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NPBで4割打者は誕生するのか②


前回は、高打率を残した72選手の成績をとりあげ、さまざまな傾向をみてきた。↓前回の記事

https://note.com/xx_18_zz/n/n410259ee31d4

今回はその中でもさらに飛び抜けた成績、打率.370以上をクリアした打者をピックアップして、打率4割をクリアしそうな選手像を見ていきたい。そのあとに、現役選手について見ていきたい。打率.370以上を記録した選手は今まで8人いる。

なお、表のなかで、文字が赤いものは上側に標準偏差1を超えているもの。赤く塗りつぶされているのは標準偏差2を超えているもの。青はその逆である。

まずは集計結果から

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大きな傾向として二つのタイプに分けることができそうだ。

①高い本塁打率でインプレー安打率は平凡

バース選手、張本選手、大下選手が該当する。本塁打が増えるとインプレー安打率は減る傾向にある。

②本塁打率は平均以下だが、高いインプレー安打率

イチロー選手、クロマティ選手、内川選手、ブルーム選手が該当する。

例外は川上選手であろう。三振率の少なさは異次元であり、他の選手とは少し傾向が違う。

四死球率を見てみると、ほとんどの選手が平均付近の成績を残している。

インプレー安打率は前の記事でも述べたが、あくまでフェアゾーンに飛んだ打球がどのくらいヒットになったかを表すものに過ぎない。そうなると運の要素もたぶんに含まれる指標である。

投手と打者で完結する結果「三振、四死球、本塁打」は、運の要素が介入しない。この三つの指標は年度間相関も高く、安定しやすい指標である。つまり、打者の実力が如実に現れるのである。

そう考えると、打率4割はこの3つの指標を高い水準で維持し、高いインプレー安打が記録された時に初めて達成されるものと考えられる。

具体的な数値でいくと、三振率は9%を超えないように、四死球率は11.4%前後、本塁打率は2.5%以上、最低でも2%以上は欲しいところである。


ある程度、超一流選手の傾向が分かってきたので、次に現役選手でサンプルに入った選手の詳細をみていく。
なお、順番は最高打率を最近達成したものから列挙している。

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*表の中では近藤選手の打率が.339になっているが.340が正しい。

近藤選手、吉田選手は昨シーズンに達成して年齢も20代後半ということもあり、最も打率4割に近い存在であろう。MBLを対象に行った研究によると打者の能力のピークは27歳前後だそうだ。今が1番脂が乗ってる時期なのかもしれない。

長谷川選手、青木選手、内川選手、福留選手はピークを越えてると言わざるを得ない。青木選手はまだまだハイアベレージを残しているが、全盛期を大きく超えることは難しいであろう。

坂本選手は年齢的にも近年の成績的にみても成熟してきている。ただ右打者ということでハンデの大きさはぬぐえない。特に打率4割を目指すのであれば内野安打になるかアウトになるかは大きな分かれ道であり、やはり左打者が有利なのである。

角中選手は33歳ではあるが、近年の成績を見てもやはり衰えが目に見え、全盛期ほどの活躍は難しそうだ。

柳田選手は最高打率達成年は2015年であるが今年も最多安打をとっているため、まだまだ衰えはなさそうだ。

そう考えると現役選手で打率4割を期待できるのは、吉田選手、近藤選手、柳田選手である。

以降はこの3選手について詳しく見ていく

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さらに年度間相関がかなり高い三振率、四死球率、本塁打率の値を3選手の通算記録で見ていく。

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・まず近藤選手を見ていこう。何よりも目立つのが四死球の多さとインプレー打率の高さである。近藤選手は選球眼に力を入れていることは有名な話だ。今期は12球団の中で初級スイング率が一番低かった。「そのうち44%はストライク。」ただ、その弊害も出ていて三振率が高い。ただ近藤選手といえば2017年に231打席ではあるが、打率.412を記録している。その時のデータを見てみよう

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四死球率の3標準偏差は22.12であり、インプレー安打率のそれは43.38%であるため、かなりレアケースであることがわかる。もちろんこれはサンプルの通算記録で標準偏差を出せばまた値が変わることは留意しないといけない。

