国と距離を越えたメタバース活用事例としてのcluster -その利点と課題
❏ はじめに
この記事はCluster Creator Advent Calendar 2021の12日目の記事です。
メタバース空間を活用し、定期的に開催されるプレゼンテーショーン、ライブトークイベントxRAMクラムについての解説になります。
❏ xRAMとは何か
xR with Anything Meetup(xR及びxR以外の発表の場)通称 xRAM-クラム-は2月を除き”毎月”定期的に実施しているVR, AR, MR 関連の開発者向けの勉強会とそれ以外のジャンル(創作物やノウハウ)を発表するライブトークイベントです。
発表+懇親会という2部構成になっていて懇親会はオンラインベースのDiscord。又はその時々で軽くワイワイ集まれるツール(NTTのNework等)活用しています。
他のカンファレンスやLT(ライトニングトーク)の違いは6点
①音響演出
②カメラワーク
③照明演出
④積極的なプレスリリースや広報
⑤アーカイブ動画に登壇者毎のショートカットリンク
⑥ライブにOBSでTwitterの#タグを連携でSNSでの盛り上がりを可視化
①~③は発表する側、視聴する側にとンタメ的なワクワク感を体験できるよう心掛けと既存カンファレンスの差別化図っています。
特にリアル会場では実現が難しい照明演出は(実装しているVR会場による)VR会場の良さ活かした試みで好評を得ています。
④に関しては、xRAM自体が有志のイベントかつ参加費等徴収しないイベントのため、発表する側/イベント運用する側のメリットしてターゲットユーザーへのエンゲージメントを増やせる露出量を増やす施策の一環です。
可能限り、積極的にプレスリリースを投稿し採用頂いております。
⑤はイベント自体が長い場合は4~5時間行うので、当日来場できない参加者に講演に内容を振り替えやすいように設計し、アーカイブ後の視聴を伸ばすためです。
⑥はイベントの実況で盛り上がりの可視化とTwitterから会場流入を増やす
為です。そのため流入が見込めないライブ中のYoutubeコメントは廃止しています。VR会場側でもアナウンスで会場に感想記載よりも#タグによりSNSの書き込みを奨励しています。
また、トラブルを避けることとイベント運営コストの効率化を図るため明確なルールの公示を行っています。
※画像はVRKyougiのイベントページでの一例
毎月の定時開催だと月毎の運営コストを効率化した上で、よりよいものへアップデートしていかなければマンネリ化してきます。
可処分時間は限りがあるので、事前事後のトラブル対応は効率化の為に避けるべきです。
❏ コミュニティの概要と目的
コミュニティしてのクラムは
クリエイターとエンジニアをつなげるコミュニティとして発表する側にPRする機会と交流の機会を定期的に作っています。
xRAMのミッション(活動の根幹に当たる部分)は
『クリエイターやエンジニアと企業やエンドユーザーが気軽にコミッションできる機会の創出』を目指します。
このミッションには国内だけでなく、国外も含んでいます。
コミュニティの目的は3つ。
それぞれの補足として
1つ目としては、既存コミュニティでは同じ業界内でしか知見が周知されないので、登壇者に別コミュニティ/別業界の方も加わることで、他業界の方にも認知してもらい界隈全体を盛り上げるため。
2つ目は、「百聞は一見に如かず」の字句通り、発表者の方(特に他業界の方)にメタバース/VR空間で、ご自身の発表する行為を通じて、実用面からメタバース/VR空間の一旦に触れる体験機会を創ること。
3つ目は、期限を設定することで”間に合わせる”ことで発表したいモノの進捗を加速させる。
作成したものを第3者を披露することをモチベーションを上げて進捗をさらに加速させるためです。
完成の完璧さを求めるあまり在野に埋没させるには惜しいものをスポットライト充てる機会を創ることです。
❏ なぜ行うのか
大きくわけて動機は4点
(1)定期的に発表できる場がない
(2)ターゲットにPRできる場がない
(3)海外のカンファレンス情報が収集しづらい
(4)メタバースやxRへの他界隈からの無関心さによる危機感
(1)や(2)は既存のLTやカンファレンスで自身が発表したいものがイベントの規定で発表できない状況が続いた点。
稀にあったとしても不定期なため、前もっての準備や最適なタイミングでのPRが難しい状況が続いたためです。
