【夢日記】荒神の春の祭
――――夢を見た。
うららかな春の昼下がり。
平安の京の都を思わせるような、幅の広い参道のような砂利道。
左側には桜が咲き乱れ、右側は豪華な築地塀、屋根の部分は絢爛な金箔で飾られている。
その塀を横目に行き先も決めずただただ歩を進めていると、やがて塀が途切れて朱色で塗られたこれまた豪華な門が見えた。
中の建物が何なのかは知らなかったのだが、雰囲気からすると格式高い神社のような場所だろうか。
その門の前に1人の若い巫女が立っている。
目があうと、その巫女は恭しくお辞儀をしてきたので、こちらも同じように返した。
「お祭りで御座います、あなたを招いております」
「何のお祭りですか」
「春の荒神の祭りでございます」
「何に招かれたのですか」
「あちらに使いも御座いますれば……」
巫女がすいと指をさした先には、富士に見間違える程の大きな山が連なる山並みがあり、さらにその山にどっしりと、金色の大きな蛇がぐるりととぐろを巻いている。
「さあ、荒神がお招きしております」
「荒神とはどんな方かお聞きしてもよろしいですか」
「まあ」
知りたい事が沢山あるのですね、と先程まで表情をひとつも動かさなかった巫女が笑った。
細められた目が、きらきらと金色に光っている。
「何でも教えて差し上げますから、とにかくお入りくださいな」
巫女がこちらの両手にそっと手を添えてくる。
ひんやりと澄んだ水に手をつけたような冷たさが手に伝わる。
「招かれておりますから」
「あの、奥に神様がいらっしゃるんですよね?」
「いいえ」
荒神はわたくしです、お迎えにあがりました。
そう言ってにこにこと笑っている巫女の薄い唇からするりと出た舌が細長い。
ああ、なんだかとんでもないモノに招かれているのだなあ……と思いながらも、手を振り解く気にはならなかった。
「きっとたのしいですから、」
手を引かれ耳打ちされたあたりで目が覚めた。
ちなみにその日、目が覚めてから春の荒神の祭りとやらを調べるとその日は本当に春の祭りが行われていたそうである。
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