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白く見えるほど明るい街で

赤い提灯がさがったラーメン屋台にいる
わたしたち以外は誰もいない
有名人と結婚した有名人の彼女は
ラーメンの湯気のなかで言う
「幸せになりたいんじゃないの。ジャンプしたいの、」
発光した背景に
輪郭が溶ける

何も語らない
何も知りたくない
何にもなりたくないものたちの
要約で埋もれていった赤い舌が
いつか大きな川の前で
あらゆる感情を吐き出して
自らの夢を放流する
溺れる前にすくってみれば
結晶を孕んだ鉱物で
やわい指を少し切った

渦まく貝殻は夢を見る
空洞に耳をかざすと
ゴオォゴオォと鳴いている
これは波の音だって
海の音を覚えているんだって
それが本当ならば
きっと本当だから
人魚も天使も
神様も宇宙人も
いるのだろうと信じてしまう
あなたの胸に耳を寄せて
ずっとそのままたゆたえたら
潮が引いたあとでも
あなたの鼓動を覚えていられるかしら
両手で塞げばわたしの耳は
何度も繰り返しあなたの音を

渦まく貝殻は夢を見る
ラーメンの汁を飲み干す
濡らした爪先
はめられたリング
笑う顔をみて初めて
あなたでなくてはと気づく
わたしは人魚じゃない
神様でもない
ここはとても明るくて
お腹にたまった様々な石を
捨てて行ってもバレないだろう
顔を照らす光
天使じゃない
宇宙人かもしれない
誰も知らない

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