『clarity』

πさん、改め白迦さんの楽曲に『clarity』という曲がある。

この曲はmusic,lyric,mixがaiverで出したものである。
aiverとは以前私がいた場所で、この曲の作業時前後までいた。なので私もこの曲の制作に関わっている。
この曲について僕なりに今覚えていることなどを振り返っていきたい。

そもそも

この曲は、元々当時aiverとして演っていた曲目の一つに存在していたものをリモデルしたものである。
とはいえ相当組みなおしているので面影はあるようでないような具合。
さらには、その元の曲の方を別方向で改編したものを「fake clarity」として演ったりもしていたが、まあそれはさておき。
とにもかくにも、「clarity」が先にあった。

白迦さんに楽曲提供をする、ということで候補にあがったうちの一つがこれであった。
そもそも元の曲をどうにかして出すつもりだったのだが、当時のaiverとしては少し持て余していたように思う。それは曲のポップさゆえに。
当時はもっと混み入ったエクスペリメンタルなことをaiverとして出したい、という中にいた。それとその曲を出す前後を考えたときにどうにも繋がりが難しい、というところでデッドストック化していた。
勿体ない。ので、これを歌ってもらうことになった。

僕の作業としては、「白迦さんに合うようにアレンジする」こと、「aiver内の指示に従いながらクリエイティブを発揮する」こと、であった。
ぶっちゃけ後者に関してはかなり不発である。サウンド面のアイデアに関しては僕ではない部分が大きい。いや、僕も頑張った。でも僕一人じゃどう考えたって今のカタチにはなってない。aiverのメンバーのおかげである。だからこれは確実にaiverの楽曲である。
僕がこの曲で結果として一番任せてもらえたのが、歌詞。
もちろん元々歌詞もある。メンバーが歌っていたのだから。ただし全編英詞である。歌もラップも存在する。
これを「白迦clarity」にするにあたって、リスナーの手を伸ばしやすいものにするなら、ということで、楽曲の尺の変更に伴う調整も兼ねて、ボカロ/歌ってみた文脈を参考に日本語として別に作った。
なので一番僕がこの曲に色を付けた部分としては歌詞である。珍しく。

以下に歌詞を記してみるが、先に言っておこう。
これは「元のclarity」にあった英詞の響きを多分に参考にした上で新たに日本語を付けたもの、である。
響き、に、サイバーデジタルでワイヤードな歌姫、その世界を綴ったもの。それが「clarity」である。

では、細かいところは後に記すことにして、まずは歌詞を見ていく。

歌詞

漂う空の合間 風にそって 波になって 木々揺らして 街を為して
心の在処もいつか 海浮かぶ光の点滅が示すでしょう
朝日に溶けゆくワイヤー 編まれて歪むテクスチャー
夢 現を溶かしてゆけば 息吹くモノリス ほら 信号 信号

彷徨う空の合間 点を取って 線になって 箱描いて モノになって
無数の私の一つ 誰かの篝火にいつの日かなるでしょう 
ガラスに反射する雨 浜辺に流れ着く羽
夢 まどろみを裂くわ いずれ 螺旋状 舞う 尚一層 深層

感情は重なったレイヤーみたいだ
体感上 わんさか生成するリアクター
淡々と端的に対外性 淡白なゲームに歓声
感覚もBeepの断片 間隙を縫う中心点
閑散とした壇上 ジャングルの喧噪も
快感原則の今日も 獰猛さ
三次元も二次元も もうどうもないフェーズみたいだ
衝動にkissされてみたいな とうにヒス的な身体

漂う 彷徨う

朝日に溶けゆくワイヤー 編まれて歪むテクスチャー
夢 現を溶かしてゆけば 息吹くモノリス ほら 信号 信号

π - clarity

制作当時のメモ

「clarity」を引き継ぐにあたって

  1. 複雑怪奇(なサウンド)の中にある真摯さ/明瞭さ、複雑怪奇こそある種の単純解かも?という提起

  2. “ポップス”の実態は闇鍋であり、さながら有象無象が飛び交う電子の海のようである。にも関わらず聞き手がその代物をポップスと呼び、あるいは作り手がそれをポップスと呼ぶとき、そこにはまだ言葉に固まりきっていない自明性――クラリティが存在しているのかもしれない、といったことを表した

歌詞を引継-新設するにあたって

  1. 基本的には(少なくともアオキ的には)発声していて快い並びを選んでいて、文脈は二の次
     ・ロングトーンは可能な限り「あ行」にして拓けた感じを、それ以外は基本的に韻を踏むことを第一に、楽曲世界に存在していてほしいモノ(言葉)をチョイスした

  2. 上述の通り(インストと)タイトルが先にあったのでそれに沿うように、かつπさん/いむ電波.wav的なビジュアルイメージ(主にTwitterで見かける種々のアートワーク)とも連関するような言葉選びをした
     ・cf. 「ワイヤー」「テクスチャー」「点→線→箱(3Dモデリングのイメージ)」「無数の私の一つ(アバター文化)」等
     ・「彷徨う」「漂う」というところで(電子の)海やアトモスフィア、上記の“闇鍋”感を描いた

  3. この歌詞で大事にしたかったフレーズは主に2つ

    1. 「息吹くモノリス ほら 信号 信号」
        ケイオスの中から何かが息づいて動き始める、“闇鍋”の中から新しい何かが生まれていく様はこのテーマの中核ともいえる

    2.  「無数の私の一つ 誰かの篝火にいつの日かなるでしょう」
        これは裏テーマ的なもの。メンバー間でオンライン打ち合わせした時の「(私に/誰かに)思い出されたい」というのが記憶に残っていて、この感覚は僕個人としてもすごく共感するところがあったので、これはほんの少しでも触れておきたかった

  4. 基本的には「何かが[変化して/生成されて/蠢いて]いる」ことを歌っている。事始めの曲だからと意識したところもある。

……割と制作当時のメモで十分だった。特別これ以上言うこともなさそう。
なんか聞きたいこととかあれば別途コメントください。

あともう見てるとは思うけど改めて。
MVめっちゃくちゃカッコいいんで観て。

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