近藤選手が打率4割をクリアするためには三振をいかに減らせるかにかかっている。そのためには初級のストライクゾーンのスイング率を高めていく必要がある。四球も大事であるが初級にストライクを簡単にとられていては不利になっていく。さらに近藤選手は本塁打が少ないので初級からカウントを取りに行った時のリスクがあまりない。そうなるとますます若いカウントからストライクゾーンにボールが集まるため、そこをいかに叩けるかにかかっている。

・次に柳田選手を見てみよう。なんといっても三振率が高い。標準偏差を2超えてしまっている。さらに通算で見ても三振率が高い。柳田選手の特徴なのであろう。それでも高打率を残している要因は高い本塁打率であろう。それと今年のデータであるが、柳田選手はストライクゾーンのスイング率が80%とかなり高い。一方でボール球の見逃し率も78%近くあり、高い水準である。やみくもに振っているわけではなさそうだ。しっかりストライクとボールの見極めができていることがわかる。ただストライクゾーンの空振り率も11%とかなり高い水準である。柳田選手はボールのコンタクト率を上げていくのが課題になりそうだ。特に追い込まれてからいかに三振をしないで前に飛ばすか。柳田選手の場合外野は後ろに下がっているので、ポテンヒットが生まれやすい。足も速いので内野安打も期待できる。とにかく2ストライク追い込まれてからの対応次第である。

・最後に、個人的に一番打率4割に近いと思っているのは吉田選手である。なにより目を引くのは低い三振率である。6%を切る三振率は歴代の高打率を残した選手たちでもそう多くはない。さらに四死球の多さから選球眼もいい。今年のデータでは、ボール球の見逃し率は79%であり高い水準だ。さらにストライクゾーンの空振り率も2.00%であるため、めったに三振しない理由がよくわかる。

本塁打率も悪くなく通算でも4%近くある。足も50M 6.2であるため、内野安打も期待できる。三振が少なく、四死球が多いため、あとはいかにインプレー安打率をあげていくかだが、そもそもインプレー安打率は年度間相関が低く、運の要素も入ってくる。

よって毎年低い三振率と高い四死球率を続けていけばチャンスがでてくるのではないか。課題があるとすれば、外の球の対応であろう。去年内角低めの打率が.083であったが、今年は.367まで上がっている。

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それどころか、内角全般で打率が上がっている。その反面、外角の打率は落ちている。ただ、全部のコースに対応するのは至難の技であり、去年の弱点をストロングポイントにしているのは吉田選手のすごさであろう。欲張りすぎであるが、外の球にも対応「今年も十分に対応できていたが」くらいなのではないか。

さらに身体的な面でいうと低い身長も武器になっている。吉田選手は173センチで、プロ野球選手としては小柄な方だ。MLBでもアルトゥーベという選手は168cmでありながら、2014年から2018年まで打率3割をクリアし、2014年から2017まで4年連続で200本安打を達成している。去年のパリーグの首位打者である西武の森選手も170cmであり、低身長でパワーがある選手は野手のトレンドになってきているのではないかと思う。

そもそも、野球に必要なのは高いレベルでの再現性である。投手は手足が長ければそれだけリリース位置がホームに近くなるので、四肢が長いことに越したことはない。ただ、野手となると話は変わってくる。

確かに体が大きいほうがパワーはつくが、打撃の場合、まずボールをバットに当てないといけない。手足が短いほうが素早く大きな力を発揮しやすく、陸上競技でも背が低い選手の方がスタートが速い。そして長い手足がなくても十分ストライクゾーンにバットは届く。確かに外に逃げるボールをカットするのが難しくなるが、選球眼がいい選手であれば問題ない。そう考えるとパワーがあり低身長なのはかなり理想的であるといえる。

途中でも述べたが、打率4割に必要であろう「これはかなり主観的」三要素の具体的な数値、三振率は9%を超えないようにし、四死球率は11.4%前後、本塁打率は2.5%以上。吉田選手なら年齢的にもキャリア的にもここ5年くらいはこの数値をクリアできそうだ。後はいかにインプレー安打率を高めるかだが、こればかりは運の要素もかなり強い。

現役選手の中では柳田選手、近藤選手、吉田選手は打率4割の可能性を秘めている。もちろんイチロー選手や内川選手みたいにいきなり大ブレイクする選手も現れるかもしれない。

近年は打率は勝利に思ったほど貢献してないと、セイバーメトリクスの観点から言われている。

しかし、それでも打率4割はロマンあふれる記録であり、いつの日かNPBで達成される日が来るのを心から待ち望んでいる。

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