(3)は日常的にアンテナを張ってはいますが、欲しい発表や情報を確認するためコストを強いられる状況であった為、ならいっそ情報が集できるカンファレンスを競合がいないメタバースで座組を作り、定期開催を根付かせればよいのではないか。発表する側も新しくPRできる場できてWinWinではないかと閃いたためです。
(4)は自分の観測範囲の界隈は盛りあがっているのに、河岸を変えるとVRや、メタバースの一文字も出ない。この状況が普及し、ありふれていて話題になる必要性がないならば良いですが、現実はそうではない。
2020年12月開催のVRKyougi(旧VRカタリアウ)でもご好評頂いていたので、そのノウハウを生かし4月にフレンドさんにOBS側を手伝って頂いて5月からの約3か月は、当日パソコン2台でMC、スライド発表、ジングル等音響、OBS操作、プロカメラマンモードによるカメラの切り替えを1人でこなしていました。
この経験のよいところは、事前準備を整え手順をマニュアル化すれば(荒らしのバンやYoutubeのモニタリング、照明演出は難しいですが)イベントとしての成り立つことは可能という経験とメンタル強化ができた点です。
VRKyougiをはじめ、定期イベントも運営に協力頂ける方々によってより良いものとなっています。本当にありがとうございます。
❏ 海外展開と2022年に向けて
台湾/香港/マカオ向けイベントを初開催【Youtube】
xRAMでは2021年10月末に初の海外/現地ローカライズした
をxRAM Taipei クラム台北主導で開催しました。
第2回は12/11を開催し、運用ノウハウと課題が蓄積できました。
日本以外のメタバースユーザーはどのような試みをしているのか。このイベント通じて最新の活用事例アップデートしていくこととxR以外の発表もメタバースで空間で展開できる場の形成を定着を目指します。
既存の
XR EXPRESS Taiwan から学び差別化を図っていきます。
Youtube
2022年にむけて
繁体語圏ユーザー向けのイベントは今後もよりノウハウをパッケージ化し、現地ユーザーに引継ぎしていける体制づくりとともに英語圏ユーザー向けのイベント開催に着手していく予定です。
ただアメリカ圏は時差の関係で現段階では難しいので、時差が8時間の欧州圏をターゲットして地盤を固めてから欧州チームと合同でアメリカの立ち上げる形にしていく予定です。
・ A new XR meetup in Japan : "xR with Anything Meetup"
英語圏ユーザー向けイベント紹介・レポート制作者:Limes様
❏ なぜ国外イベントを行うのか
動機をざっくりまとめると
コンテンツ再評価の動き
自民党クールジャパン戦略推進特別委員会が「鬼滅の刃」の関係者を講師に招き、コンテンツの国際展開などについて議論を交わすなど動きもあります。
出典:「鬼滅の刃」でクールジャパン戦略 自民特別委
メタバース空間上で使用できる自動翻訳機が実装されている点の事例
Konjac Translator ソフトウェア (ツール) リンク
メタバース空間ではこのように、距離の壁を超えるだけでなく、言語の壁も超えつつあります。
展示会やカンファレンス、ウェビナーもベンダー企業やエンドユーザーが国内から国外へ広げるとことや、サポート体制(コールセンター形式からメタバース体制へ)改善も含めローンチできます。
アバター改変も含め、UnityやBlenderを扱える日本ユーザーの多い点
VRChat、NeosVR、clusterの日本人のユーザーはBOOTHアバターや3Dのオブジュエクトとギミックやパーティクル(モーショングラフィックス)やシェイダー(プログラム)等のクリエイティブな層や、購入した3Dアバターを自分の好みに改変する為Unity(ゲームエンジン)
3Dアバターは無料~3000円のものまでこのクオリティー。
2万~4万のハイエンドモデルも取り扱いがある。自分好みに改変しVTuber活動を行う方やメタバース空間の普段着のように購入する方まで様々だ。
また初期に躓きがちな点をサポートする有償の改変サポートもサービスとして人気を集めている。
メタバースプラットフォームclusterはカンファレンスやイベント、展示会など行うには課題点はあるものの満足度が高い体験価値を提供できるプラットフォームです。
xRAMをはじめとするユーザーベースだけでも、かなりの集客動員可能で、法人対応のイベントであれば任天堂やKDDIをはじめ日本を代表する企業が開催実績もあります。
信頼性や満足度が高く、まだまだ伸び代を残している期待度の高いプラットフォームです。『日本国内においては』。
次にマイナス要素として動機の解説です。
少子高齢化社会が懸念される日本市場の行く末はどうか?
