やわいシャワーだ
昔の青森はひどくて、それもすごくひどくて、そこに移り住んで幼少期を過ごした話を聞いた。住むところも食べるものも働くところもよくなくて、と、淡々と語っておられ、真剣な眼差しで聞くのがよいか、笑ったほうがよいのかわからなかった。
「実力があればそれ以外は関係ないと思っていた」
「わたしも実力やセンスがある人ならば、他は関係ないと思うときがあります。結構、じぶんの見る目を信じているので」
「それは若いからじゃないか。自分は35歳のときに気付いたよ」
白くなった短い髪の毛の先に、淡いピンク色の桜の花びらが乗っかっていて、乗っけたままチキンカツを平らげてしまわれた。
「占い師に、あなた大変なことになりますよ、大当たりしますよと言われたんだよ。そうでしょうと返した。もう10年前になるけどね。今頃大金持ちの予定だった」
「でも、まだ10年ですよ」
「そう、まだ10年。当たるまで死ぬものか」