性依存症は「複雑な病」
一言で「セックス依存症」「性依存症」という形で表現しても、その内実というものは人それぞれ全く異なるのが、依存症の中でも性依存症の複雑さの特徴です。
性行動タイプの分類による違い
IITAP (International Institution of Trauma and Addiction Professionals) が実施しているSARAテスト(Sexual Addiction Risk Assessment=性的依存症リスク評価テスト)によると、性行動のタイプは以下のように多岐にわたると言われています。
1.痛みのやりとりをするセックス
2.性的妄想に没頭してしまうセックス
3.インターネットのかかわるセックス
4.誘惑するセックス
5.ポルノグラフィー(性的コンテンツの視聴依存)
6.他者を侵害するセックス(その気がない相手に対する強引なセックス)
7.匿名のセックス(顔や名前を知らない相手とのセックス)
8.露出症
9.窃視症(盗撮やのぞき、または盗撮やのぞきに関係した性的コンテンツで
視覚的に快感を覚えてトランス状態に入る)
10.搾取/支配するセックス(相手の同意を無視したセックス)
11.児童に対する搾取(性行為だけでなく、児童に対する不適切な行動も含む)
12.取引のセックス(売春や性的な魅力をコンテンツとしてやりとりするセックス)
13.お金を払うセックス(買春や有料コンテンツの利用)
14.信用を搾取するセックス(セクハラなど、自分より立場の弱い相手を
ターゲットにしたセックス)
これだけ様々な種類の嗜癖がひとつの「性依存症」として扱われているのが、今の自助グループでの回復の現状であるともいえます。そのため、残念ながら共感が得にくく、自助グループに繋がることをやめてしまう仲間も実際に存在します。
例えていうならば、ポルノ視聴がやめられなくてつらいと思っているひとと、窃視症(のぞき行為)がやめられない人も、同じグループで分かち合いをすることになります。
あまりにもかけ離れた嗜癖の仲間の話に、むしろ気分が悪くなってしまうこともあります。私も実際に、痴漢被害のことをフラッシュバックしてしまい、苦しくなってしまったことがあります。
こうした「嗜癖のミスマッチ」を解消するには、「ポルノ視聴依存症の自助グループ」「売春依存の自助グループ」といったように、より細分化された自助グループ運営が求められるのではないかと思いますが、現実的にはそこまでの細分化で運営するのはなかなか難しいと言わざるを得ません。
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