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私のぬい その4

今はもうない、京都のジュンク堂。

仕事をサボってよく行った。

勤めていた会社は雑貨を取り扱う会社で、社員も若い子が殆ど。

自然、なんというか文化祭的ノリで真夜中まで「よっしゃ!やるぞ!」って、直営店の棚卸しを全員でワイワイ言いつつやるような社風で。

毎日がお祭りみたいだった。

今思えば、残業代もろくろく出ないし、ボーナスなんて「棒になすびで田楽にもならん!」だったから、所謂ブラック…だったとも言えるのだけれども、性にあったというか、私は概ね機嫌よく勤めていた。

ジュンク堂は、私にとっては何時間いても飽きない場所。

よく言われることだけれど、「ネットで本買えるから別に本屋なんて」…とは、ぜーーーーったい思わない。

背表紙が呼ぶ、あの感じ。
それまで知らなかったのに
「出会ってしまう」一冊。

そんな大好きな場所
ジュンク堂の洋書コーナーの一角で見つけたのがこちら。


見つけた瞬間、一目惚れ。

いっちょ前にテディベアを連れているところ。
パジャマの赤ストライプ。

何故か豚と象が好きな私の好みに
ドンズバ。

かーわーいーいー!

手に入れてホクホクしながら会社に戻ると、部長が一体何を買ってきたのかと言う。

見せる。

部長、よく見て!
この子、後ろも超キュートだから。

ね、尻尾も可愛いでしょ?
この後頭部の丸みよ!

部長は心底呆れたように

「…お前なあ~」


このぬいは、私が社会人として、会社員として、一番勢いのあった頃に手に入れたもの。

思えば部長もこんな部下をもって…と思うけれど

人間、勢いのある時は多少の無礼も勢いで押し通しちゃうからなあ。

若いって、怖い。

ブヒブヒ

ジュンク堂はもうないけれど、
この子が話せるなら、お前はあそこの生まれだと、しっかり話して教えてやろうと思う。

ねえ、部長?




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