が嵩む(特に文庫は3万文字で100Pくらい)

これを念頭において、お好みのサイズをどうぞ。
文庫本は一見するとデメリットが多いのですが、可読性が高い事と商業の文庫本そっくりの装丁で作れるという点は本当に魅力的です。
余談ですが文庫は締め切りが早いこともあり、文庫で作る想定で書いていた話が間に合わなかったときにA5に切り替えたら早割に間に合うことも多いです。
具体的には文庫は2週間ほど締切が早い。自分の執筆ペースと相談しながらサイズを決めるのもアリかなとも思います。



本文の段組(A5サイズ)

2段組が主流。段の間は、「3文字分くらい」が読みやすくていいそうです。(読んでいる時に視界に別の文字が入ってこないため)

一番よく使う段組

文字サイズ:13Q(9pt)
26文字×22行 段間10mm
(1段あたり572文字。1ページあたり1144文字)
天:16mm
地:15mm
ノド:20.5mm
小口:14mm

画像1

本文はフリーフォントの源暎こぶり明朝


アンソロとか漫画混在であまり普段文字を読まない人向け段組

文字サイズ:9pt(13Q)
25文字×19行 段間10mm
(1段あたり475文字。1ページあたり950文字)
天:20mm
地:22mm
ノド:21mm
小口:20mm

画像2

PDFを並べるとあまり差があるように見えませんが、実際に印刷されると文字の詰まり具合の差が結構あります。
文字が詰まっていればいるほど普段文章を読まない人は抵抗を感じてしまいがちなので、アンソロなどで漫画小説混在の場合はそのへんも考慮して段組をすると読みやすさが上がるかなぁと。

個人の体感ですが個人誌であれば1行あたり26文字くらいが程よい文字数かなぁという印象。13Q(9pt)より小さくなると小さすぎるかなと。
ノドは最低でも20mmとっておかないと読みづらくなります。本の厚みに応じてもうちょっとノドを大きくとってもいいかもしれない。
天地は20ずつでも全然いいんですが、上下どちらかにノンブル+タイトルを入れる場合はそこを考慮して寄せてあげると良いかもしれない。




本文の段組(A6サイズ)

レイアウトは市販のものを参考に。私は講談社ノベルスを参考にしました。

文字サイズ:13Q(9pt)
38文字×16行
(1Pあたり608文字。見開き1216文字)
天:12mm 
地:12.5mm
ノド:16.75mm
小口:10mm

画像3


これでもややノド側読みづらいかも?くらいなので
ノドは18mmとってもいいかも。厚みに応じてどうぞ。
1Pあたりの文字数がA5サイズの1段に少し足した程度なので
ページ数は純粋にA5サイズの2倍に膨れ上がります。
3万文字前後で100P前後。商業の文庫本は平均10万文字なので、300Pくらいで商業の文庫本と同程度の厚みになります。
ページ数が200を超える場合は文庫本用の本文用紙を扱っている印刷所を使ったほうが読む際の負担が少ないです。
75kg淡クリームキンマリよりもうちょい薄い紙を扱ってるところがあるといいかもしれない。




本文フォントについて


短文であればデザイン系のフォントでもいいのですが、同人誌は特にページ数も多く文字量が多いので、できるかぎり可読性の高いフォントが良いです。
特にこだわりがないならフリーフォントの『源暎こぶり明朝』がオススメです。クセが少なく、リュウミンに近いため非常に扱いやすい本文フォント。本当にこれがフリーフォントでいいのかと思うほど。
毎回自分も発行する際に、本編の雰囲気に合わせてフォントを変えたいと思いながら比較画像を作ってアンケートをとるのですが、
だいたい『源暎こぶり明朝』がアンケート一位になります。すごい。
フォント比較アンケートで使った画像4つ

▼源暎こぶり明朝

画像7

本当にフリーフォントでいいのか?と思うフォント。リュウミンを持ってるのにいつもここに収まってしまう。すごい。クセがなく読みやすい。
どんな文章にも合う。

▼貂明朝

画像7


Adobeフォントの一つ。
やや古めかしく妖しい雰囲気を持ちながらも本文フォントとしての可読性が損なわれていない書体。私は好きなんですが、やや読みづらいと言われました。怪談話とかに合いそう。

▼リュウミン

画像7


言わずとしれた商業文庫本の本文フォント採用率の高いフォント。
クセが少なく綺麗です。文庫本ならリュウミンで組みたくなる。

▼小塚明朝

画像7


Adobeのデフォルトバンドルフォント。ポップでやや幅が太めのフォントのため、新聞や雑誌の本文のような印象を受ける。
行間とってても詰まって見えたりするので、そういった効果を狙っていない場合は避けたほうがいいかもしれない。これはこれで好き。

フォントは本文用のものでもそれぞれ特徴があるので、本の雰囲気に合わせてフォントを選ぶのが楽しいです。同人誌は全部自分で選んで作り上げることができるのが利点ですよね。
段組やフォントは究極論自分の好みなのですが、初めて段組を考える人や試行錯誤中の方の参考になればいいなぁと思いつつ。
未来の自分がまた新しい段組を考えたりいじったりしたときは追記したいですね。
お付き合いくださりありがとうございました。


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