見出し画像

オロナミンCのフタに学ぶ:ユーザー体験を高めるデザインとその未来への責任

「ポンッ」という音とともに爽快な瞬間を感じさせてくれるオロナミンCのフタ。この小さな金属とプラスチックの組み合わせが、私たちに心地よい体験を届けてくれます。指先で開ける簡単さ、その瞬間の軽やかな音や感触。そして、開けた後に残る輪っかが、ブランドの象徴としてだけでなく、思わず指に引っ掛けたくなる遊び心も与えてくれます。まさに「タンジブル」なデザインの勝利とも言えます。

©️XPARC LLC.

しかし、このフタに使われている材料に目を向けると、少し違う側面が見えてきます。金属とプラスチックの複合構造であるため、リサイクルの観点では「混合物」として扱われ、廃棄が簡単ではありません。一方で、本体のガラス瓶は比較的リサイクルしやすい素材です。このように、機能性と廃棄後の環境影響との間には緊張関係が存在します。

©️XPARC LLC.

デザインの第一人者、ドン・ノーマンは著書『より良い世界のためのデザイン』で、デザイナーの役割について、ユーザーの体験を豊かにするだけでなく、その製品が廃棄された後の影響をも考慮しなければならないとしています。ユーザー体験を高めるために工夫されたデザインが、廃棄や環境への影響を無視しては、真に「優れたデザイン」とは言えないのです。

私たちデザイナーが目指すべきは、ユーザーが楽しみ、便利さを感じるデザインであると同時に、未来を見据えた責任ある選択肢を提供することです。その選択肢は小さなものかもしれませんが、その先の世界をより良いものにしていくにあたっては大きな一歩になるのかもしれません。



いいなと思ったら応援しよう!

伊賀聡一郎/エクスパーク
よろしければサポートお願いします!