2020年の国交省による
2050年を展望した国土の方向性と課題 によれば
少子高齢化に人口減により、生活サービス産業の維持が困難になる可能性を示唆。
将来的な日本市場の縮小や、コンテンツ分野においては後継はいるものの宮崎 駿や押井 守も永遠に生きるわけではない。コンテンツ産業のアニメ業界の課題にような焼き畑農業体制を見直さなければ、先達の遺産だけではいづれ破綻します。
とは言え、アニメーターに留まらず、日本の労働者の賃上げがままならず、社会保障で引かれるものや、物価の諸々で青色吐息すら出ない層が増える中で消費を促進するのは困難なものではあります。
では、見方を変えお金を持っている国のユーザーから日本経済へスパチャを気持ちよく贈ってもらえるように変革するのも手段ではないでしょうか。
参照:船越 英之「アニメーターの働き方の課題」
また、市場における消費をけん引する国別の20代の人口は以下である。
まだコンテンツの寿命があるうちに、販路開拓のため国外市場へのフックをこちら側から仕掛けるのが望ましい。
現状のメタバースおいてもユーザー数が多い VRChatですらユーザー国別比率はアメリカが33%で日本は3.6%
メタバースやVR機器が普及したとしても、若年層の人口比を考慮すると
差はさらに広がっていきます。
画像の世界の言語 母語話者人口別
※出典:2001年中日新聞に2008年以降各種人口統計を加味
https://www.translator.jp/rank/language_rank.cgi
中国語が(北京語・普通話) 8億8500万人
英語 が5億1000万人
日本のメタバースプラットフォームを提供するプレイヤーは過日のメイドインジャパンのブランド強みと自社の強み活かした上で、訪日観光客の層を中心にガラパゴス化することなく、海外のユーザーも巻き込んだUGCの生み出せるUXを提供して欲しい。
とはいえここまで述べたことを、企業側は構想してはいても、実装に至る前での過程は頭痛の種であります。
外資プラットフォームへ資金の流入
アメリカのメタバースプラットフォーム「VRChat」では2020年2月よりサブスクプランが解禁されました。
前章でも述べたとおり、現状日本人のアクティブユーザーが多いのはこのVRChatです。
日本国内にもcluterをはじめ、バーチャルキャスト、DMMのConnect Chat、趣は異なりますが、ハシラスのめちゃバース、NTTのDOOR、アクロスロードのVIRTUAL SPACE MARKET(バーチャル空間で行う3Dイベント型ECモール 事例:Vマ₊ バーチャル異空間即売会)などがあります。
外資のプラットフォームからサブスクプランに加入している自国のクリエイターやユーザーを奪客できるのであれば、外資へ一方通行になっているサブスクの投じられている資金を国内企業へ循環し、巡り巡って国内の経済の回復に寄与できるのでは思っております。
❏ 海外展開時の課題
海外イベントを開催する際に躓くのが大きく分けて3つの要素です
①はいわずもがな、発表者、進行MC、バックヤード、一般参加者にまずメタバースのclusterに来ていただいて操作案内を行わなければなりません。
cluster側では言語対応はサポートページを確認頂ければわかるように、この分野での対応は自分たちで賄ければなりません。
まず現地の繁体中文で
clusterログイン、操作方法からマニュアル化、イベントの流れやトラブルをマニュアル化。
アバターのアップロード、REALITY連携(中文)
次いでイベントぺージの中文用意。これは③の周知や発表者の勧誘交渉の際にも大きなウェイトをしめます。
周知用のFaceBookページを作成し、更新文(中文)で用意。
また告知のため、ルールを守りながら、FBの台湾VR、XR、学生のグループページに告知を公示。
掲示板サイトでの周知の模索、台湾コミュティのDiscordでの告知の模索。
またプレスリリースを出せる中華圏IT系メディアの36krのようなものが台湾や香港にないか調査など行いました。
また知人を通じて、XR EXPRESS Taiwanの運営に接触を図るなど行いましたが、xRAMそのものが周知が発展途上のため、悲しいかな相手にもされませんでした。
言語の問題をクリアしても、ターゲットユーザーに周知できなければいくら良いイベントであっても動員につなげるのは至難です。
