【短小説】もう一つの物語
「もう一つの物語」
プルルル…プルルル…
鳴り止まない着信音
日々の生活に疲れた私は会社とは反対の電車に乗り海に来ていた
昨夜、天候が荒れたせいだろう、浜辺には色んな物が流れ着いていた
カギ爪、ドクロの旗、イカダセット
生まれ変われってことか…?
私は大海原に漕ぎ出した
本日は快晴なり
………
財布から別れた妻の写真を取り出す
未練がましい奴め…生まれ変わるんだろう?しっかりしろ
私の上空を旋回していたオウムが肩に止まった
「船長!船長!奥さんデスか?奥さんデスか?」
「船長?ああ…そうだよ、綺麗だろう?」
「………」
「綺麗だろう?」
「や、やさしそう、やさしそう!」
「………」
「船長!ソマリアはあっち!ソマリアはあっち!」
「海賊王か…悪くない。行くか、ヨーソロー!」
「ヨーソロー!ヨーソロー!」
これは後に「海賊にやられた男」と呼ばれる負け犬の物語である