②時差の問題
日本と台湾で時差は1時間です。日本の方が、1時間進んでいます。
イベント日時やタイムテーブルは言わずもがなですが、事前準備の段階でDiscord、GoogleMeet、メタバース上や打合せの設定時間をxRAMではUTC表記(協定世界時(UTC)は、世界各国標準時の基礎となる)で、やり取りしミスなくやり取りを行いました。
参考:JST、GMT、UTCとは? 英語で押さえるべき日本と世界の標準時
時差の幅が大きくない地域であればよいのですが、アメリカ大陸等は西海海岸、東海岸も時差が違い、更にサマータイムによって時間も異なるので時差の間違いだけは最も気を付けなければなりません。
アメリカ6つのタイムゾーン アメリカ国内にはいくつも時差がある
④文化の差異
海外と日本の文化的な違いによる発信者と受け手のボタンの掛け違いから来る炎上や、国の構造上フラストレーションの捌け口として現地からみた外資はターゲットにされる場合もありえます。
上記の問題は話題になったもの事例であり、現地に進出した企業の取り組みや失敗・成功例など企業の海外進出を支援するジェトロ(日本貿易振興機構)などの機関にノウハウなどは蓄積はされています。
エンドユーザーと相手の国を理解し、先例の知見を活用し、ローカライズ、カルチャライズしていくことは、コミュニティやイベントをアップデートしていく際に必要な手段ではあります。
日本企業の海外進出【失敗事例】から学ぶ「成功のヒント」| ユニクロ・ソニー・キリン・丸紅が失敗した理由
「海外サービス産業“課題・トラブル克服”事例」調査 - ジェトロ
③の周知について詳細な解説です
また、ユーザーのライフスタイルも現地では差異があるため投稿時間も自国と同じ感覚であれば認知機会を逃してしまいます。
中国だけでも日本側とはSNSの利用環境が違う
■中国主要SNSの利用者数について ※各SNSの利用者は前年対比で成長
イベントをyoutube配信を行うとアナリティクスデーターをだせるので、そのデーターをもとにセグメントを行い、海外ではどのセグメントに該当するかを把握。
ターゲットユーザーがいるであろうFBのグループで周知を少しづつ行いエンゲージメントも行っていく。広告費がある程度確保しているのならFB広告を出すのが一番手っ取り早く、更に現地の信頼できる代理店に依頼できるコネと予算があるのであれば、ゆうことはないです。
それがない状況であれば、現地のインフルエンサー(YoutuberやVTuber、配信者も含む)の売り込み方やエンゲージメントの手法を研究し、一つ一つ手段をトライ&エラーでノウハウを蓄積するしかない。
たとえ、親日的な国だとしてもすでに企業なり先駆者なりが展開はしているので、コンテンツの差別化を行い地道な土台固めを行っていくのが辛いであろうが望ましいかと思われます。
絶対的に必要なのは信頼できる現地のパートナーを確保できるかかが成否にかかわります。
企業やある程度成功した個人から法人成した方であれば、時間を予算で賄う感覚でジェトロ等の専門家機関を仲介に行えますが、そうでないでのであればこればかりは多少運の要素も絡んできます。
❏ 動員数/実績について
メタバース/VR会場の来場者数について
2020年のVRKyougi(旧VRカタリアウ)で
延べ来場者数は【455名】※約2時間
2021年のVRKyougi (日本会場:773名 台北会場:33名)
延べ来場者数は単独で【806名】※約13時間
xRAMで開催した2021年の4月~12月の年間総延べ来場者数は【2,669名】
※比較
・カンファレンス #xrkaigi 2020 延べ来場者数約1,500名
・ xR転職合同相談会第3回(2021)2日開催
延べ来場者数937名(Day1 573 名 Day2 364名)
前回第2回は2019年開催。インターバルは2年?不定期開催
台湾・香港・マカオ向け
xRAM台北の2021年の総延べ来場者数は【85名】
※イベント実施時間 第1回は100分 第2回は約40分
❏ メディア掲載事例
イベント開催目安
2月を除く、毎月第3土曜に開催予定。
11月は第3日曜、12月第2土曜開催予定。※詳細は各時期ごとのイベントページを参照を
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